小説むすび | 2008年1月発売

2008年1月発売

夏の涯ての島夏の涯ての島

ときは1940年、ヨーロッパ。さきの世界大戦ではドイツが勝利し、フランスはドイツと平和協調路線をとった。これに対し、ファシズムと軍事拡張路線を推進するイギリスは、国際社会で孤立していた。国内では、好戦的なムードと力のある指導者への崇拝の気運が満ちている一方、政府の政策によってユダヤ人や同性愛者は屈辱的な差別を受けていた。病に冒された老境の歴史学者グリフは、この国のカリスマ的指導者ジョン・アーサーの旧知として恩恵に与っていたが、こうした現状に疑問を抱いてもいた。なぜなら、全体主義で牽引力を発揮するジョン・アーサーこそ、かつて若く輝ける日々に彼が愛した男であったからだ-架空の時代を背景に、繰り返される歴史上の愚行と個人の無力を鮮やかに見せる表題作(世界幻想文学大賞・サイドワイズ賞受賞)など、SF的発想に端を発し、さまざまな“変化”に直面した人間の心の機微を、詩情に満ちた物語に結実させた選りすぐりの傑作七篇を収録する、日本オリジナル短篇集。

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