2007年1月発売
妊娠8ヶ月、それなのに入籍も同居も決められないままの美咲。ふと手にしたネガのフィルムから、思い出が鮮やかによみがえる。過去の愛、今の幸せ、その間に置き去りにされたのは、こころー。表題作「白い月」のほか、妊娠、出産という女のドラマを軸にした短篇全8編。からだの変化とともに変容してゆく愛のありようを細やかにつむぐ。
さえないライター稼業の真一が射止めたのは、容姿端麗、頭脳明晰、3歳年上のスーパーエリート梨香子。出会って4ヶ月で結婚はしたけれど、それこそ百年の恋もさめるような悲惨な日々がはじまる。仕事はできるけど、家事はいっさいダメな妻。妙に冗帳面で生活巧者の夫。かみあわないふたりの毎日は、梨香子の妊娠で、そのキテレツぶりに拍車がかかる。逆転カップルの結婚生活を描く傑作コメディ。
廃止寸前のオンボロ地方競馬場。賞金は激安、集まるのは他で勝てなくなった馬ばかり。しかし、若手ジョッキーの一輝はそこで世界制覇の夢を追い続けていた。彼は、持ち前の「豪腕」で馬にラストスパートをかけさせる戦法で勝ち星を重ね、大レースに出るチャンスをつかむ。だが直前で落馬事故に遭ってしまいー。逆境に負けず、勝利を信じて疾走し続ける騎手を描いた青春小説。文庫書き下ろし。
疾風怒濤の開拓期を生きた、この破天荒な人生!著者渾身の大河歴史巨編、待望の第二部、千四百枚!アイヌに心を通わせた男と無頼の一家を起こした男ー広大無辺の蝦夷地の原野を男たちの「運命」が奔る。
事故で亡くなった愛妻の肝細胞を密かに培養する生化学者・利明。Eve 1と名付けられたその細胞は、恐るべき未知の生命体へと変貌し、利明を求めて暴走をはじめるー。空前絶後の着想と圧倒的迫力に満ちた描写で、読書界を席巻したバイオ・ホラー小説の傑作。新装版刊行に際して、発表時に研究者でもあった著者から、科学者あるいは小説家を志す人達に贈る、熱いロングメッセージを収録。
日本統治下の朝鮮・密陽に生を受け、マラソンでの五輪出場を目指した亡き祖父・李雨哲。そのうしろ姿を追い、路上を駆けることを決意した柳美里。ふたりの息づかいが時空を越えて重なる瞬間、日本と朝鮮半島のあわいに消えた無数の魂が封印を解かれ、歴史の破れ目から白い頁に甦る。偉丈夫の雨哲と美丈夫の弟・雨根。血族をめぐる、ふたつの真実の物語が、いま日本文学を未踏の高みへと押し上げる。
1940年、東京オリンピックは幻と消えた。失意の日々、肌の温みを求める女たちを捨て、雨哲は故郷を去り、一方、娘たちを夢中にする美しい容貌と、兄譲りの健脚に恵まれた弟・雨根は、いつしか左翼運動に深く傾倒した…小説家柳美里が、国・言葉・肉親、すべてを奪われた無名の人々の声に耳をすまし、自身の生につらなる日本と朝鮮半島の百年の歴史を、実存の全てを注ぎ描きあげた傑作。
愛など捨てたはずだった。恋人を事故で失った若き日に。私は虚無を抱え、アウトローとして闇に暮らしてきた。だが、光を失いながらも懸命に生きるかほると出会い、罅割れた心が潤ってゆく。私は、娘のような年頃の女性を、いつしか全身全霊で愛するようになっていたのだー。男たちの熱き絆。そして不器用な男と女の命を賭けた恋。渾身の長篇小説。
「あのう、すみません。すみませんていうのは働かないとかやりたいことがないとかっていうことについてじゃなくて、いま私がこうやって喋らせてもらってることに関してで。…ええとつまり、働く気はないけど喋る気はあるっていうことです」父を早く亡くし、母に酒をのませてもらい金を無心して生きている私。祖父の三回忌で伯母に「そろそろ働いたら?」と問われ、明かされはじめた過去。中学教師に秘められた戦争中の出来事とはー。圧倒的な筆力で現代を照らしだす新鋭の誕生。新潮新人賞受賞作「冷たい水の羊」併録。
人情溢れる下町を奔走する新米刑事・麻生龍太郎、25歳。誰の目にも日の当たる道だけを歩んでいるように映る龍太郎だが、人には明かせない秘密があった…。ベストセラー「緑子」シリーズの人気キャラクターの過去が初めて明らかに!人情溢れる下町を奔走する新米刑事の内面に迫った連作警察小説。
ロシアで見つかった、ただ一人の日本人残留孤児。満州、ソ連、日本…六十年の時を経て、戦争で損なわれた「私」を探す旅がはじまる。圧倒的なスケールで描かれる魂の救済、そして究極の愛。感動の超大作。
銀河系最強の美女コンビが還ってきた!冷凍睡眠に入っていたユリとケイを目覚めさせたのは、女性型バイオボーグのフローラ。二人が眠っているあいだに、世界はたいへんヤバいことになっているというのだ。起きたばかりの二人は、彼女の依頼を受けて、危機におちいったこの世界を救うために行動を開始したのだが、またもや信じられないトラブルに巻きこまれてしまう。これが、大宇宙を揺るがすダーティペアの復活劇だ。
わたしたちのご主人が殺された!アイルランドののどかな村で、ひつじ飼いのジョージが殺されたから、さあたいへん。ひつじたちは上を下への大騒ぎ。主人の無念をはらすため、世界一賢いひつじミス・メイプル、武闘派ひつじのオテロ、超記憶力を持つひつじモップルら、数十匹のひつじたちは、事件の調査に乗り出した。やがて明らかになる、死体に付いた謎の痕、村人たちが隠していた秘密、不可思議な女の存在…。深まる謎を解き明かすため、ひつじたちは大胆な行動に出る!むくむく可愛いひつじたちが謎に挑む、ひつじエンターテインメント小説。
当麻鉄彦は、大学病院を飛び出したアウトサイダーの医師。国内外で腕を磨き一流の外科医となった彼は、琵琶湖のほとりの民間病院で難手術に挑み患者達の命を救っていく。折しも、大量吐血して瀕死の状態となった「エホバの証人」の少女が担ぎ込まれる。信条により両親は輸血を拒否。一滴の輸血も許されない状況で、果たして手術は成功するのか。
罰ゲームで駐車中のベンツに悪戯書き…そこへ運悪く車の持ち主が…。眼光鋭く尊大オーラを放つその男に、青ざめる大学生の皇。ところが意外にも…「おまえの十日間を買ってやろう」-その男、伊織は二階堂財閥の御曹司で、皇に豪華客船の見合いクルーズに恋人兼小間使い役で同伴しろと言う。こうして皇は慣れないセレブな空間で、ドキドキの十日間を過ごすことに…。