2006年4月発売
浅草ヒョウタン池の名物占い師あびる尊者とは幼なじみ。患者の中には、成島柳北(将軍侍講・明治のジャーナリスト)、安田善次郎(安田銀行・安田生命創業者)、古川阪次郎(鉄道院副総裁)などの英傑もいるのに、情人は塩飽生まれオランダ帰りの腕っぷしのいい水夫…意気でまろめて浮気でこねて、鍼師渡世、江戸っ子おしゃあの幕末明治一代記。
僕はキリストのクローンなのか?次々と起こる不思議は奇蹟なのか?2026年、アメリカ政府はイエスのクローン計画を再始動、聖骸布の血痕から創られたという若者を発見した!様々な陰謀が渦巻き、予期せぬ結末を迎える…。ゴンクール賞作家による禁断のミステリー・ロマン。
21歳の多喜子は誰にも祝福されない子を産み、全身全霊で慈しむ。罵声を浴びせる両親に背を向け、子を保育園に預けて働きながら1人で育てる決心をする。そしてある男への心身ともに燃え上がる片恋ーー。保育園の育児日誌を随所に挿入する日常に即したリアリズムと、山を疾走する太古の女を幻視する奔放な詩的イメージが谺し合う中に、野性的で自由な女性像が呈示される著者の初期野心作。 太陽に向かう植物のように子を育む女の命の輝き 21歳の多喜子は誰にも祝福されない子を産み、全身全霊で慈しむ。罵声を浴びせる両親に背を向け、子を保育園に預けて働きながら1人で育てる決心をする。そしてある男への心身ともに燃え上がる片恋ーー。保育園の育児日誌を随所に挿入する日常に即したリアリズムと、山を疾走する太古の女を幻視する奔放な詩的イメージが谺し合う中に、野性的で自由な女性像が呈示される著者の初期野心作。 星野智幸 私は、多喜子のような母親を持った晶は幸せである、と思う。なぜなら、今の若い世代が内側に抱えこんでいる空虚さを、多喜子自身がすでに25年以上も前に持っていて、それを乗り越えようと格闘したからである。(略)子どもは、上の世代を見て育つ。親を見て、教師を見て、上司を見て、生き方の選択肢を広げていく。現代に晶がもっとたくさんいたら、と私は夢想する。家族のあり方は何倍も豊かでありえたのではないだろうか。--<「解説」より> 真夏 森 泣き声 道 冬 若葉 山 顔 著者から読者へ
衆人環視の白木の箱の中から突如消えた“人形の首”。直後、殺人現場には、無惨な首なし死体と、消えたはずの人形の首が転がっていた。殺人を予告する残酷な人形劇。それは犯人からの挑戦状か!? 神津恭介がアリバイトリックに挑む。著者の校正用初版本の加筆修正を採った決定版。同時期に書かれた短編「罪なき罪人」「蛇の環」を収録。<巻末エッセイ・二階堂黎人>
大レースの本命馬が失踪、その調教師の死体も発見されて英国中が大騒ぎとなる「名馬シルヴァー・ブレイズ」。そのほか、ホームズが探偵になろうと決心した若き日の事件「グロリア・スコット号」、兄マイクロフトが初めて登場する「ギリシャ語通訳」、宿敵モリアーティ教授と対決する「最後の事件」まで、雑誌掲載で大人気を得た12編を収録した第2短編集。
学生小町田粲爾と芸妓田の次とのロマンス、吉原の遊廓、牛鍋屋ー明治10年代の東京の学生生活と社会風俗を描いた日本近代文学の先駆的作品。坪内逍遙(1859-1935)は勧善懲悪を排して写実主義を提唱した文学理論書『小説神髄』とその具体化としての本書を著し、明治新文学に多大な影響を与えた。
均整と統一という明確な方法意識を持っていたポオ(1809-1849)は、短篇小説に絶妙な手腕を発揮した“スタイリスト”であった。胸躍る痛快な暗号解読の物語『黄金虫』、夢幻的雰囲気と緊迫感にひたされた『アッシャー家の崩壊』-。『ボン=ボン』『息の紛失』等、ノンセンス物も収録した、ヴァラエティゆたかなアンソロジー。
権現市へ買い物に出かけたところ、うら寂しい祭りの主催者に見込まれ、「権現躑躅(つつじ)踊り」のリハーサルに立ち会う。踊りは拙劣。もはや恥辱。辟易する男の顛末を描いて川端康成文学賞を受賞した表題作や、理不尽な御老公が市中を混乱に陥れる、“水戸黄門”の町田バージョン「逆水戸」など、著者初の短編集。 文学で踊れ! 川端康成賞受賞作。 権現市へ買い物に出かけたところ、うら寂しい祭りの主催者に見込まれ、「権現躑躅(つつじ)踊り」のリハーサルに立ち会う。踊りは拙劣。もはや恥辱。辟易する男の顛末を描いて川端康成文学賞を受賞した表題作や、理不尽な御老公が市中を混乱に陥れる、“水戸黄門”の町田バージョン「逆水戸」など、著者初の短編集。 鶴の壺 矢細君のストーン 工夫の減さん 権現の踊り子 ふくみ笑い 逆水戸
「…あたしね」「うん」「宇宙人みつけたの」「…」。男女の会話だけで構成される6篇の連作編篇集。宇宙人、四十四年後、呪い、狼男、幽霊、嘘。厄介な話を証明しようとするものの、ことごとく男女の会話はもつれにもつれー。エンタテインメントの新境地を拓きつづけた著者の、圧倒的小説世界の到達点。
「知りたいですか」。郷土史家・常島なる男の蠱惑的な囁きは、関口巽を杳冥の中へと連れ去った。昭和十三年、伊豆韮山付近の集落でおきたという大量殺人は果たして“真実”なのか。かたや“死にたがる男”村上兵吉を助けた朱美は、妖しき結社「成仙道」の勧誘手口を知るが、そこにもうひとつ疑惑の影がさす。
一度たずねてみてください。わたしがあなたに贈る最後のプレゼントを用意しておきましたー。そう綴られた亡き妻の手紙だけを頼りに、ビアバー“香菜里屋”にやってきた神崎。マスター・工藤が語った、妻がプレゼントに込めた意味とは…。客から持ちかけられた謎の数々を解明かす連作短編集の第2弾。
一日一麺の人生をつらぬく作家は、尿酸値の高さを指摘され、非プリン体系食品に覚醒する。代用麺類として着目したモヤシに激しく傾倒、妻も巻き込みモヤシ料理に工夫を重ねる。ついに利尻島に栽培キットを持参しモヤシ育成の旅が始まる。旅と食い物にこだわり抜く堂々の“私モヤシ小説”。同時収録「モズク」。
春秋から三国時代を経て隋唐、南宋。中原に覇を競った人びとを活写し、今なお多くの読者を魅了する『小説十八史略』。のちの始皇帝、秦王暗殺を命じられた荊軻。金の都で蒙古から史書を守る宿命を負った宋人王勉をはじめ、孟嘗君、楊貴妃など「十八史略」の時代に生きた人物に光をあてる歴史小説コレクション。