2008年発売
東京近郊の海辺の町で密かにささやかれはじめた奇妙な噂。謎のツィス音=二点嬰ハ音が絶え間なく、至るところで聴こえるというのだ。はじめは耳鳴りと思われたこの不快な音はやがて強さを増し、遂に首都圏に波及して、前代未聞の大公害事件に発展していく。耳障りな音が次第に破壊していく平穏な日常。その時、人びとが選んだ道は?そして「ツィス」の正体は?息もつかせぬパニック小説の傑作。
美しきシモネッタの死から一年、反目を強めていくいっぽうのパッツィ家とメディチ家。ついに復活祭のミサの席上、襲撃されジュリアーノが命を落とす。血で血を洗う抗争を冷徹にも思える目で見つめ、描き続けるボッティチェルリに驚く「私」-そして、傑作「ヴィーナスの誕生」が完成したのだった。
第一次大戦末期の1918年。ロシア革命の影響を受けて、アメリカ国内では社会主義者、共産主義者、アナーキストなどがさかんに活動し、組合活動が活発になる一方で、テロも頻発していた。そんな折り、有能な警部を父に持つボストン市警の巡査ダニー・コグリンは、インフルエンザが猛威をふるう中、特別な任務を受ける。それは、市警の組合の母体となる組織や急進派グループに潜入して、その動きを探ることだった。だが彼は、捜査を進めるうちにしだいに、困窮にあえぐ警官たちの待遇を改善しようと考えるようになる。一方、オクラホマ州タルサでは、ホテルに勤めていた黒人の若者ルーサー・ローレンスがトラブルに巻き込まれてギャングを殺し、追われる身となっていた。ボストンにたどり着いたルーサーはコグリン家の使用人になり、ダニーと意気投合する。ある日、ダニーは爆弾テロの情報を得て、現地に急行する。その犯人は意外な人物だった…。大反響を巻き起こした『ミスティック・リバー』『シャッター・アイランド』の著者が、満を持して放つ画期的大作。
第一次大戦は終結した。だがボストンでは、警官の待遇改善に意欲的だった市警本部長が急死し、ダニーの運命は大きく変化する。強硬派の後任の本部長によって、彼はスト破りの部署に異動させられたのだ。1919年のメーデーの集会の後、ダニーは暴行を受け、大怪我を負ってしまう。苦難の中で彼は、コグリン家の使用人だった女性を心から愛していたことを知った。二人は結婚し、ルーサーを含めた固い絆ができあがる。だが、ダニーの名付け親で黒人を憎むマッケンナ警部補が、ルーサーの過去を暴き出していた。マッケンナはルーサーを脅して、黒人の地位向上をめざす組織に壊滅的な打撃を与えようとする。さらに、市警の警官たちのあいだではスト敢行の機運が高まり、大きなうねりとなっていった。そしてついに警官たちはストライキを決行、ボストンは大混乱に陥る。しかも、その騒乱の先には、ダニーとルーサーにさらなる試練が待ち受けていた!動乱の時代のボストンを舞台に、壮大なスケールで描く家族と愛と友情のドラマ。
広告代理店勤務の男に突然訪れた災厄。原因不明の病、余命1カ月の宣告…。男は決意する、愛する妻と最期の旅に出ようと。思い出の地の頭文字を集め、AからZまで順番に。そこで二人は出会う。過去の自分たちに。盲目の老紳士に。神秘的な遊牧民の老女に。そして、砂漠の駱駝に…。やがて、スピリチュアルな旅の果てに、二人には運命の刻が-。
美と教養と見栄と意地が溢れる珊瑚礁の五百年王国は悩んでいた。少女真鶴は憧れの王府を救おうと宦官と偽り行政官になって大活躍。しかし待ち受けていたのは島流しの刑だったーー。見せ場満載、桁外れの面白さ!
食べものも男も、おいしく有り難くいただきませんとねー。失恋を忘れるため、冴えない男の誘いを受けた沙織。だがつれていかれた店で出てきた料理はゲテモノばかりで…。大のタマネギ嫌いの志奈は、それを直したがる彼と険悪に。20代のロミが50代の高村とデキてしまったのは、バターご飯のフェロモンのせい!?恋も食も、スパイスが肝心。ウィットたっぷりの美味なる恋愛小説6編。
そしていま、母は家中をゴミで埋め尽くす。「明日は片づけるから」と言いながらも、毎日大量のゴミを家の中に運びつづける。アディーナは母からこう言い聞かされて育った。外の世界は危険よ。そこは怖い「ノック人」の世界。彼らがうちのドアをノックするとき、家族は引き離される-。
照は呪術を生業とする鶴来一族の一人。修行のため、生まれ故郷を離れ東京へやってきたが…迎えにくるはずの従兄の医師、凪が急患で来られなくなり、裏切られた気分の照は謎の美形、那智に誘われるままホテルへと…。八年前、族人に犯され体に淫虫を入れられた照は、この時期になると肉欲が抑えられないのだ。そんな照を媚虐の手管で乱れさせる那智。だが、彼は“能力”をもつ情報屋で…。企みの蜜戯、書き下ろし。
笑うなら笑ってください。三十代も後半で、なんの取り柄もない私に突然舞い降りた幸運な出会い。著名なCMディレクターから、映画の脚本を書いてくれないかと言われた。ルックスが良くて情熱的な彼の依頼に有頂天になる私。あっという間に恋に落ち彼と同棲を始めるが、それは地獄への入り口だった。彼は、薬物依存症でDVだった。クスリに溺れた男に暴力をふるわれながら、次第に常軌を逸していく私。そんなとき、別の女が現れ濃密な彼との恋愛にヒビが入り始めて…。人には見せられない感情を、隠すことなく正面から紡ぎだす。長篇書下し。
それは、瑠璃子先生の真っ白な脚線を見た瞬間から始まった。中学二年・日高優作、やんちゃな下半身をもてあます思春期。おっかない体育の女先生にのぼせ上がった優作は、とつぜん体操部に入部する。熱病が本物の恋へと姿を変えたとき、お気楽だった毎日は重苦しい日々へと暗転、そして事件が-。
平安の都では、奇妙な出来事が次々と起きていた。巨大な蜘蛛の牽く車が姿を現わし、孕み女が、たてつづけに腹を裂かれ殺された。そんななか、顔にできた瘡が突然しゃべりだした平貞盛に晴明と博雅が呼び出される。それらは、やがて都を滅ぼす恐ろしい陰謀へと繋がって行く…。陰陽師シリーズ待望の傑作長篇。
晴明と博雅は俵藤太とともに、平将門の死の謎を追ううち、将門の遺灰を盗み出した者がいたことを突き止める。事件の裏に見え隠れする将門との浅からぬ因縁。誰が、将門を復活させようとしているのか?そして、その背後に蠢く邪悪な男の正体とは?ラストまで息をつかせぬ展開と壮大なスケールで読ませる人気シリーズ長篇。
マッチョだが気が弱い神島は、就職先の養護施設で「バケツ」というあだ名の少年と出会う。やや知的障害と盗癖があり、親兄弟にも見放された彼と同居を始めた神島は、生活費を稼ぐため、日焼けサロンや無認可保育園を立ち上げるが、トラブルが続き…。理由なき愛を描いた表題作「バケツ」を含む連作小説集。