2005年発売
天才的な智略によって、信濃の国を平定した信玄の野望は、あくまでも京都に上って天下に号令することである。同じ野望の今川義元がまず上洛の軍を起すが、桶狭間の戦いで織田信長にはばまれる。信玄を牽制するのは越後の上杉謙信である。信玄はいまや謙信と宿命の対決を迎えようとしている。著者会心の歴史小説第二巻。
「団塊の世代」とは何か?この言葉の名付け親である堺屋太一氏は三十年前に、彼らが日本の将来に何をもたらすかを分析し、この予測小説を書いた。その予測は、今読み直すと恐ろしいほど的中している。大量定年、高齢化が問題になっている今、あらためて新版を刊行し、「団塊の世代」の過去、現在、将来を考える。
オランダの東洋探検船団の一隻リーフデ号に乗り込んだウイリアム・アダムスは、1600年4月19日、豊後水道の臼杵に漂着した。足掛け3年の過酷な航海の果て、同船の乗組員110人は24人の生存者を数えるのみであった。航海長アダムスは天下統一をめざす家康に目をかけられ、艦載の大砲を関ヶ原へと運ぶ。海洋歴史小説の金字塔。
連続放火殺人を解決、異常犯罪担当部署に配属された刑事カーソンには秘密があった。誰にも触れられたくない暗い秘密だ。だが連続斬首殺人が発生、事件解決のため、カーソンは過去と向き合わねばならない…。死体に刻まれた奇怪な文字に犯人が隠す歪んだ意図とは何か。若き刑事の活躍をスピーディに描くサイコ・サスペンス。
途方もない借金を背負う若夫婦が、貧しい暮らしの中で追いかける大きな夢。どうか、今年こそー。著者の原点を描いてオール読物新人賞を受賞した表題作他、四篇。武家社会の心意気、商人の気概。誠を尽くせば、身分の差を越えて人は分かりあうことができる。生きる力と明日への希望を与えてくれる感動の傑作集。
“ゴット(神)ハルト(硬い)は、わたしという粘膜に炎症を起こさせた”ヨーロッパの中央に横たわる巨大な山塊ゴットハルト。暗く長いトンネルの旅を“聖人のお腹”を通り抜ける陶酔と感じる「わたし」の微妙な身体感覚を詩的メタファーを秘めた文体で描く表題作他2篇。日独両言語で創作する著者は、国・文明・性など既成の領域を軽々と越境、変幻する言葉のマジックが奔放な詩的イメージを紡ぎ出す。 変幻自在、越境する言葉のマジック! “ゴット(神)ハルト(硬い)は、わたしという粘膜に炎症を起こさせた”ヨーロッパの中央に横たわる巨大な山塊ゴットハルト。暗く長いトンネルの旅を“聖人のお腹”を通り抜ける陶酔と感じる「わたし」の微妙な身体感覚を詩的メタファーを秘めた文体で描く表題作他2篇。日独両言語で創作する著者は、国・文明・性など既成の領域を軽々と越境、変幻する言葉のマジックが奔放な詩的イメージを紡ぎ出す。 室井光広 多和田文学のキャラクターたちを形容するにふさわしい言葉を今次もうひとつ見つけた。--あやかしの歩行巫女(あるきみこ)。(略)アルキミコたちは男流的押しつけがましさを軽くいなしながら、奥を幻視する。閉じ込められた奥ではどんなあやしの幻術がおこなわれるのか。それは決して「偉大なもの」ではなく、たとえば本書に何度か使われている言葉をかりて簡単にいうなら「壁」を、皮膚の暖かさをもつ皺のイメージにも重なる「襞」に変異させるような術だ。--<「解説」より>
