2006年発売
脳の病を患い、ほとんどすべての記憶を失いつつある母・千鶴。彼女に残されたのは、幼い頃に経験したという「凄まじい恐怖」の記憶だけだった。バッタの飛ぶ音、突然の白い閃光、血飛沫と悲鳴、惨殺された大勢の子供たち…。死に瀕した母を今なお苦しめる「最後の記憶」の正体とは何なのか?ホラーの恐怖と本格ミステリの驚きー両者の奇蹟的な融合を果たした、名手・綾辻行人の長編小説。
児童相談所の所長・山野は、増え続ける児童虐待の報告に頭を抱えていた。その増え方は、明らかに異常だ。児童虐待で始まった違和感は、刑事事件へと発展し、京都の町は瞬く間に無差別殺人によるパニックに陥った。だが、無差別に見えた殺人には、実はある一つの「法則」が隠れていた-。人類進化の最終形態を、戦慄すべきヴィジョンで提示した、恐るべき予言の書。第6回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。
私は兄弟二人を愛してしまった…。いつでも会えるホストの亮太と、片想いの浩介。兄を買っているなんて、弟には絶対に言えない…。雑誌ライターの窓香が踏み込んだ出口のない恋。じりじりと秘密の水位が上がっていき、一緒に暮らす妹までもがからまって…。-やりきれない孤独感、強烈な不公平感ーさみしさがあなたのまわりに静かに降りつもる恋愛小説。
貧しい日系ブラジル人移民の子・ミルトン。学校で執拗ないじめを受ける幸太郎と英世。少年たちの閉ざされた心を解放するもの、それは音楽だけだった。やがてミルトンと幸太郎は、自分たちの音楽を作りはじめる。ミルトンの意識が頂点をむかえたとき、二人は究極の音楽『アベーリャ』を編み出す。アベーリャ=ミツバチと名づけられたその音楽は、人の意識を変容させるものだった。ふたりのユニット「トランス=ソニック」は世界デビューへとむかうが、アベーリャの毒はミルトンの意識を侵しはじめていたー。
不肖わたくしめは、ロンドンの裏街で探偵を営むパキスタン系イギリス人トミー・アクタル。人生において知るべきことはクリケットから学び、ワイルド・ターキーと煙草がなくては手先が震えるアフガニスタン帰りの元聖戦士ってとこだ。そんなわたしの薄汚いオフィスに、ゼリーみたいなおっぱいの黒人娼婦がノックもなしに訪ねてきた。その名はメロディ・チェイス。行方不明の娼婦仲間を探してほしいという。下心からなんかじゃなく調査をはじめた優秀な(よく言うよ)わたしだが、事態はやがて下院議員殺害事件、さらにはロンドンを襲う自爆テロ騒ぎに発展してくって、マジかよ、こりゃ。ロンドンを襲った自爆テロ。ほんとうの犯人は誰なのか?ウィットブレット賞を射止めた英国の新鋭が紡ぎあげる、探偵小説のニュー・ボイス。
時間的同一性交換によって6カ月前の世界へ向かった俺が見たのは、すべてが燃えあがり、あらゆる生命が死滅した終末のパノラマだった-タイムトラベル実験の恐るべき顛末を描いた表題作、謎の異星生命体との危険なコンタクトを果たした詩人の手記にしてSFマガジン読者賞受賞作「メデューサの呪文」、アキバ系科学幻想譚「シュレディンガーのチョコパフェ」ほか、全6篇を収録する最新作品集。時間、宇宙、言語、超人テーマなど、SFならではのアイデアを現代に蘇らせる、科学と奇想と語りの饗宴。
骨董商の凌は、香港出身の資産家、塔眞家の三男・貴礪の“秘密の花嫁”。初めは凌を罠にはめ強引に躰を奪った貴礪…だが、お家騒動の波乱を経て今、二人は愛の絆で結ばれている。そんな折、国宝級の青磁小瓶を巡って不穏な動きが…。凌に急接近してきたカメラマン、橋爪の正体は?…闇の盗品市の実体は?…さらに、凌の身を案じて縛りつけようとする貴礪との間に亀裂が…。危険なウェディングロマン。
冷徹なチャイニーズマフィア、王とアブない関係になってしまった平凡な…でも好奇心旺盛すぎる大学生の三枝。しばらく平穏だったそんな二人の日常だが、王が突然逮捕され、またもやトラブルの予感…。その上、三枝のバイト先の喫茶店に足しげく通ってくる男、藤川が実は王を密かにマークしていた刑事だったことから…。年の差&ギャップありまくりラヴァーズに天敵出現!ドキドキメラメラな束縛愛。
北海道の片隅。坂の上から美しい日本海を望むこの小さな街で、ぼくはちせと出逢った。「ごめんなさい」が口癖のちせに、ぼくはつい邪険な態度をとってしまうけれど、ちせはかわいい。不器用なぼくらは、いまどきの高校生には珍しく交換日記をしながら「つきあって」いる。ある日ぼくは、ちせの異変に気づいてしまった。札幌の街で空襲に遭ったあの日、戦火の瓦礫の中に見た制服姿の少女ーひとりで呆然と立ち尽くす彼女はまぎれもなく、ちせだったー。原作者・高橋しんとの強力タッグのもと、大ヒットコミック『最終兵器彼女』が、新たな息吹をあたえられた至上の恋愛小説。
岡山県の山間の集落・撓田。東京から転校してきた中学生が惨殺され、連続猟奇殺人事件の幕が上がる。犠牲者は皆、土地の権力者・朝霧家の関係者。遺体の下半身は、噛み千切られたような傷を残して失われていた。惨劇は、三十年前に撓田を震撼させた忌まわしい出来事の再来か、あるいは朝霧家への復讐なのかー。鬼才・小川勝己が横溝正史へのオマージュをこめて放つミステリの雄編。
豊臣秀吉の天下統一、この偉業は「二兵衛」と呼ばれた名軍師ー竹中半兵衛重治と黒田官兵衛孝高を抜きにして語れない。置かれた環境は異なり、性格も正反対であったにもかかわらず、互いの才を認め合い、相手を信頼し合って、秀吉の天下取りを補佐した半兵衛と官兵衛。二人がともに抱き続けた志、友情とはいかなるものだったのか。不世出の軍師二人の鮮烈な人生を描いた力作長編小説。
社長であった父親の自殺後、倒産寸前のデパート経営をいきなりまかせられた一人娘チェリン(イェ・ジウォン)。彼女を陰ながら見守る優しい婚約者スンウ(チ・ジニ)。紙切れ同然となったデパートの債券を手に何とかしろとチェリンに詰め寄るダメ男ギプン(チャ・テヒョン)。3人の恋模様に、デパート再建、企業買収劇もからんで、この先一体どうなるの。