2004年9月15日発売
「妖怪」はいずこより来るのか…。人の心は闇にあらねども、揺るぎないはずの世界が乱れたとき、その裂け目から恠しきものが湧き出し、取り憑く。他人の視線を畏れる者、煙に常軌を逸した執着をもつ火消し、「海」を忌む小説家…。日常に潜む恐怖を描く十の短篇から成る「京極堂サイドストーリーズ」。
伝説の名女優・神名備芙蓉が二十八年ぶりに復活。伊豆の会員制高級ホテルで三島由紀夫の『卒塔婆小町』を演じ、老婆から美女へ見事に変身してみせる。だがその後、演出家の失踪、ホテルオーナー天沼龍麿の館の放火、芙蓉への脅迫と怪事件が相次ぎ、さらなる惨劇が!?京介の推理が四十年に亘る愛憎を解く。
54個の文書ファイルが収められたフロッピィがある。冒頭の文書に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井洵子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる!謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドの傑作ミステリー。
白昼、渋谷のスクランブル交差点で爆弾テロ!二千個の鋼鉄球が一瞬のうちに多くの人生を奪った。新興宗教の教祖に死刑判決が下された直後だった。妻が獄中にいる複雑な事情を抱えた刑事鳴尾良輔は実行犯の照屋礼子を突きとめるが、彼女はかつて公安が教団に送り込んだ人物だった。迫真の野沢サスペンス。
36歳の美貌の精神科医・花塚氷見子。その女医に憧れる年下の看護師・北向健吾。二人の恋は徐々に進展をみせるが、氷見子の特定の患者に対する不可解な治療に北向の困惑は深まっていく…。現代の精神医療に光をあてながらキャリア女性の秘められた心の闇に迫る、著者渾身の意欲作。
戒律を冒した神父はそれでも神聖なのか?酒を手放せず、農家の女と関係を持ち私生児までもうけてしまう通称「ウィスキー坊主」は、教会を悪と信じる警部の執拗な追跡を受け、道なき道を行く必死の逃亡を続けていた。だが、逮捕を焦る警部が、なじみの神父を匿う信心深い村人を見せしめに射殺し始めた時、神父は大きな決断を迫られるー共産主義革命の嵐が吹き荒れる灼熱の1930年代メキシコを舞台にした巨匠の最高傑作。
亡くなった叔母の遺品、一幅の風景画を見たタペンスは奇妙な胸騒ぎをおぼえた。描かれている運河のそばの一軒屋に見覚えがあったのだ。悪い予感を裏づけるかのように、絵のもともとの所有者だった老婦人が失踪した…初老を迎えてもますます元気、冒険大好きのおしどり探偵トミーとタペンス、縦横無尽の大活躍。
山寧大学の楊教授が、脳卒中で倒れた。夫人はチベットに赴任中、娘の梅梅は北京で医学院受験に追われている。愛弟子で梅梅の婚約者でもあるぼくは、学部を取り仕切る彭書記から教授の付き添いを命じられた。病床で教授はうわ言を口走り、高潔で尊敬を集める人とは思えぬその言葉にぼくは驚く。どうやら経費の問題、不倫の疑い、何者かにゆすられている節もあった。意識の混濁する教授に翻弄され、迫る大学院入試の準備もできず、ぼくの苛立ちは募る。どんなに学問を究めても役人より格下でしかないと、学者の人生を悔いる教授の激しい憎悪と惨めな姿を目にするうちに、ぼくは自分の進路に疑問を抱く。そんなぼくを梅梅はなじり、去っていく。折りしも北京では自由を求める学生が続々と天安門広場に集まっていた。すべてを失ったぼくは北京へ向かうが…。全米図書賞受賞作家が天安門事件を題材に、非情な現実に抗う人間の姿を描く渾身の書。
発端は航空機の墜落事故だった。その直後に、胸を刺し抜かれた首なし死体がチャイナタウンで発見される。アニマル・セラピーの研究者である晃子は、墜落現場から奇跡の生還を遂げ、自ら事件の渦中に突き進んでいく。そこで目にしたものは…新たなる神話の序曲にすぎなかった!今なお残る吸血鬼の伝説…神話の封印を解く旅が始まる。神秘の歌声を持つ少女を救え。愛と再生のスペクタクル巨編。
市役所に勤務する綾子は28歳。かつての不倫相手を忘れるために見合いを繰り返しながらも、どこか満たされない思いを抱いていた。エリート銀行員、杉下にプロポーズされるが、答えを見つけられずにいる毎日。そこへ、5歳下の従弟、達也が現れて…。幸せをつかむための一歩をふみだそうとする女性の姿を描いた、美しく静謐な物語。