2004年12月発売
市役所に勤務する岩室とペット葬儀社で働く手原は、大阪の新興住宅街地に居を構える隣人同士。しかし、小さな誤解からお互いに始めた嫌がらせが、職場や家族までも巻き込むエスカレートぶり。どんなにムカついても、腹が立っても、「猫をかぶった状態」でやり過ごすのが、普通の大人であるーが、仮面が一度剥がれてしまったら!?お互いに引くに引けず、誹謗中傷嫌がらせがどこまでもヒートアップする泥仕合…。隣の家の住人が気に入らんとか、上司がアホやからとか、とにかく日常にむかついている人、ここまでやってみませんか?おススメです。
世紀末、東欧革命前夜のウィーンで出会ったバイオリニスト・走馬充子と外交官・真賀木奏。音楽への情熱を共有する二人は、亡命ルーマニア青年のセンデスから、古い手書きの楽譜を譲り受ける。「百年後の愛しい羊たちへ」と題されたその楽譜には、歴史を変える力が秘められていたー。異国での激しい恋が呼び寄せる運命の翳り。謎と官能に彩られためくるめくドラマの幕が上がる。
10歳で死んだ妹が人生を幸福に全うする過程を、兄はCGを駆使して映像にし、悲嘆に沈む父に見せた…「枝の折れた小さな樹」。両親を失った女子高生と、生後まもない娘を遺して妻に死なれた塾講師。二人の前にあるシーンが立ち現れる…「サイレントリー」。打ちひしがれた心が、輝いた瞬間の記憶を頼りに再生していく。人生をいとおしむ静かな7つの物語。
金持ちになりたいー。デヴィッドの夢は、“売り込み”という台本が売れた時から実りはじめた。またたく間にハリウッドの寵児となった彼はテレビ局の女性重役と恋に落ち、妻子とも別れる。その一方で金融ブローカーと知り合った彼は、ある大富豪の書いた台本を読んでくれと依頼される。だがそれは、不遇な時期に自分が書いたものと一字一句違わなかった…。悪夢路線、完全復活。
ミサイルが国連本部ビルに撃ちこまれたー双頭の弾頭にはサリンと炭疽菌が積まれていた。不発に終わり被害の拡大は免れたものの、ニューヨークやワシントンでは爆弾テロが続発。捜査の結果、使用された爆弾はいずれもロシア製と判明した。FBI捜査官カウリーは、急遽モスクワ民警のダニーロフに協力を要請する。ふたりは、国境を越えて三たびコンビを組むことになったが…。
国防総省のコンピューター・システムがサイバー・テロによって崩壊した。商務省、農務省などの政府機関のシステムも一斉にクラッシュする。不気味な犯行声明が送りつけられるが、犯人の意図は依然として不明。そんな折、爆弾テロはモスクワをも襲った。カウリーは至急、現地へと飛ぶ。事件の背後に見え隠れする邪悪なロシア・マフィアの存在。そしてアメリカとの驚くべき接点とは。
しがない大学の非常勤講師、怜の夜の顔はバーテンダー。ところがある晩、バイト先の小さなバーに美形ヤクザの横溝が乗り込んできて、借金を踏み倒して夜逃げしたマスターの代わりに返済を求められる。いつのまにか連帯保証人にされていた怜は、借金返済のため、解体屋に売られるorペットになる…の二者択一を迫られ、傲慢・絶倫・意地悪なご主人様、横溝に飼われる羽目に…。
橘奈良麻呂の乱が平定され、三年半が過ぎた天平宝字四年(七六〇)秋ー。奈良麻呂を葬った藤原仲麻呂は、恵美押勝と名を変え、新帝を操って強大な権勢をふるっていた。黄金をねらい、陸奥支配の野望を抱く押勝に対し、牡鹿嶋足、物部天鈴らの智略を尽くした戦いが始まる!平城京の激しい権力闘争の渦中にあって、蝦夷の平和を守るべく奮闘する若き英傑たちを活写した歴史大河ロマン第二弾。
兄・神林通之進の使で、旗本・青江但馬の別宅、根岸の白萩屋敷に出かけた東吾は、萩の精のような佇まいの女主人に出会う。が、その美しい顔には、むごたらしい火傷の痕が…。読者アンケートの人気投票でも堂々トップを飾った表題作ほか、天野宗太郎が初登場する「美男の医者」など全八篇を収録。人気シリーズの新装版第八弾。
ペリー来航五年前、鎖国中の日本に憧れたアメリカ人青年ラナルド・マクドナルドはボートで単身利尻島に上陸する。長崎の座敷牢に収容された彼から本物の英語を学んだ長崎通詞・森山栄之助は、開国を迫る諸外国との交渉のほぼ全てに関わっていく。彼らの交流を通し、開国に至る日本を描きだす長編歴史小説。
中国・春秋時代の晋。没落寸前の家に生を受けた若者・士会は、並外れた兵略の才と知力で名君・重耳に見出され、混迷の乱世で名を挙げていく。生死を無意味にしないために人はなにをすべきか。勇気の本質とはー。苦難を乗り越え、宰相にまで上り詰めた天才兵法家のあざやかな生涯を格調高く描いた古代中国傑作歴史小説。
カスミは、故郷・北海道を捨てた。が、皮肉にも、北海道で幼い娘が謎の失踪を遂げる。罪悪感に苦しむカスミ。実は、夫の友人・石山に招かれた別荘で、カスミと石山は家族の目を盗み、逢引きを重ねていたのだ。カスミは一人、娘を探し続ける。4年後、元刑事の内海が再捜査を申し出るまでは。話題の直木賞受賞作ついに文庫化。
野心家で強引な内海も、苦しみの渦中にあった。ガンで余命半年と宣告されたのだ。内海とカスミは、事件の関係者を訪ね歩く。残された時間のない内海は、真相とも妄想ともつかぬ夢を見始める。そして二人は、カスミの故郷に辿れ着いた。真実という名のゴールを追い続ける人間の強さと輝きを描き切った最高傑作。
策謀蠢く戦国の世に、それでも自らの矜持を貫いた男たちを描く傑作小説集!黒田官兵衛の陰謀に散った九州の名門、城井一族の最期、キリシタン大名として知られる大友宗麟、知られざる父親との確執。生涯不犯を通して子を生さなかった上杉謙信の壮絶な跡目争い。もはや信じられるのは、おのれ一人なのか…。
小さな漁師町で育った娘・千代は、昭和のはじめ、9歳で祇園の置屋に売られる。その愛らしさが仇となって先輩芸妓から執拗ないじめを受け、また姉と故郷に逃げようと企てて失敗、たちまち苦境に立たされる。そんなとき、忘れがたい運命の出会いが…。ひとりの芸妓の数奇な一生を描いた全米ベストセラー小説が待望の文庫化。
どん底から辛抱と努力を重ね、祇園一の美女・豆葉の妹として座敷に出るうちに、さゆりという舞妓名は徐々に知られるようになる。15歳にして当時の最高額で水揚げされ、やがて押しも押されもせぬ人気芸妓に育っていくー。緻密な描写、ヴィヴィッドな語り口と人物造形で、様々な先入観を覆した、かつてなくリアルな花柳小説。
社会主義国のベトナムから、東ベルリンへと向かう少女。ふとしたきっかけで、彼女は西ドイツ・ボーフムへと連れ去られてしまう。ボーフムから逃げ出した少女は、やがてパリへとたどり着く-。言語、国家、政治体制、さまざまな“境”を越え移動する少女は、行く先々で、カトリーヌ・ドヌーヴの映画と出会う。境界の向こう側に見えるものを生理的感覚で捉えた長編小説。