2005年発売
本書は、一九九〇年に出版されたJ.D.カーの研究の先駆けともいえる作品です。本書の特長としては、カーの作品を探偵別、また、主題カテゴリー別に集約し、それぞれについて深く追求しているところが挙げられると思います。バンコランも、フェル博士やメリヴェール卿にしても、ここまで追及を受けるとは思ってもいなかったでしょう。また、短編に登場した探偵役それぞれについても、性格や言質に至るまで例示を示して詳しく分析を行なっています。
おれは売れない作家ーアルバイトで糊口を凌ぐ毎日や、妻との冷え切った関係にはいいかげんうんざりだった。担当編集者の伏見裕子ーおれがひそかに想いを寄せる人妻。意外なことに向こうからも誘いをかけてきた。彼女の夫が死ねば、彼女はおれだけのものになる。運命の女の言葉は、おれの耳にはこう聞こえた…“夫を殺せ”。欲望と犯罪に溺れる男女を、鬼才がリビドーを注ぎ込んで描いた純愛小説。
西暦2032年。未曽有の地殻変動によって、南西諸島に沈没の危機が迫っていた。地球科学者・大森拓哉の警告により政府特別機関が設立されるが、その目的は領海=海底資源喪失を見越しての既得権確保にあった。政府の対応に憤る植物生態学者・南方洋司、地質学者・菅原秀明ら6人の科学者は、独自の「ISEIC理論」によって地殻変動を食い止めるべく、極秘プロジェクトを開始する。いっぽう共感覚をもつ青年・伊波岳志は、南方らに同行して訪れた与那国島で、巫女的存在であるムヌチの後間柚と出会う。「琉球の根を掘り起こせ」なる神の声を聞いたという彼女は、大地の怒りを鎮めるため、“14番目の御嶽”を探してくれるよう岳志に依頼するのだが…日本SF史上最高の科学小説、ついに刊行。
与那国島の伊波岳志は、海中の遺跡ポイントが“14番目の御獄”であることを突き止めた。時を同じくして、水深6000メートルの南西諸島海溝では、深海調査船“しんかいFD”のパイロット・武田洋平が巨大な人工構造物を発見していた。その符合を検証する南方洋司ら科学者の目的は、地殻変動を食い止める唯一の鍵“SEIC(圏間基層情報雲)理論”の実践にあった。しかし、事態はすでに切迫していた。遺跡ポイントへの祈りを通して地中世界を垣間見た後間柚は、「大地の炎が琉球を焼き尽くす」という神の予言を聞く。いっぽう、海底資源を狙う中国の干渉が激化するなか、ついに海底火山が噴火、破滅へのカウントダウンが開始される…構想5年、執筆3年、2000枚の超大作、堂々完結。
複合型超高級マンション・ソナーレを巡る構図。新入居者は貧乏地元住民など一顧だにしないスノッブなハイソ&セレブ。そのハイソを警護する貧乏アルバイト警備員。マンション専用バスの小心な運転手。破滅的家庭環境からギャング化する中学生。宅配ピザのアルバイトで糧を得るカメラマン志望の若者。誰にも邪魔されずひっそりと暮らすことだけが願いの近隣ホームレス。そのホームレスを喰いものにして保険料を掠めとる暴力団。スラム化する街をテーマにミュージッククリップを制作する教祖的ミュージシャンとデザイナー。彼らの私利私欲が恐るべき大暴動へと繋がってゆく…。
探偵を名乗るものは皆、ある一定の調査力を持っている……わけではない。現在、日本では探偵社・興信所・調査会社を取り締まる法律や規制がないため、なろうと思えば誰でも探偵になれるから、ぱちもん業者が巷にわんさと溢れているのだ。ちなみに「ぱちもん」とは、偽物の意。本書は、そんな探偵たちの怪しい実態と、依頼人たちとのすったもんだを小気味よく、ときに優しい視点で描いた、シニカルな笑い満載のどつぼ系連作短編集。
岩鉄こと南町奉行所同心、岩本鉄次郎はこのところ調子がでない。追っている盗賊「女郎蜘蛛」にはいつも逃げられてしまう。何せお江戸は広く、賊がどこに現われるのやら、まるで見当もつかない。思わず長ったらしい息を吐けば、十文字屋のおてんば娘に「恋わずらい」といわれる始末。岩鉄はもう一度、溜め息をついた。中年同心のせつない恋ごころをかなえるべく、深川で一番のじゃじゃ馬小町が一肌脱いだ。好評の第2弾。
暴力団組長の子供ばかりを狙った猟奇殺人が発生。捜査を任されたのは、かつて未成年の容疑者を射殺して警察を追われた〈狂犬〉と恐れられる元刑事だった。大沢ハードボイルドの新たなる代表作。
新宿に厳戒令。中国人マフィアと暴力団の全面戦争が始まった!殺された組長の子供は、口に携帯電話を押し込まれていた。中国人の仕業だと暴走した暴力団員、血染めの応酬をする中国人マフィア、緊急配備につく機動隊…。ついに警察庁の女性キャリア刑事は、<狂犬>に禁じ手の拳銃の使用を許可した。…神よ、あなたは一体何人死ねば許すのか?