2005年8月発売
探偵を名乗るものは皆、ある一定の調査力を持っている……わけではない。現在、日本では探偵社・興信所・調査会社を取り締まる法律や規制がないため、なろうと思えば誰でも探偵になれるから、ぱちもん業者が巷にわんさと溢れているのだ。ちなみに「ぱちもん」とは、偽物の意。本書は、そんな探偵たちの怪しい実態と、依頼人たちとのすったもんだを小気味よく、ときに優しい視点で描いた、シニカルな笑い満載のどつぼ系連作短編集。
岩鉄こと南町奉行所同心、岩本鉄次郎はこのところ調子がでない。追っている盗賊「女郎蜘蛛」にはいつも逃げられてしまう。何せお江戸は広く、賊がどこに現われるのやら、まるで見当もつかない。思わず長ったらしい息を吐けば、十文字屋のおてんば娘に「恋わずらい」といわれる始末。岩鉄はもう一度、溜め息をついた。中年同心のせつない恋ごころをかなえるべく、深川で一番のじゃじゃ馬小町が一肌脱いだ。好評の第2弾。
暴力団組長の子供ばかりを狙った猟奇殺人が発生。捜査を任されたのは、かつて未成年の容疑者を射殺して警察を追われた〈狂犬〉と恐れられる元刑事だった。大沢ハードボイルドの新たなる代表作。
新宿に厳戒令。中国人マフィアと暴力団の全面戦争が始まった!殺された組長の子供は、口に携帯電話を押し込まれていた。中国人の仕業だと暴走した暴力団員、血染めの応酬をする中国人マフィア、緊急配備につく機動隊…。ついに警察庁の女性キャリア刑事は、<狂犬>に禁じ手の拳銃の使用を許可した。…神よ、あなたは一体何人死ねば許すのか?
花火見物に東吾と深川へやってきた麻太郎と源太郎は、腹をすかせた幼い姉弟を目にし、たまらず大福餅を買って貰い、すすめる。姉弟はどうも身内から折檻を受けているようで、気にかかって仕方ない。「かわせみ」次世代の子供たちの成長が頼もしく微笑ましい表題作ほか、全七篇を収録。江戸の風物詩もゆたかな不朽の人気シリーズ。
「われわれは香港で裕仁を拉致し、獄中で呻吟している同志たちを奪還する。」朝鮮の武力独立を目指す金元鳳率いる義烈団。彼らは大正十年、外遊途上の香港にて裕仁皇太子を誘拐する計画を立てる。日本側警備陣との息詰まる攻防ー。成功すれば確実に以後の世界史が変わったであろう歴史の暗部を掘り起こした力作。
ある日突然、世界のすべてが変わる。蜘蛛女、巨女、シマウマ男に犬人間…地球規模で新たな「進化」が始まる。究極のグローバリゼーション?新しい人類の始まり?「巨大な塊がクチュクチュと身をよじらせて、バーンと爆発する」。小説界を震撼させた、芥川賞作家、驚異の文学界新人賞受賞作。単行本未収録作品併録。
放浪癖のある父に連れられて転校を繰り返す岬は、中学二年の秋にたどりついた山間の町で、小柄な少年・賢彦に出逢う。学級のリーダー・北浦と、賢彦との微妙な関係。賢彦は二年前、忽然と現れる幻の湖で神隠しに遭い、ふらりと戻ったというのだが…。わずか三日間の邂逅、そして別離。時を超えるみずみずしい成長物語。
傭兵経験のある桧垣耀二は、除隊後の事業に失敗し、鬱々とした日々を送っていた。ある日、かつての戦友であり親友でもあったダグが東京で謎の死を遂げた。彼の死に不審を抱いた桧垣は、真相を調べるうちに、北米、アメリカ両大陸にまたがる大きな陰謀の存在に気付く!国際謀略小説の決定版ここに登場。
ー大正初年の岡山。妾稼業の姉の家には近在の高等遊民たちが集って、優雅なサロンのような様相を呈していた。しかし、ある夜、姉は惨殺された。それも、全身を黒焦げに焼かれて…。田舎に広がる波紋、そして意外な犯人像!岡山で実際に起きた猟奇事件に取材した、岩井版「冷血」と呼ぶべき力作長篇。
桐野流香道の次期宗家として期待されている和は、楚々とした美人の25歳。外務省の友人に頼まれ、嫌々ながら列席したパーティでアラブ某国の王子様、アズィーズに一目惚れされ…。おしのびで訪日した王子様につきあわされて連日の熱いデート攻撃。拒みきれず、ついに蕩けるような一夜を共にしたのだが…。目覚めると、そこは砂漠の王国でーなんと拉致られた!?書き下ろしアラビアン・ハードロマンス。
殺してやりたかった。でも殺したのは俺じゃない。妻を惨殺した少年たちが死んでいく。これは天罰か、誰かが仕組んだ罠なのか。「裁かれなかった真実」と必死に向き合う男を描いた感動作!第51回江戸川乱歩賞受賞作。
司馬遼太郎は言った。「短篇小説を書くというのは、空気を絞って水を滴らすほどのエネルギーがいる」そうして生まれた短篇の豊かな世界を発表順に味わう。第五巻は、『竜馬がゆく』連載開始直前のころの作品。
明晰な頭脳にものをいわせ、巧みに法の網の目をくぐる。ありとあらゆる手口で完全犯罪を繰り返す”天才 的知能犯”鶴岡七郎。最後まで警察の追及をかわしきった”神の如き”犯罪者の視点から、その悪行の数々を冷徹に描く。日本の推理文壇において、ひと際、異彩を放つ悪党小説。主人公のモデルとなった人物を語った秘話を収録。<巻末エッセイ・逢坂剛>