2006年4月発売
浅草ヒョウタン池の名物占い師あびる尊者とは幼なじみ。患者の中には、成島柳北(将軍侍講・明治のジャーナリスト)、安田善次郎(安田銀行・安田生命創業者)、古川阪次郎(鉄道院副総裁)などの英傑もいるのに、情人は塩飽生まれオランダ帰りの腕っぷしのいい水夫…意気でまろめて浮気でこねて、鍼師渡世、江戸っ子おしゃあの幕末明治一代記。
僕はキリストのクローンなのか?次々と起こる不思議は奇蹟なのか?2026年、アメリカ政府はイエスのクローン計画を再始動、聖骸布の血痕から創られたという若者を発見した!様々な陰謀が渦巻き、予期せぬ結末を迎える…。ゴンクール賞作家による禁断のミステリー・ロマン。
二一歳の多喜子は誰にも祝福されない子を産み、全身全霊で慈しむ。罵声を浴びせる両親に背を向け、子を保育園に預けて働きながら一人で育てる決心をする。そしてある男への心身ともに燃え上がる片恋ー。保育園の育児日誌を随所に挿入する日常に即したリアリズムと、山を疾走する太古の女を幻視する奔放な詩的イメージが谺し合う中に、野性的で自由な女性像が呈示される著者の初期野心作。
学生小町田粲爾と芸妓田の次とのロマンス、吉原の遊廓、牛鍋屋ー明治10年代の東京の学生生活と社会風俗を描いた日本近代文学の先駆的作品。坪内逍遙(1859-1935)は勧善懲悪を排して写実主義を提唱した文学理論書『小説神髄』とその具体化としての本書を著し、明治新文学に多大な影響を与えた。
均整と統一という明確な方法意識を持っていたポオ(1809-1849)は、短篇小説に絶妙な手腕を発揮した“スタイリスト”であった。胸躍る痛快な暗号解読の物語『黄金虫』、夢幻的雰囲気と緊迫感にひたされた『アッシャー家の崩壊』-。『ボン=ボン』『息の紛失』等、ノンセンス物も収録した、ヴァラエティゆたかなアンソロジー。
太古の森をいだく島へー学生時代の同窓生だった男女四人は、俗世と隔絶された目的地を目指す。過去を取り戻す旅は、ある夜を境に消息を絶った共通の知人、梶原憂理を浮かび上がらせる。あまりにも美しかった女の影は、十数年を経た今でも各人の胸に深く刻み込まれていた。「美しい謎」に満ちた切ない物語。
権現市へ買い物に出かけたところ、うら寂しい祭りの主催者に見込まれ、「権現躑躅踊り」のリハーサルに立ち会う。踊りは拙劣。もはや恥辱。辟易する男の顛末を描いて川端康成文学賞を受賞した表題作や、理不尽な御老公が市中を混乱に陥れる、“水戸黄門”の町田バージョン「逆水戸」など、著者初の短編集。
雨の音を聞きながら、静かな森の中を進んでいく大学時代の同窓生たち。元恋人も含む四人の関係は、何気ない会話にも微妙な陰翳をにじませる。一人芝居を披露したあと永遠に姿を消した憂理は既に死んでいた。全員を巻き込んだ一夜の真相とは?太古の杉に伝説の桜の木。巨樹の森で展開する渾身の最高長編。
「…あたしね」「うん」「宇宙人みつけたの」「…」。男女の会話だけで構成される6篇の連作編篇集。宇宙人、四十四年後、呪い、狼男、幽霊、嘘。厄介な話を証明しようとするものの、ことごとく男女の会話はもつれにもつれー。エンタテインメントの新境地を拓きつづけた著者の、圧倒的小説世界の到達点。
「知りたいですか」。郷土史家・常島なる男の蠱惑的な囁きは、関口巽を杳冥の中へと連れ去った。昭和十三年、伊豆韮山付近の集落でおきたという大量殺人は果たして“真実”なのか。かたや“死にたがる男”村上兵吉を助けた朱美は、妖しき結社「成仙道」の勧誘手口を知るが、そこにもうひとつ疑惑の影がさす。
一度たずねてみてください。わたしがあなたに贈る最後のプレゼントを用意しておきましたー。そう綴られた亡き妻の手紙だけを頼りに、ビアバー“香菜里屋”にやってきた神崎。マスター・工藤が語った、妻がプレゼントに込めた意味とは…。客から持ちかけられた謎の数々を解明かす連作短編集の第2弾。
史上最強の剣豪といわれる宮本武蔵。彼の才能の中で、最も卓越したのは「見切り」という計算力だった。試合の相手を選ぶとき、必ず己よりも弱いと見切ってからでなければ、立ち合わなかった…。通説の裏に潜む、武蔵の実像に迫る表題作ほか、さまざまな生き方をした、有名無名五人の剣客を描く短編集。
一日一麺の人生をつらぬく作家は、尿酸値の高さを指摘され、非プリン体系食品に覚醒する。代用麺類として着目したモヤシに激しく傾倒、妻も巻き込みモヤシ料理に工夫を重ねる。ついに利尻島に栽培キットを持参しモヤシ育成の旅が始まる。旅と食い物にこだわり抜く堂々の“私モヤシ小説”。同時収録「モズク」。
春秋から三国時代を経て隋唐、南宋。中原に覇を競った人びとを活写し、今なお多くの読者を魅了する『小説十八史略』。のちの始皇帝、秦王暗殺を命じられた荊軻。金の都で蒙古から史書を守る宿命を負った宋人王勉をはじめ、孟嘗君、楊貴妃など「十八史略」の時代に生きた人物に光をあてる歴史小説コレクション。
夏期講習を抜け出した14歳の真名子は、広い庭のある古びた家が気になって、入り込んでしまう。そこでは青年がひとり静かな時間を過ごしていた。彼と話していくうちに、真名子の悩みが少しずつ明らかになる。友情、家族、進路、誰もが共感する、思春期の苦悩を瑞々して筆致で描いた講談社児童文学新人賞受賞作。
「私の中の何かが死んだ」出所を心待ちにしていた男が四年前に獄中自殺していた。何も知らされなかった村野ミロは探偵を辞め、事実を秘匿していた義父を殺しにいく。隣人のホモセクシャルの親友。義父の盲目の内妻。幼い頃から知っている老ヤクザ。周囲に災厄をまき散らすミロを誰もが命懸けで追い始めた。