2007年6月発売
運河が縦横に流れ、輝ける硝子の塔が街を見下ろす美しい水の都カモール。この都の秩序は、表の政治を司るニコヴァンテ公爵と、裏社会を統べるカパ・バルサヴィが結んだ秘密の不可侵協定によって保たれている。だが、ちかごろ秘密協定にそむいて貴族を狙う詐欺師集団が暗躍しているという噂があった。その詐欺師集団の正体こそ、天才ロック・ラモーラ率いる悪党紳士団であった。生まれながらにして巧みに人を欺き、変幻自在に姿をいつわり、嘘を真実に見せかけてしまう才能に長けたロックは、力自慢のジャン、一卵性双生児のカーロとガルド、ちびの少年バグら仲間とともに、貴族を相手に大規模なコン・ゲームを仕掛けては莫大な財産を手に入れていた。そんなとき、カパ・バルサヴィに仕える盗賊団の頭たちが、灰色王と名乗る男に次々と殺される事件が起きる。姿を見せずに殺戮を繰り返す灰色王の目的はなんなのか…そしてついに、その魔手がロックの身にも迫る!著者の華麗なるデビュー作。
9・11以降、激化の一途をたどる“テロとの戦い”は、サラエボが手製の核爆弾によって消滅した日を境に転機を迎えた。先進資本主義諸国は個人情報認証による厳格な管理体制を構築、社会からテロを一掃するが、いっぽう後進諸国では内戦や民族虐殺が凄まじい勢いで増加していた。その背後でつねに囁かれる謎の米国人ジョン・ポールの存在。アメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊のクラヴィス・シェパード大尉は、チェコ、インド、アフリカの地に、その影を追うが…。はたしてジョン・ポールの目的とは?そして大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?-小松左京賞最終候補の近未来軍事諜報SF。
諮問探偵業を引退後、ワトスンとともに、ニューヨークで静養中のホームズに、世界的な大事件が降りかかった!なんと高名な歴史学者であるニューヨーク大学の教授が「賢者の石」を発見し、ドイツ軍がその強奪を目論んでいるというのだ。そんな状況下で教授のひとり息子が姿を消す。ドイツ軍に誘拐されたに違いない、と教授は主張するのだが…。ラストシーンに胸が躍る!ホームズ・パスティーシュ史上に残る傑作「賢者の石」のほか三編と、「新訳シャーロック・ホームズ全集」(光文社文庫)の翻訳者・日暮雅通の「ホームズ・パロディ/パスティーシュの華麗なる世界」を収録。ファン必読の傑作集。
元大手外資系証券会社アナリストの七森恵子は、ある事件をきっかけにフリーの金融探偵に転身した。数々の潜入調査のなかで、次第にひとりの天才詐欺師の存在に気づく恵子。相棒の如月浩二郎とタッグを組み、次第に暴かれていくその詐欺の全容はー。
「そうーここは黒祠なのですよ」近代国家が存在を許さなかった“邪教”が伝わる、夜叉島。式部剛は失踪した作家・葛木志保の姿を追い求め、その地に足を踏み入れた。だが余所者を忌み嫌う住民は口を閉ざし、調査を妨害するのだった。惨事の名残を留める廃屋。神域で磔にされていた女。島は、死の匂いに満ちていた。闇を統べるのは何者なのか?式部が最後に辿り着いた真実とは。
塾は今や巨大産業として、莫大な利益を産む教育機関だ。利益が望めるところに犯罪も生まれる。神奈川県の進学塾に、自殺した教師の名で脅迫メールが届いた。何かと世間体を気にするその塾は、内密に事を済まそうと、ある人物に解決を依頼する。その人物とは、かつてキャリアとして将来を期待された警察官だった。しかし、彼はどす黒い組織に反発し、ある事件をきっかけに、潔く身を退いたのだった。事件を調べるうちに、また新たな事件、そして忌まわしい過去が暴かれていく……。 本格ミステリーの次代の担い手として期待される新人・青木知己、初の単行本化。
晴明の呪、博雅の笛が京の闇に響くときー若き陰陽師・安倍晴明と雅楽の名手・源博雅が龍神、幽鬼、獄卒、怨霊たちが引き起こす怪事件を鮮やかに解決する大人気シリーズ。全9篇を収録。
林冲、戦陣を放棄し、妻の救出に向かう 林冲は、妻を救出するために勝手に戦線から離脱した。そこに待ち受けていたものとはーー。一方、廬俊義と柴進の身元が割れ、官軍に包囲された。鄧飛がふたりの救出に向かう。(解説/馳星周)
信じたい、離れても思いは変わらない、と かれんとの時間を持ちたくて一人暮らしを始めた勝利だが、かれんは介護福祉士を目指すという。応援したいが離れて暮らさねばならない勝利の心は複雑。一方、両親の猛反対にあったかれんは…。
旅をめぐる48のショートショート集 珍妙なステップを踏みながら〈刑罰としての旅〉を続けるならず者18号。「眉毛犬ログ」が世界中を旅したあと目指した先は? ユーモア溢れる、48の旅をめぐる小さな物語。(解説/いしいしんじ)
牧場主の娘バナーは、結婚式の最中、花婿となるはずのグレーディの裏切りを知る。結婚式がとりやめになったその夜、彼女は両親の幌馬車隊時代からの友人ジェイクに、抱いてほしいと迫った。それは悲しみのあまりの衝動だったのか、小さい頃から慕っていた彼への愛のためだったのか。けれど、彼にはほかに愛する人が…。『夕暮れに抱擁を』で大好評を博した主人公の娘バナーのひたむきな愛の物語。
堀口剛蔵の弟、参蔵は生来の嘘つき、それも他人のために虚言をはく、という性癖を持てあましながら、漂うように戦後を生きてきた。参蔵は剛蔵の妻・美那に思いをよせる。美那は自死した剛蔵を許さない気丈な女だが、やがて自らも悲劇的な末路をえらぶ。悲しみはどこまで続くのか。
大正十四年・上海。副領事に着任したばかりの花園伯爵家次男の麻尋は、ダンスホールでヤクザの幹部、陳に襲われかけたところを凄腕の殺し屋、紅仁に助けられる。日本で兄嫁との醜聞に傷つき、死ぬつもりで魔都・上海へとやってきた麻尋だったが、この闇色の瞳をもつ偉丈夫、紅仁との出会いが少しずつ彼を変えていく。そんな折、麻尋に執着する陳に再び囚われて…。危険に艶めく快楽の浪漫。書き下ろし。