2005年8月発売
その女は、小舟の船首に腰掛け寛いだ様子で微笑んでいた。舟の中には、血塗れの武芸家たち。「お会いできて光栄です、洪八生殿」比類無き武芸を誇る侠客党党首は、天下随一の絶技『剛竜十八手』をもって打ち掛かったが、女はしなやかな手で易々と防いだ。文革の高波続く中国。表社会の混乱に呼応するように、闇社会の均衡もまた、崩れていた。地仙の少女・選杯の内功修行を監督中の陸風箔が、どこか見覚えのある美女・袁桃花に出会ったのはそんな夜の事。父親捜しの依頼を面倒だからと即座に断ろうとした風箔だったがー。旧正月直前の南京を訪れた風箔の人捜しは、大物武芸家の失踪や不可解な連続殺人事件に絡み、意外な展開を見せる。錯綜する謎と多彩なキャラクターが織りなす武侠ミステリー、第2弾。
同心だった夫・高岡靫負はなぜ斬られたのか?蟠る疑問を胸に妻の琴は、侍を捨てて浮世絵師となった息子・賀太郎と日本橋通油町で同居を始める。幼なじみで医師の清順や汁粉屋の伊十と親しみ、移ろう江戸の風物に目を向けて筆を執るうちに、夫の死の謎が解けてきて…。名手が紡ぐ絶妙の連作短篇集。
「妾は人を殺したことがあるんでございますよ」。湘南の保養地、逗子で遊民・伊佐間は朱美と名のる女と出会う。彼女は幻想小説界の大御所・宇多川崇の妻。しかも奇怪なことにこれまでに何回も夫を手にかけたという。あまりに妖しい告白を聞かされた元精神科医の降旗と牧師・白丘は激しく惑乱して。
「あなたの夢こそ鍵になるでしょうね」。京極堂は刑事・木場とともに店の敷居を跨いだ降旗にそう言った。逗子湾に浮かぶ金色の髑髏、葉山の山中で起きた男女集団自決に絡まり縺れるようにして殺された老作家・宇多川。やはり犯人は朱美か?目撃された「復員服の男」とは何者なのか?謎は謎を呼ぶ。
「似せ者とわかっていながら、なぜこんなにも心が騒ぐのだろうか」。時は江戸。歌舞伎芝居の名優のそっくりさんが二代目を名乗り、人々は熱狂して迎えるが…。表題作のほか、若い役者二人の微妙な関係を描く『狛犬』、お仕打が東奔西走する『鶴亀』、幕末混乱期の悲恋をめぐる『心残して』の全4編を収録。
CM制作者・日下が骨董市で偶然手に入れた、古いフライフィッシング用のリールとスチール缶。その中から発見した16ミリフィルムの映像をCMに利用しようと考えた日下だったが、そのことが戦時中の封印された犯罪を暴き出し、新たな殺人を引き起こす結果に!?第48回江戸川乱歩賞受賞作、待望の文庫化。
ギルバートと結婚したアンは、アボンリーを離れ、フォア・ウインズに見つけた「夢の家」で暮らしはじめる。おだやかな内海沿いに建つ家に訪ねて来る、人間味豊かな隣人たちとの、出会い、ふれあい、別れ。そして、やがておとずれる新しい命。魂の邂逅が、いっそうの愛情あふれる人生をかたちづくる。
外国人窃盗団に雇われ、通帳から現金をおろす出し子の男が最後に打った手は(「ラストドロー」)。住宅ローンに押し潰されそうな主婦が選んだ最後の仕事とは(「ラストジョブ」)。リアルで凶暴な世界に、ぎりぎりまで追い詰められた者たちが、最後に反撃する一瞬の閃光を描く。明日への予感に震える新境地の連作集。
「ひい、ふう、みい。ひとりは寝床をなくし、ひとりは片目をなくし、最後のひとりは頭をなくす」疫病が蔓延し、人影もまばらになった都に、奇妙な歌が流行る。その歌に符合するように、都の代表的な旧家で惨劇が続いた。豪商のメイが深夜階段から転落して死に、郡公を称するイーも何者かに殺害される。都の留守を預かるディー刑事は人心を不安に陥れる事件の捜査を開始した。だが、食糧不足、治安の悪化、天候の不順に悩まされ、三人の副官たちも手一杯のありさま。民衆暴動の危機にも直面しつつ、はたして事件を解決に導くことが出来るのか。
偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだー通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。著者初の作品集。
恋人を追って上京する、恋が最優先の女の子・小松奈々。歌で成功することを目指して上京するボーカリスト・大崎ナナ。同い年で名前も同じふたりが、列車の中で出会い、そして運命に導かれるように、東京で共同生活を始めることになるが…!?矢沢あいの超人気コミックが原作の映画『NANA』。その魅力をあますところなく小説化した、珠玉のノベライズ。
社内抗争に明け暮れる「オヤジども」にもう会社は任せられない!世襲かクーデターか?次期社長の座をめぐる権力闘争。才色兼備のバツイチ広報部員・竹中麻希の闘いが始まった!社内抗争を生き抜く女性の闘いを書き尽くした傑作ビジネス小説。