2007年10月発売
雀ゴロの英さんは、一本気なイカサマ師。だけど最近はどこの麻雀クラブも油断しなくなって、商売あがったり。そこへ謎の美女が現れて「麻雀を教えて」とせがむ。下心をこらえて彼女と組んだ英さんは、大勝負に臨むが…。表題作「天和をつくれ」ほか、文庫初収録の短篇計八作。いずれも、ギャンブルが題材ながら、描かれているのは、勝負に生きる“人間”たちの哀楽にみちた人間模様。昭和の匂いを満喫できる一冊。
戦後まもなくの上野ドヤ街を舞台に、坊や哲、ドサ健、上州虎、出目徳ら博打打ちが、人生を博打に賭けてイカサマの限りを尽くして闘う「阿佐田哲也麻雀小説」の最高傑作。解説・先崎学
ヒロポン中毒となり、やさぐれ生活を送っていた坊や哲は、代打ち麻雀でいかさまを見破られた。その後、生臭坊主クソ丸、ドテ子とともに東京から大阪へ移ったが、そこで出会ったのがブウ麻雀だった。京都の博打寺を舞台に関西のブウの鬼たち相手に激闘を繰り広げる阿佐田哲也の傑作ピカレスクロマン第二弾。
画家・青木優二は謎のドイツ人女性・エルザから、第二次大戦中、ナチスの強制収容所でユダヤ人の父親と日本人の母親の間に生まれた子供が自分だと知らされる。平穏な生活から一転、謀略渦巻くヨーロッパへ旅立つ青木。1988年「週刊文春ミステリーベスト10」第1位に輝いた幻の傑作ミステリーがいま甦る。
結婚する、しない。 子どもがいる。いない。 それだけで女どうし、 なぜ分かりあえなくなるんだろう。 異例のロングセラーを記録中の、角田光代の直木賞受賞作。 35歳の専業主婦・小夜子は、同い年のベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、 ハウスクリーニングの仕事を始めるが……。 多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く感動の傑作長編にして、第132回直木賞受賞作。 夏川結衣、財前直見、堺雅人、根岸季衣、木村多江、香川照之、国分佐智子、多部未華子ら豪華スタッフが共演したWOWOWのドラマは、『愛を乞うひと』の平山秀幸が監督、平成18年度芸術祭テレビ部門優秀賞を受賞した。
今日も私は、庭の木に括りつけたかごの牛脂をつつきに来る四十雀を部屋の中から眺めているーバラの花は例年のように蕾をつけ、鈴虫は「お帰りなさい」と夫婦を迎え、子や孫たちの便りがほほ笑みを運び込む。季節のめぐりのなかで変わらずに続く、老夫婦ふたりの静かで喜びに満ちた日々を描いた傑作長篇小説。
女の顔は男しだいで変わるという。これまで誰にも頼らず一人で生きてきたが、深く男を愛するようになったまさき。祖父の莫大な遺産を相続することになり、態度を豹変させる親戚や、恋人・慎一郎の母が隠していた出生の秘密など、女の強さ・弱さが複雑に絡まり、まさきの恋は数奇な運命に翻弄され、最後に一つの決心を生み出す。
希いを叶える貝殻細工の小箱から…置き薬屋が残した試供品の酔い止めから…朝顔市で買った夕顔の鉢植えから…和泉屋の苺のショートケーキから…骨董商で見つけた蓋つきの飯茶碗から…思いがけないことから、彼らの運命は動きはじめる。或るときは異界と交じり、或るときは時空を超え、妖しく煌く14の極上短篇集。
鷹匠になることを夢見て“最後の鷹匠”に弟子入りした杉浦岳央。だが高齢の師匠に不満と不安を覚え、早々に袂を分かつ。雪深い月山の麓でひとり、手探りで訓練を重ねるが、猛禽類のなかでもとりわけ神経質といわれる角鷹を、岳央は操れるようになるのかー。野生の鷹と人間の対峙を描く。直木賞受賞作『邂逅の森』に連なる感動作。
一九四五年八月十五日ー東京、品川の軍需工場で女性の腐乱死体が発見された。そして一年後に発見される第二、第三の死体…敗戦を機に解き放たれた殺人鬼。そいつは何者なのか?それを追う警察もまた、その内部に大いなる秘密を隠しー実在の連続殺人鬼・小平義雄の事件をモチーフに現代イギリス文学の旗手デイヴィッド・ピースが描く日本の「占領」とその闇。戦慄の超大作“東京三部作”開幕。
少林寺に幽閉されている任盈盈を、救出に向かう令狐冲。しかしそこには武林制覇をもくろむ者たちの、恐るべき陰謀が待っていた。激化する正派と邪派の争いの中、あらぬ嫌疑をかけられたまま、令狐冲は、いよいよ師・岳不羣の挑戦を受ける…。
ローマーこの頽廃の都では恋など懶い日々のほんの一興。だが、ウィニキウスは心のすべてを傾けた。相手はリギ族王家の娘、人質の身の上、そしてキリスト教徒だったー。ヘリニズムとヘブライズムの拮抗を背景に、壮大な歴史ロマンの幕が上がる。
傷ついたウィニキウスを一心に看護するリギア。神への愛に身を捧げる人たちの中にあって、それぞれの心に重大な変化が芽生え、やがて幸福の予感が二人を包む。しかし、ネロの気紛れからローマの街は一面の火の海にのみこまれることに…。
怨霊や生霊の世界が身近にあった室町時代末期。六代将軍の落胤という熊野の源四郎は「将軍になろう」と、飢饉と戦乱で荒廃しきった京へ上る。都では八代将軍足利義政の御台所日野富子と、側室の今参りの局が権勢争いに明け暮れていた。その暗闘に巻き込まれた源四郎を、幻術師・唐天子の奇々怪々な幻戯が襲う。
終焉をむかえつつある人類の世界。探偵・南深騎(みき)と菜美の下に、黒鴣瑠華(くろうるか)と名乗る美少女が現れた。眠り続ける美女。蠢く人面蒼。3つの時を刻む巨大な時計。謎が漂うクロック城に2人を誘う瑠華。そこに大きな鐘が鳴り響いたとき、首なし遺体が次々と現れた。驚愕のトリックが待つ、本格ミステリ。(講談社文庫) 世界が終わる瞬間、あなたは誰と一緒にいたいですか? 「その時」だからこそわかる、本当に大切な人、守りたいもの。あなたなら、そのために人を殺せますか? 歓喜した。こんな本格の傑作に出会えようとは。--有栖川有栖 終焉をむかえつつある人類の世界。探偵・南深騎(みき)と菜美の下に、黒鴣瑠華(くろうるか)と名乗る美少女が現れた。眠り続ける美女。蠢く人面蒼。3つの時を刻む巨大な時計。謎が漂うクロック城に2人を誘う瑠華。そこに大きな鐘が鳴り響いたとき、首なし遺体が次々と現れた。驚愕のトリックが待つ、本格ミステリ。 「もしも、『クロック城』をブレイク前の習作だと思っている方がいたら、ぜひ本書を読んで勘違いに気づいていただきたい。(中略)シュアで美しい推理をたどり、ゴールに着いた時は、溜め息が出た。しごく素直な気持ちで、凄い、と思った。」--<有栖川有栖氏「解説」より> 第24回メフィスト賞受賞作