2007年10月発売
「あなたが天国へ行った瞬間を知ってたわ。だって真夜中にきたわよね、私の部屋に。ごめんねって泣きながら…」「兄弟、おれに黙って、なぜ先に逝った。バカヤロー!」親友の葬式で、勝手に死者との絆を強調する自己陶酔型の弔辞に嫌気がさした会社社長の本宮は、自分自身の生前葬を企画する。だが彼は知らなかった。妻の涼子が重い病に冒されて、余命幾ばくもないのを隠していることを…。
27歳の亜紀は、大手出版社の編集者と結婚して幸せいっぱい、仕事も楽しくてたまらない。文芸書はもちろん、コミック、ライトノベル、ボーイズラブにも気を配り、売り場改革案や人気漫画家のサイン会など、ユニークな企画を次々打ち出している。ところが、40歳の独身副店長・理子とは、ことごとく衝突続きの日々。その理子が店長に昇進した直後、6ヵ月後に店が閉鎖されると知った二人は…。恋愛、失恋、結婚、離婚、たまには嫉妬や喧嘩だってある。ワーキングガールズの世界は、幸せ色のピンクや涙色のブルーで彩られたビックリ箱。この本は、働く女性たちへのリアルな応援歌。
円盤の事故で不時着した宇宙人とアパートの住人との交流を描く表題作、ある日突然宇宙からやってきて世界中の道路を走りはじめた無数のボールの騒動、落語の語り口によるブリキ屋源さんのライターをめぐる数奇な物語、交通事故を境に理由もなく人に嫌われるようになった男の悲劇等、語りの名手による奇妙な10のSF短篇。
享保四年暮れ以来、大店を狙った連続火付が江戸の町を騒がせていた。皆殺しの上、金品が強奪された焼け跡には、“火頭の歌右衛門”の名が残されている以外、手掛かりは全くない。折も折、江戸町火消再編成を指揮する南町奉行・大岡越前守をあざ笑うが如く頻発する火付に対し、大岡の懐刀・金杉惣三郎が立ち上がった!火頭の正体は、その真の狙いとは…。
長屋暮らしの金杉惣三郎の許に突如、豊後相良藩から使者が到着した。藩主斎木高玖の側室・清香に御法度である“きりしたんばてれん”の疑いがかかり、藩自体が窮地に陥っているという。旧主を救うべく立ち上がる惣三郎に、次々と襲いかかる兇刃の影。さらに、惣三郎極意の寒月霞斬りを超える“一期一殺剣”とは?「密命」初期の傑作、読みやすくなった新装版で登場。
東京郊外で若手カメラマン誘拐事件が発生。しかし犯人からの要求はなく、三日後にカメラマンは無事保護された。十津川警部が被害者の身元を調べると、幼少時に河原で発見され養護施設で育てられたことがわかる。それ以前の彼の記憶は「SL、桜、二人の男女」という曖昧なものだった。十津川はこの記憶が事件に関わる鍵と睨み、捜査を開始する。その矢先、静岡の大井川鐵道で第二の事件が発生し…。傑作長編トラベル・ミステリー。
豪華客船・飛鳥で秘密裏の調査をしていた浅見光彦はトスカーナから謎めいた手紙を受けた。トリノに伝わる聖骸布、ダ・ヴィンチが残した謎、浅見兄弟を翻弄する怪文書。彼らが出会った人類最大の禁忌とは。
日曜日の昼下がり、株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には強化ガラス。オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務が逮捕されて……。弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。日本推理作家協会賞受賞作。月9ドラマ『鍵のかかった部屋』原作!
彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた愛娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。江知佳の身を案じた叔父の川島敦志は、法月綸太郎に調査を依頼するが。
趙安と董万、梁山泊殲滅へと動き出す 官はついに、趙安と董万に梁山泊完全殲滅を命じる。趙安は流花寨に向けて進軍を開始した。同時に董万は、双頭山攻撃を目論む。二人の猛将を、梁山泊軍が迎え撃つーー。(解説/西上心太)
15年ぶりに、しかも誕生日に、部屋に恋人未満の男を招くことになった36歳の由紀子。有休を取り、ベッドの到着を待ち、料理を作って待つが、肝心の山田伸夫が…来ない!表題作ほか、新入りが脱走した相撲部屋の一夜を描く「八十畳」。やもめ暮らしの大叔父が住む、木造平屋に残る家族の記憶をひもとく「私は彼らのやさしい声を聞く」など、“7つのへやのなか”を、卓越したユーモアで描く傑作短篇集。
将来を嘱望されながら、ある事件をきっかけに落ちぶれてしまったピアニスト響子。酒に溺れながら孤独に生きる彼女のもとに、かつて恋人だった透子が戻ってきた。ある日突然、赤ん坊を抱いて。しかし、女同士のカップルと赤ん坊の不思議な関係は、突然の透子の死によって壊れてしまう。希望を失いかけた響子の前に一人の青年が現れたー。切ない愛と新しい家族のかたちを描く、恋愛小説の傑作。
1857年ヴィクトリア朝英国、科学的な地質研究によって、信仰のよりどころの危機にさらされた牧師ウィルソンは独学で地質学を修得。“エデンはタスマニアにある”という新説を発表し、キリスト教世界における時代の寵児となる。ついには、医師ポッターと植物学者レンショーを引き連れて、タスマニアへ実証の旅に出発する。だが、一行がチャーターした“シンセリティ”号は、船長をはじめ、英国人を目の敵にするマン島人だけが乗り組むいわくつきの帆船。そのため、税関吏との数々のトラブルに巻き込まれたり、海賊に襲撃されたりと波瀾万丈の船旅が続く。さらに、性格が水と油の牧師と医師の対立は、旅程を追うにつれ、激化する一方。地球をほぼ半周はる珍道中が繰り広げられるのだった。一方、英国による植民地化が緒についたばかりの1820年のタスマニアでは、同化政策が積極的に進められていた。アボリジニの母親と白人の父親のあいだに生まれたことから、母親やアボリジニ社会から疎まれて育ったピーヴェイは、種族の存続のため、白人の言葉を覚え、白人社会に入り込もうとしていくが…。やがてウィルソンら一行はタスマニアに到着し、ついにエデンを目指すべく探検に出発する。そこには、ガイドとして彼らに随行するピーヴェイの姿があった。一行が英国から遙か東の果ての地で目にしたものとは…。博覧強記の作者ニールが、綿密な時代考証のもと、総勢20人の語り手を創造し綴った歴史奇想大作。2000年度ウィットブレッド賞受賞。
最新テクノロジーで、大陸まるごとひとつをゲーム世界に仕立てあげた超人気テーマパーク、バーバリアン・エイジ。ここに潜入捜査していたユリとケイは、ヒロイックファンタジーの世界にどっぷりと漬かっていた。ところが何者かがバーバリアン・エイジにハッキングをかけ、ゲームのシステムを書き換えたために、世界が一変してしまったのだ。ユリとケイは、事件の核心に迫るべく捜査を再開する。サトシとピカチュウに捧げる、ヴァーチャル・アドヴェンチャー。
小説短編集は売れないと言われる。複数作家によるアンソロジーとなると、さらに敬遠されがちになるのが実情だ。かく言う筆者も、どうせ読むならドシンと重たい長編を、と思ってしまう。が、ご存じだろうか?世に傑作と謳われる映画の多くは、短編小説を原作としている事実を。発想と構成という点において、作り手が投入するエネルギーは長編も短編も変わらないのだということを。本書に収録された玉編の中に、十年後の伝説が潜んでいる可能性は十分にある。決めるのは時間、確かめるのはあなただ。