2005年5月10日発売
角次郎と乙蔵は、「菊田川」で、ともに将来を嘱望される板前だったが、ある日、角次郎は永代橋の欄干から落ちて、死んでしまった。乙蔵は、角次郎の妻子の面倒を見続け、また「菊田川」を継いで、深川でも指折りの料理屋にした。が一方で、あの事件は、乙蔵の陰謀だったという噂が、まことしやかに流れていた。事件から18年後、角次郎の遺児・磯市は取り立て屋になっていた。磯市は噂を信じていた。菊右衛門を破滅させることが、唯一の生きる目標であった。
もうひとつの「風の又三郎」や「注文の多い料理店」は、どんなお話?壊れた時間の往人たちがおくる、真夜中のヒットパレード!現代の“ミヤザワケンジ”が描く、24の物語。
そこに写っていたのは「想い」と題されたシャボン玉。1枚の写真をきっかけに、少女は少年への思いを募らせていく。偶然の再会から、少女は手紙を書きおくるが、少年からの返事が来ることはなかった。第六回小学館文庫小説賞受賞作品。
川中島の大会戦に勝利を得た信玄は、天下に号令する道を一歩一歩確実に歩んでゆく。しかし、長男の義信との仲が思わしくなく、やがて信玄は苦悩のすえ、親子の縁を断つのである。後継者を愛する湖衣姫との間にできた勝頼と決めた信玄は、強敵北条氏を追いおとすために、関東に軍を進め、小田原城に迫る。
甲州・信州の全域をわがものとして、さらに駿河府中をおさえた信玄は、いよいよ京都にのぼろうとするが、織田信長に先をこされてしまい焦るばかりだ。その上、年来の病いが身をしばりつける。合理的な戦術によって、合戦に転機をもたらした名将・武田信玄の生涯を描いた長篇三千枚がいよいよ完結する第四巻。
聖書の『シラ書』-人生の知恵と教訓の詰まったこの書をヘブライ語からギリシア語に訳す試みをする、古代アレキサンドリアの青年の物語と、現代の日本に生きる私たちの小さな日常風景。この二つの世界を結びながら、親子、夫婦、友情、恋愛など人間の根幹にある様々なテーマを温かく描いた24篇の贈り物。
コンビニ、居酒屋、公園、カラオケルーム、披露宴会場、クリスマス、駅前、空港ー。日本のどこにでもある場所を舞台に、時間を凝縮させた手法を使って、他人と共有できない個別の希望を描いた短編小説集。村上龍が三十年に及ぶ作家生活で「最高の短編を書いた」という「空港にて」の他、日本文学史に刻まれるべき全八編。
「極道は身代金とるには最高の獲物やで」。大胆不敵な発想でヤクザの幹部を誘拐した三人組。彼らと、面子をかけて人質を取り返そうとするヤクザたちとの駆け引きが始まった。警察署の目の前での人質交換、地下駐車場でのカーチェイス、組事務所への奇襲攻撃…。大阪を舞台に追いつ追われつが展開する痛快小説。
小説家である前に、小説好きを自負する浅田次郎氏。物語は「あらゆる日常の苦しみを忘れさせるほど、面白くなければならない」という氏の心に深く残った森鴎外、谷崎潤一郎、芥川龍之介、中島敦、小泉八雲など13篇を収録。「いつも私の安息であった」という満天の星の如き物語をお届けする。文春文庫創刊30周年記念企画第2弾。
結婚30周年を祝うパーティが開かれた晩、「それなりに楽しい結婚生活だったわよね」と振り返るポリーンに、「地獄だった」と夫のマイケルはつぶやく。それはいつもの夫婦喧嘩のはずだったのだがーどこにでもいる夫婦の60年間を、円熟味あふれる筆致で巧みに描く。しみじみおかしくてほろ苦い“身につまされる”小説。
やばい「客」を追手の手が届かない闇の先に逃がすーそれが「逃がし屋」葛原の仕事だ。「極秘入国した隣国の最重要人物を捕えて逃がせ」。依頼はよりによって警察庁幹部からだった。断れば殺人犯として追われる。大阪に向かった葛原を待ち受けるのは、暗殺を狙う隣国の工作員たち。壮絶なチェイスが始まった。
忽然と消えた「客」の背後にはもう一人の「逃がし屋」の影が…。跡を追って東京に戻った葛原を迎えたのは、工作員、在団特務、ヤクザ、公安が入り乱れる「戦争」だった。誰が裏切り者で、誰が囮なのか?殺し合いに大義はあるのか?権力をめぐる謀略と死闘が渦巻く中で、はたして「客」は逃げ切れるのかー。
日本のサッカーに限界を感じ、16歳で単身スペインに渡ったリュウジは、様々な困難にぶつかりつつプロ1年目を終え、ベティスにレンタル移籍。フラメンコで有名なアンダルシア地方セビリアの地に舞台を移し、強豪チームと熱き戦いを繰り広げるほか、危険なダービーマッチにも挑む。新たな恋の行方にも注目。
革命で英国に避難していたフランス人貴族が、王政復古で妊娠中の妻を捨てて帰国。失意と貧しさの中で生まれた双子の数奇な運命がドラマティックな「流の暁」。偶然拾った一本の針から殺人事件を解決する「探偵」が魅力の「車中の毒針」。当時流行の幻燈を使い、見事、冤罪をはらす「幻燈」。父殺しの犯人を追い逆に罠にはまる娘とそれを助ける若者。予断を許さぬ展開が面白い「かる業武太郎」。全4編。