2008年5月15日発売
4年もの間ホテルにひきこもる、他者との肉体的接触を極度に嫌う、相対する人間の“金に対する想い”が様々な幻覚となって現れる-これらはネット上で「金の声を聞く男」と呼ばれ、株式市場の値動きを予見し二百五十億円超の資産を築いた「ヒィ」の「症状」である。その彼のもとに、一枚の旧札が送られてきた。それこそが、捨て子だった「ヒィ」の本名が記された伊藤博文の千円札、失くしてしまった唯一の大事な宝物だった…。送り主は、投資ファンドの代表である沢谷という男。かつて「ヒィ」との仕手戦で屈辱的な大敗を喫していた。描いた絵図を台無しにした仇敵「ヒィ」に対して、巻き返しを図る沢谷は何を!?第39回メフィスト賞受賞作品。
第41回北海道新聞文学賞受賞作「散る咲く巡る」ほか、現代を生きる女性の目に見えず手に取れないものへの思いを巧みなストーリーで描いた傑作。-ヒロインに寄せる作者のおもいが全篇をつらぬいている。感受性に富む、ファンタジックな佳篇-選考委員・原田康子氏。
貴金属店窃盗犯が罪悪感から自殺した。疑う余地のない決着に得体の知れない違和感を覚えた刑事の高遠は、事件の洗い直しに乗り出した。薬屋探偵三人組が別方向に調査を進めるなか、鍵を握る気弱なサラリーマン・唐沢は、自分の正義を貫くため、ある行動に出る。時は移ろうも真実は変わらない、シリーズ第9弾。
江戸で屈指の材木問屋『加治屋』の娘が拐され、千両を用立てろとの投げ文があった。北町奉行・遠山金四郎から直々の指図を受け、吟味方与力の藤堂逸馬は、事件の背後にいると見られる“闇の顔役”を追いはじめる。だが、金の受け渡しに意外な人物が現れたことから、さらなる謎が広がってー。文庫書下ろし。
天明の飢饉に苦しんだ津軽藩からの石高上げ願いに、奥右筆組頭立花併右衛門はロシアとの密貿易を疑う。国是である鎖国を破り、利権を握らんとするのは誰か。幕政の闇に触れる併右衛門を狙う者は数知れず。愛娘瑞紀が伊賀者に攫われ、護衛役の柊衛悟と救出に向かうが!?緊迫の第二弾。
大学受験間近の高校三年生が行方不明になった。家出か事件か。世間が騒ぐ中、木村浅葱だけはその真相を知っていた。「『i』はとてもうまくやった。さあ、次は、俺の番ー」。姿の見えない『i』に会うために、ゲームを始める浅葱。孤独の闇に支配された子どもたちが招く事件は、さらなる悲劇を呼んでいく。
交わることのない、人の想い。切ない終わりがやってくる。「浅葱、もう少しで会える」『i』は冷酷に2人のゲームを進めていく。浅葱は狐塚や月子を傷つけることに苦しみながら、兄との再会のためにまた、人を殺さなければならないーー。一方通行の片思いが目覚めさせた殺人鬼『i』の正体が明らかになる。大人になりきれない彼らを待つ、あまりに残酷な結末とは。(講談社文庫) 「浅葱(あさぎ)、もう少しで会える」『i』は冷酷に二人のゲームを進めていく。浅葱は狐塚(こづか)や月子(つきこ)を傷つけることに苦しみながら、兄との再会のためにまた、人を殺さなければならないーー。一方通行の片思いが目覚めさせた殺人鬼『i』の正体が明らかになる。大人になりきれない彼らを待つ、あまりに残酷な結末とは。
大西洋に突き出したポルトガルのロカ岬から、18年ものあいだ結核の療養生活を送っていた天野志穂子のもとに一枚の絵葉書が舞い込んだ。一世を風靡したコーラスグループ「サモワール」のリーダー梶井克哉の書いた言葉が、諦念に縛られていた志穂子に奇蹟をもたらす。人間の生きる力の源泉を描いた力作長編。
志穂子は、親身になってくれたダテコや尾辻玄市のおかげで梶井克哉と会えたものの、絵葉書の宛名が間違っていたことを知ってしまう。しかし、人と交わる暮らしを始めたばかりの志穂子に運命のいたずらが授けた力は、思い屈するすべての人に真っ直ぐ生きる勇気を与え、自らを「恋」の奔流へと導いていく。
西暦2032年、未曾有の地殻変動により南西諸島に沈没の危機が迫っていた。領海と海底資源の既得権確保を優先する政府に対し、植物生態学者・南方洋司ら6人の科学者は、地殻変動阻止のため極秘プロジェクトを開始。彼らと共に与那国島を訪れた共感覚を持つ青年・伊波岳志は、島の巫女的存在である後間柚と出会う。彼女は大地の怒りを鎮めるため“14番目の御嶽”を探していた…日本SF史上最高の科学小説、待望の文庫化。
岳志が発見した“14番目の御嶽”への祈りを通して、柚は「大地の炎が琉球を焼き尽くす」という神の予言を聞く。その頃、水深6000mの南西諸島海溝では深海調査艇“しんかいFD”の武田洋平が、巨大な人工構造物を発見していた。“14番目の御嶽”との類似を検証する科学者たちの目的は、地殻変動を食い止める唯一の鍵、南方が提唱する“ISEIC(圏間基層情報雲)理論”の実践にあった。だが、海底火山に噴火の瞬間が迫る。
もはや来ることのない列車を待ち続ける老人の狂気と悲しみを描く「北部行きの列車」。まだ見ぬ家族から初めて手紙をもらった孤児の落胆を綴る「郵便受け」。まるで著者自身の無関心を象徴するかのような表題作「どちらでもいい」ほかに加えて、『悪童日記』へのつながりを思わせる単行本未収録の初期短篇「マティアス、きみは何処にいるのか?」を収録。沈黙をつづける著者の絶望と喪失感が色濃く刻まれた、異色の掌篇集。
アイドル好きの童貞オタク大学生・乙島侑平は、研究者の従兄から新製品のモニターを頼まれた。ところが届いた新製品とは、美少女メイドロボット「キララ」。人間と見分けのつかない超美少女メイドにアレコレご奉仕されて、ドキドキしっぱなしの侑平。ご主人様のためなら、あんなコトもこんなコトも…!?ふだんは「どじっ娘」メイドのキララが、孤島で、謎の研究所で、怪しげな廃屋で、美少女アイドルたちと一緒に大活躍します。史上初!美少女メイド青春ミステリー第二弾。
嘉三郎の仕組んだ罠にはまり、御牧父子と昵懇の藤蔵が入牢した。そして、お春は行方知れずに…。一刻も早く嘉三郎を捕縛すべく、丈右衛門は毒に使われた阿蘭陀渡りの薬肝神丸から、文之介は毒を盛られた味噌から事件の筋の絞り込みに精を出す。次々に汚い手を操り出す嘉三郎を、御牧父子は追い詰めることができるのか?怒りの一閃が疾る。
バーチャル空間に生き続ける人格が独り歩きを始めたとき、人類未体験のパニックが社会を襲う-最先端のコンピュータ科学の暴走に立ち向かったのは、高僧の鋭い直観と、いとけなき幼女の健気な意識だった。乱歩賞作家・赤井三尋が放つ、近未来の戦慄!名作「翳りゆく夏」から五年、満を持して世に問う渾身の書き下ろし長編小説。