盛田の操る天山艦攻は海面を這うように突進する。雷撃速度は実に四〇〇キロ。このスピードに翻弄されたのか、敵艦の砲火は正確さを欠きはじめた。小型駆逐艦のマストを掠めるようにして飛翔する。目標まであと七〇〇メートル。今だ!機体がふわりと軽くなる。八〇〇キロもの重量を棄てたのだから当たり前だ。これで任務は済んだ。もう撃ち落とされても悔いはない。「魚雷命中!水柱三!」美墨二飛曹の声に背後を振り返るや、大型空母の左舷測に報告通りの風景が展開していた。盛田十三飛曹長は嬉しげに叫んだ。「よし、一番槍だ!」。
1980年代、我が国はかつてない「金融狂乱の時代」へと突入する。政治家・官僚・実業家、そして農家までもが「金銭の奴隷」となりはてた未曽有の四半世紀。バブル前夜から巨大銀行再編劇まで、水面下で繰り広げられた色・カネ・権力を巡る凄絶な人間模様を精緻に描いた著者渾身の長編小説。
メガバンクの頭取・藤山には誰にも言えない秘密があった。かつて部長時代に関係した女子行員・裕子。そして後始末にあたったのが左遷寸前の部下・西前だった。以来、ふたりは「鉄の主従関係」で激烈な権力闘争を勝ち抜いていくのだがー輝かしいはずの「あのころの未来」がこんな混迷だったとはー。
第四十一回心猿 火難に遭かること木母 魔怪に擒まること 第四十二回大聖こころこめ南海を拝すこと観音なさけもて紅孩を縛ること 第四十三回黒河の妖孽 三蔵を拐って去ること西海の龍子 鼉龍を捉えて回ること 第四十四回三蔵 車を曳く僧に逢うこと悟空 真の気は体を運ること 第四十五回三清観に大聖 名を留めること車遅国に猴王 法を顕わすこと 第四十六回外道 下策を弄して正法を欺むくこと心猿 聖性を現じて妖邪を滅ぼすこと 第四十七回聖 僧 通天河で行手を阻止されること金木小童等を救出し身替になること 第四十八回妖魔 寒風をば弄び大雪を飄すこと聖僧 拝仏のみ念じ層氷を履むこと 第四十九回三蔵 災禍に遭い水宅に沈むこと観音 危難を救い魚籃を示すこと 第五十回欲望に捉われ性情が乱れること精神が眩んで悪魔に遭かること 訳 注
「二十箇月もの間子供を身篭っていることができると思うかい?」。昭和二十七年の夏、三文文士の関口巽は東京は雑司ケ谷にある久遠寺医院の娘にまつわる奇怪な噂を耳にする。しかも、密室から煙のように消えたというその夫・牧朗は関口の旧制高校時代の一年先輩だった。ポケットに入る分冊版、刊行開始。
「私をーたすけてください」。古本屋京極堂にして陰陽師の中禅寺秋彦が刑事の木場、探偵である榎木津を前にして解き明かす久遠寺家の「血」。呪われた真相は卑劣漢・内藤を恐怖のどん底へと叩き込み、文士・関口の自我を根底から揺るがす。そして京極堂はいう。「この世には不思議なことなど何もないのだよ」。
暗がりで誰かにナイフで刺され、君は死ぬー。誕生日の前日、美緒は見知らぬ男に声をかけられ、こう予言される。犯人に心当たりがあった彼女は警察に相談に行くが…「六時間後に君は死ぬ」(高野和明)。「弔いはおれがする」(逢坂剛)ほか、いまをときめくミステリー作家10人の傑作だけを収めた豪華短編集。
羽音と不思議な声がすべての始まりだった…。陸上競技への夢を断念し、水道職人となった若者・達夫の頭の中に、ある日奇妙な生物が侵入してくる。その名も蚊トンボ・シラヒゲ。超人的能力を得た達夫は、アパートの隣人・黒木を理不尽な暴力から救う。しかし、それは恐るべき闇社会との対決を意味していた。
黒木は暴力団に巨額の損失を与え、追われる身だった。その行方を知るべく、彼らは卑劣な手段で達夫を脅迫した。そこに凶悪獰猛な赤目の男・カイバラが介入、達夫の恋人・真紀を誘拐する。そのとき皮肉にもシラヒゲの能力は尽きようとしていた。カイバラの挑発に単身敵地に乗り込む達夫。はたして真紀を無事救出できるのか。