2005年5月発売
子どもたちがみな独立し、丘の上の家に残ったのは老夫婦だけ。四季の草花や小鳥を愛で、夕食の後にはハーモニカ演奏を楽しむ。娘から届く心こもる手紙、隣人との温かな往来、そして家族全員がそろう賑やかな正月。小さな孫の一人が大切にするうさぎのミミリーも、ときどき家に預けられて元気よくはね回る…老夫婦の飾らぬ日常と、その中に見出す喜びと感謝を綴る、シリーズ第七作。
あれは事故死なんかじゃない。親友の死に同級生・相良優は不審を抱く。城戸ら不良グループが関与しているはずだ、と。葬儀当日ー担任教師の車で、相良・城戸を含む同級生6名が式場へ向う途中、大地震が発生!一行は崩落した地下駐車場に閉じこめられてしまう。密室化した暗闇、やがて見つかる城戸の死体…。極限状況下の高校生たちに何が起きたのか。
どこからか聞こえてくる「殺れ!」の声。殺意と肉欲に溢れる地上を舞台に、物語は進むー。暗い地下室で拳銃に脅かされながら、絵ハガキを作らされる男。河川敷で、殺人リハーサルを粛々と敢行するジャージ姿の一団。ペニスを露出させ、謎の人物を追う中年ルポライター…。それぞれが複雑に乱舞、絡み合いながら、前代未聞、仰天の結末へと突っ走る。異才が放つ、三島賞受賞の超問題作。
裁判所から召喚された世捨て人作家コーソは、出廷命令を無視して行方をくらますことにした。元恋人と空路ミネソタを目指すが、空港は大雪で閉鎖。レンタカーで移動する二人は、吹雪で事故を起こし凍死寸前に。やっと見つけた空き家で床板を燃やして一命を取りとめるが、床下からは何体もの白骨死体がー。その家にまつわる身の毛もよだつ驚愕の秘密とは?至高のサスペンス登場。
1912年4月10日、豪華客船タイタニック号は、英サウサンプトン港から処女航海に出発した。船の楽士たちは、この航海のためにヨーロッパ7カ国から集まった。様々な生い立ちを持つ彼らの共通点は、音楽を愛し、この道を選んだ宿命を受け入れていること。年齢も出身も異なる彼ら一人一人が明かす、数奇な物語ー発表されるや大反響を呼んだ、弱冠25歳のノルウェイ人作家による話題作。
タイタニック号は順調に航海を続けたが、4月14日23時40分、北大西洋上で氷山と衝突した。徐々に高まる乗客の不安を鎮めるため、楽士たちは演奏を始めた。それは最後の運命の瞬間まで続けられたという。偶然同じ船に乗り合わせ、運命を共にした楽士たちは、誰を愛し、何を信じ、どう生きたのかー史実と想像力が絶妙に入り混じり、壮大なスケールで読者を圧倒する稀有な作品。
少壮の実業家ニックが姿を消した。夢の抗癌ワクチン開発成功かと報道された直後だった。墜落した専用機の残骸が見つかるが遺体は発見されず、ワクチンの実態も不明のまま、社は存亡の危機を迎える。事件に巻き込まれた女性経済コラムニストのカーリーは、調査を始めた。ニックは本当に死んだのか?彼は癌患者を救う救世主なのか、それとも公金横領を企む詐欺師だったのか。
己の力だけを信じ、家族も捨てて戦乱の世を激しく生きた武士。大名同士の見栄と意地の張り合いを描いた滑稽でどこか物悲しい元禄の武士道。“千石でなければ士官せず”と毅然とした姿勢を崩さず生きた貧乏浪人とその母親。戦国乱世を無双の豪勇をもって駆け抜け、凄烈な生涯を終えた武辺者。薩長の新政府に仕えるのは武士の意地に悖ると、自らの意思を貫いた剣客最後の輝きを描いた剣豪小説、など、珠玉の物語7篇。
天下を騒がす贋の二分金。両替商の十文字屋善右衛門にとっても頭の痛いタネだった。「父様、わっちが贋金作りの下手人を見つけてくる」。娘のお駒はその名のとおり、深川でもつとに知られた跳ね駒である。さっそく幼馴染みで下っ引の捨吉をむりやり引っ張りだし、目明しまがいに飛びだしていったが、はてさて…。お江戸一のじゃじゃ馬小町が、八百八町にはびこる贋金を追って駈けまわる、痛快時代活劇。
ひょんなことから平穏な日常が一変してしまう人間社会の不条理を、ユーモアと鋭い批評眼で綴るチャペコマニア待望の短編傑作集。スペイン市民戦争やナチスドイツの台頭、歴史上の侵略者を皮肉る寓話や警句は、混迷を深める世界に生きる21世紀の全人類必読。
『チャタレー』には三つの作品があった…。ワイセツ論争で騒がれているとき、ロレンスは「森番」を共産主義者で、階級的憎悪が一番激しく、全編にわたって方言を使う人物に設定した『初稿』を出版しようと考えていた…。詳細な「解題」「文献」付。
角次郎と乙蔵は、「菊田川」で、ともに将来を嘱望される板前だったが、ある日、角次郎は永代橋の欄干から落ちて、死んでしまった。乙蔵は、角次郎の妻子の面倒を見続け、また「菊田川」を継いで、深川でも指折りの料理屋にした。が一方で、あの事件は、乙蔵の陰謀だったという噂が、まことしやかに流れていた。事件から18年後、角次郎の遺児・磯市は取り立て屋になっていた。磯市は噂を信じていた。菊右衛門を破滅させることが、唯一の生きる目標であった。
もうひとつの「風の又三郎」や「注文の多い料理店」は、どんなお話?壊れた時間の往人たちがおくる、真夜中のヒットパレード!現代の“ミヤザワケンジ”が描く、24の物語。
そこに写っていたのは「想い」と題されたシャボン玉。1枚の写真をきっかけに、少女は少年への思いを募らせていく。偶然の再会から、少女は手紙を書きおくるが、少年からの返事が来ることはなかった。第六回小学館文庫小説賞受賞作品。
川中島の大会戦に勝利を得た信玄は、天下に号令する道を一歩一歩確実に歩んでゆく。しかし、長男の義信との仲が思わしくなく、やがて信玄は苦悩のすえ、親子の縁を断つのである。後継者を愛する湖衣姫との間にできた勝頼と決めた信玄は、強敵北条氏を追いおとすために、関東に軍を進め、小田原城に迫る。
甲州・信州の全域をわがものとして、さらに駿河府中をおさえた信玄は、いよいよ京都にのぼろうとするが、織田信長に先をこされてしまい焦るばかりだ。その上、年来の病いが身をしばりつける。合理的な戦術によって、合戦に転機をもたらした名将・武田信玄の生涯を描いた長篇三千枚がいよいよ完結する第四巻。
聖書の『シラ書』-人生の知恵と教訓の詰まったこの書をヘブライ語からギリシア語に訳す試みをする、古代アレキサンドリアの青年の物語と、現代の日本に生きる私たちの小さな日常風景。この二つの世界を結びながら、親子、夫婦、友情、恋愛など人間の根幹にある様々なテーマを温かく描いた24篇の贈り物。