2007年9月発売
全英オープンテニス選手権大会(ウィンブルドン)のボールパーソンとなったアレックスは、そこでサビーナと出会い楽しく会話を交わす最中、素行の怪しい男を発見。それが大きな事件へと発展する。一方、アレックスの活躍を評価する米国CIAは彼に協力を要請。カリブ海にある旧ソ連の軍人サロフの邸宅へと潜入したアレックスは、サロフから意外な提案を受ける…。絶好調の映画化シリーズ第3弾。
夜中眼覚め脳裏に浮かぶのは、新婚時代のポニーテールの妻と若い自分、毎日オムツを取り替え自宅で見取った97歳の父。そして自分の葬式の死顔まで見えて…。老人の無明長夜(「長きこの夜」)。「赤い珠が出たらもう終わりらしい」-「不能」をめぐる男たちの侃々諤々。滑稽な会話で描く老年の性(「赤い珠」)。仕事をリタイアした4人の老年の男たちが始めた料理教室。その若い女講師を囲む奇妙な華やぎとほろ苦さ(「おにんどん」)。不気味な老男女は、学童疎開で私に煎餅を「献納」したコモリ姉弟なのか。(「死者たち」より「ズルズル・バッタン・チェッ」)。隅田川の橋の上、昭和初期の若き日の父・質屋の小僧信どんは語った。戦火のなか生き延びた父の描いた夢の真相(「橋の声」)。『黄落』から十二年、さびしくおかしい老年の一瞬の輝きを円熟の筆で描く七篇。最新短篇集。
帝銀事件が世を騒がせた昭和23年。希望に満ちた安城清二の警察官人生が始まった。配属は上野警察署。戦災孤児、愚連隊、浮浪者、ヒロポン中毒。不可解な「男娼殺害事件」と「国鉄職員殺害事件」。ある夜、谷中の天王寺駐在所長だった清二は、跨線橋から転落死する。父の志を胸に、息子民雄も警察官の道を選ぶ。だが、命じられたのは北大過激派への潜入捜査だった。ブント、赤軍派、佐藤首相訪米阻止闘争、そして大菩薩峠事件ー。騒然たる世相と警察官人生の陰影を描く、大河小説の力作。
過激派潜入の任務を果たした民雄は、念願の制服警官となる。勤務は、父と同じ谷中の天王寺駐在所。折にふれ、胸に浮かんでくる父の死の謎。迷宮入りになった二つの事件。遺されたのは、十冊の手帳と、錆びの浮いたホイッスル。真相を掴みかけた民雄に、銃口が向けられる…。殉職、二階級特進。そして、三代目警視庁警察官、和也もまた特命を受ける。疑惑の剛腕刑事加賀谷との緊迫した捜査、追込み、取引、裏切り、摘発。半世紀を経て、和也が辿りついた祖父と父の、死の真実とはー。
若くして死んだ母そっくりの継母。主人公は継母へのあこがれと生母への思慕から、二人の存在を意識のなかでしだいに混同させてゆく。谷崎文学における母恋物語の白眉。ほかに晩年のエッセイ四篇を収載。初文庫化。
荒川の河川敷で女性のものとみられる焼け焦げた人骨が発見された。同じ日に新宿で見つかった変死体は、その着衣や所持品に不審な点が多く、身元の割り出しが難航。だが、二つの事件は意外な一点で結びつき、岩海警部補ら警視庁捜査一課は所轄各署との共同捜査に乗り出した。やがて捜査線上に、地下社会に蠢く男たちの悪に運命を翻弄された女の姿が浮かび上がる。直木賞作家が放つ、愛と哀しみのミステリ。
小さなつまずきに大泣きしたり、急にいろいろ嫌になったり。かと思えば突然前向きな気持ちになったり-。ゆるやかに過ぎていく日々が、たまらなく愛しい青春の物語。実家を離れてはじめてのひとり暮らし-ベジタブルハイツ物語2。
藤崎翔は外資系のクレジット・カード会社に勤務する27歳。米国本社の意向による大幅な組織改革=大規模なリストラ計画に飲み込まれた翔は、信頼する上司や同僚たちとともに会社を去り、ベンチャー企業を立ち上げる決意をする。5人でスタートした新会社は「エキノックス」。既成の概念から抜け出した新しいビジネス展開を模索する翔たちだが、なぜか最年少の翔が社長をすることにー。
ひとり通いの居酒屋で37歳のツキコさんがたまさか隣りあったご老体は、学生時代の国語の恩師だった。カウンターでぽつりぽつりと交わす世間話から始まったセンセイとの日々は、露店めぐりやお花見、ときにささいな喧嘩もはさみながら、ゆたかに四季をめぐる。年齢のはなれた男女の、飄々として、やがて切々と慈しみあう恋情を描き、あらゆる世代をとりこにした谷崎賞受賞の名作。
ひきこもりの息子とその父親、認知症の妻の介護に疲れた夫、日常の虚しさにとりつかれた主婦、痴漢容疑を受けたサラリーマン、際限なきいじめに悩む中学生…。図らずも人生の陥穽に落ちた人々は、「死」の深淵に臨むが…!?生き抜くための出口を見失った人々の選ぶ道は…?鬼才が放つ、異色のサスペンス。現代社会のひずみを映し出す、珠玉の短編集。
アフリカの若き俊才、最年少オレンジ賞受賞作家のO・ヘンリー賞受賞作を含む初の短編集。アメリカにわたったナイジェリアの少女のふかい悲しみをみずみずしく綴った表題作ほか、いずれも繊細で心にしみる珠玉の短編全10編。
ヴァンパイアに仕える従者の哀しみを綴った「別離」、著者自身が“この作品はわたしの作品の中でもっとも恐ろしいもののひとつ”と語る残酷な怪奇譚「悪魔の薔薇」、異貌のパリを舞台に、死神に魅入られた芸術家たちを描く世界幻想文学賞受賞作「彼女は三(死の女神)」、帝国と錬金術が妖しく絡む「黄金変成」、アラビアン・ナイト風幻想譚「愚者、悪者、やさしい賢者」ほか、全9篇。