2005年7月1日発売
異常気象、凶作、飢餓、疫病の蔓延と、厄災ばかりがうち続いた江戸天明期、後世まで語り継がれる一人の力士が彗星のごとく現れた。巨人のような体躯と野獣のような闘志で豪快に相手を投げ倒していくこの男に、抑圧され続けてきた民衆は未来への希望の光を見た。実在の伝説的相撲取り「雷電」の一生を、緻密な時代考証を踏まえドラマチックに描いて、飯嶋和一の名を世に知らしめた大傑作歴史巨編の文庫化!
大富豪ワイマンは、莫大な資金を投じて、完全コンピュータ制御の外洋ヨットを完成させた。性能を誇示してビジネスに役立てるつもりだ。厳冬のベーリング海を越える世界一過酷なレースに出場した艇の勝利は、確実と思われたがー襲いかかる大波、閉鎖空間で高まる緊張、コンピュータの不審な動き、そしてもうひとつの敵の影が…。息をもつがせぬ波乱万丈の海洋冒険サスペンス。
貧乏旗本の次男・結城拓馬は家督を継ぐこともかなわぬ自分の立場に嫌気がさし、寺社詣のために成田山新勝寺に向かった。そこで出会った佐倉の大店の娘なおの勧めで、佐倉藩士立花家の離れに寄宿し、寺子屋の師匠となる。ある夜、若い欲望を持て余している拓馬のもとに、立花の妻・鈴が忍んでくる。夫が長期江戸滞在中の鈴も、募る情欲を抑えかねていたのだ。罪の意識にかられながら、拓馬は鈴の肉体におぼれていくが、夜毎の二人の痴態を覗く影、そして密かな喘ぎが…。
駿河真壁藩の藩主とお世継ぎの鶴丸が、不慮の災いによって相次いで世を去った。藩主の座は、残された唯一の血筋である側室お万の方の一子、主水介のものと思われたが、土壇場でもう一人の藩主の血を引く存在が明らかにされた。本書にある紫道場の食客、三木兵庫が面倒を見ている新之助がそのお世継ぎである。やむなくお家騒動に巻き込まれた兵庫は、武士の矜持を胸に権謀術数渦巻く駿河の地へと旅立つ。
殺生方は斬り捨て御免の殺生勝手。いつ、いかなる時、何を斬ろうとお咎めなしー。時は元禄、人々は五代将軍綱吉が下知した生類憐れみの令に困惑していた。将軍家の狩猟全般を取り仕切ってきた殺生方のお役目も、犬や猫などを殺生した者の取締りへと変節を余儀なくされた。父の跡を継ぎ、殺生方与力になった若宮隼人。その行く手に殺生方ゆえの苦難が待ち受けていようとは、心踊る隼人には思いもよらぬ話であった。
再開発プロジェクトをめぐって企業恐喝事件に巻きこまれた大手ゼネコン、滝田建設。脅迫者から現金受渡役に指名され渦中の人となった事業部の真崎には、身辺警護のため警備会社から派遣されたという男、佐伯がつくことに…。佐伯の正体は何者なのか…?惹かれながらも疑心暗鬼になる真崎…だが、そんな真崎にも、幼少期のある体験が生んだ、誰にも明かせない淫靡な秘密が…。