2004年6月発売
ある日突然、ピアニスト健太は謎のアロハシャツ男ヤマキに声をかけられ、天国の本屋に短期バイトとして連れてこられた。そこで彼は、ある女性ピアニストに出会う。一方、飴屋の娘香夏子は商店街復興のため、花火大会開催に向け奔走していた。そこで彼女は「その花火を見ればふたりの恋は成就する」という伝説の花火師に出会う。天国と現世。ふたつのストーリーが同時進行するなか、花火大会当日、ついにある“奇跡”が訪れるー。竹内結子主演映画話題のベストセラー原作、待望の文庫化。奇跡のラブストーリーを彩るカラーイラストも多数掲載。
青い左眼をした沙奈とのセックスのあと、気がつけば快速に乗り新宿に着いていた。慾望はすでに発散しつくしているのにー。幼い日に、私は性技を教えこまれた。無数の女と経験を重ねた。だが、作家として暮す現在は、いわば自分本位の性を貪っているのだった。歌舞伎町の覗き部屋を訪れた私は、どこまでも対照的な女たち、美和と奈々に出逢う。鬼才が、幻想と本能を描き尽くす。
海外で離婚し、故郷に帰るも乳飲み子を抱えて働き口がなく、生活保護を受けながら喫茶店の窓辺で書いた物語が大当たりー今や女王陛下よりも裕福と言われるローリング女史。初版500部で始まった魔法使いの少年のお話は、現在約60の言語で2億5000万部以上読まれていると言われる。世紀の変り目に起きた文学史上の一大奇蹟、もはや伝説となった超人気シリーズは、こうして生れた。
「よいか、武士の一生は束の間のことぞ」「はっ」「その束の間をいかに生くるかじゃ」「おお」「まいれ」二人の体躯が地ひびきをたてて飛びちがい、刃と刃が宙にきらめきー。池波正太郎の「武士の紋章」はじめ、弓技の腕前を秘した奥ゆかしい弓の達人、「武士の心は石高などでは計れぬものぞ」と武士道の本義を守り通した男、孤独に耐えながらも使命に邁進する悲しくも美しい魂を持った男、など、己を潔く生きた武士たちの珠玉の物語8篇。至芸の筆が冴える。
道場破りを見事打ち負かし、懇願されるままに小野派一刀流柴道場の師範代となった素浪人・三木兵庫だが、その矢先、道場主の娘・千草の恋人であった友吉が、何者かによって斬殺されてしまった。逆袈裟に一刀両断されていた切り口から、江戸府内で続けざまに起こっている通り魔の仕業と思われた。正義のため、千草のためと下手人を追う兵庫だが、その前にはさらなる謎と思いもかけぬ強敵が…。非情の邪剣に正義の白刃が煌めく。
どんなに暗い時代でも明るい声を上げて遊ぶ子供たちがいた。美しい山村の四季、自然と共に生きる貧しくも心豊かな人々。私たちが忘れかけていた大地を踏みしめて生きる生活。日本人の原点を見つめ直す長編小説。
幕末の動乱が風雲急を告げる慶応三年、徳川昭武の随員としてフランスに渡った一人の青年があった。現地で資本主義社会の現実を目の当たりにした彼は、帰国後、「人の道」と「利益」の両立を掲げ、第一国立銀行をはじめ、五百余の民間企業を興していくー経済面から明治日本の近代化を推進し、“日本資本主義の父”と称えられた実業家・渋沢栄一の事蹟を活写した力作小説。
二年間の昏睡から目覚めた少女・両儀式が記憶喪失と引き換えに手に入れた、あらゆるモノの死を視ることのできる“直死の魔眼”。浮遊する幽霊の群れ。人の死を蒐集する螺旋建築…。この世の存在のすべてを“殺す”、式のナイフに映る数々の怪異。非日常の世界は、日常の世界と溶け合って存在しているー。-あの伝説の同人小説の講談社ノベルス化が満を持して成就。
2年間の昏睡の後遺症として記憶を失い、この世のあらゆるモノの死を視ることのできる“直死の魔眼”を手に入れた少女・両儀式を襲う数々の怪異。死そのものを体現化した太極の結界。永遠を求める魔術師。そして再来する殺人鬼ー。式を苛む“殺人衝動”の赴く先に、真実を告げる記憶の境界が開かれるー!?
前途有望な青年アドルフは自らの空虚な心を埋めるため、伯爵の美しい愛人エレノールに恋を仕掛け成就させる。しかし、彼女が贅沢な生活も、子供たちも、風評もすべてを捨てるという一途な愛情を示した時、彼はその関係からの脱出を願うようになる。耐えがたい重圧を感じながらも、どこにも逃れることが出来ない男性の虚しい心の動きを冷徹に分析し、精緻に描ききった自伝的心理小説。
実家の病院で働く傍ら、とある企業の相談医として週1回勤務することになった、童顔ぽややん系の新米ドクター、渚。だが、そこは期待に反して男ばかりの職場で…着任早々、医学部出身で風水マニアという変わり種の敏腕経理・楢崎から『運命の人』と迫られて、“いけないオフィスラブ”を実践されたり、倉庫で淫らな関係に耽るカップルを目撃したりと激LOVE体験を…。書き下ろしハニーラブコメ。
17世紀ヴェトナム王朝の都タンロン。悪政と異常気象は農民反乱を呼び起こし、都は危機的様相を呈していた。上洛したマンダリン・タンと側近の文士ディンの身辺に次々に起きる奇怪な殺人事件。友人のセン、宦官の官僚キエンをも巻き込み、混乱は極まった。王子の亡霊は何を訴える?そしてタンは錯綜する謎の迷路を抜け出せるのか。
秘剣、外に語らずー剣客小説に新境地を開いた名品集“隠し剣”シリーズ八篇。凶々しいばかりに研ぎ澄まされた剣技を秘める主人公たちは、また人としての弱さもあわせ持つ。剣鬼と化し破牢した夫のため捨て身の行動に出る人妻、これに翻弄される男を描く「隠し剣鬼ノ爪」。他に「暗殺剣虎ノ眼」などを収む。
この作家のロングセラー“隠し剣”シリーズ第二弾。気難しい読者をこれほど愉しませた時代小説は稀れである。剣の遣い手はさらに多彩に。薄禄の呑んだくれ藩士のくぐもった悲哀を描く「酒乱剣石割り」、醜男にもそれなりの女難ありと語る「女難剣雷切り」など、粋な筆致の中に深い余韻を残す名品九篇を収載。剣客小説の金字塔。
仕立屋の淳蔵は、かつての親友高瀬に招かれ、追われるように去った信州の故郷を35年ぶりに訪れる。高瀬の妻の美保子は昔、淳蔵が恋焦がれた相手だが、年月が彼女を変貌させていた。佳世と出会った淳蔵は年齢差を超えて惹かれるが、過去の事実が二人の恋情をより秘密めいたものにしていくのだった。直木賞受賞作。