2008年発売
恋人と初めて結ばれたあと、東京を離れ、傷ついた女性たちが集う海辺の寺へ向かった小説家キミコ。外の世界から切り離された、忙しくも静かな生活。その後訪れた別荘で、キミコは自分が妊娠していることを思いがけない人物から告げられる。まだこの世にやってきていないある魂との出会いを、やさしく、繊細に描いた長編小説。
殺すだけでなく、その人物の生きて来た痕跡までも消してしまう「消し屋」。仕事を一つ終え、オカマの蘭子とともに沖縄へ向かった消し屋のもとに、若き天才を自殺させてほしいという依頼が舞いこんだ。どうやって天才を追い詰めるのか。沖縄の地に忌まわしくも哀しい記憶が蘇る。大藪春彦賞受賞の傑作。
全寮制の名門女子高を次々と襲う怪事件。一年生が塔から墜死し、生徒会長は「胎児なき流産」で失血死をとげる。その正体を追う女探偵「黒猫」と新入生の優子に追る魔手。背後に暗躍する「ジャック」とは何者なのか?「イニシエーション・ラブ」の著者が、女性に潜む“闇”を妖しく描く衝撃のデビュー作。
警視庁公安部の倉島警部補は、自分と因縁のある元KGBの殺し屋ヴィクトルが、ロシア人貿易商のボディーガードとして日本に入国していると知らされる。そして、その貿易商が帰国前日に密会していた外務官僚が謎の死を遂げた。ヴィクトルたちを追い、倉島はモスクワに飛ぶ。緊迫の追跡捜査を描く、アクション・ノヴェルの傑作。
緑川有里は、モデル事務所を経営する横溝と知り合い、関係を持つ。すべてを手に入れて人生に飽いたような横溝に、有里は深い憐れみを感じて縛られていく。「他の男とセックスして、おれに報告してくれよ」-横溝の屈折した要求に、有里は身近な男と次々に肉体を重ねる。帰るべき場所を失って哀しく迷走する愛を描き出す秀作。
ひょんなことから相撲部屋に入門したアメリカの青年マークは、将来有望な力士としてデビュー。しかし、彼を待っていたのは角界に吹き荒れる殺戮の嵐だった!立合いの瞬間、爆死する力士、頭のない前頭、密室状態の土俵で殺された行司…本格ミステリと相撲、その伝統と格式が奇跡的に融合した伝説の奇書。
殺人の罪で服役後、極道の世界に飛び込んだ“とっぱくれ”(はねっ返り者)村上義一。組織内での栄達をひたすら目指すが、幼少から慕っていた兄貴分の美山と親分・松原との間で、徐々に微妙な立場に立たされてゆくー。高度成長期の神戸を舞台に、まっすぐに生きようとした男の姿を鮮烈に描く。
“ある難事件”を解決し、安住できる住処を探していた名探偵の兄弟二奈と参たち二人が見つけた激安物件-それは曰く付きアパート青薔薇荘だった。ワケアリの理由は、アパートで起こった怪事件。過去に同じ部屋で、二度も未解決の殺人事件が起きていたのだった…。誰がどうやって、そしてなんのために!?本格ミステリを愛する著者が仕組んだ驚愕の結末とは。
時は幕末。北但馬の農村で暮らす清吉は、病身の母と借金を抱えながらつましい暮らしを送っていた。ある日、私塾仲間の民三郎が刃傷沙汰を引き起こしてしまう。友を救おうと立ち上がる清吉。だがこの一件の波紋は思わぬ形で広がってゆき-。若者たちが「新しい国」という夢に浮かされた時代、変わりばえのしない日々のなかに己の生きる道を見出そうとした男の姿を描く、傑作時代小説。
私たちはたくさんの愛を贈られて生きている。この世に生まれて初めてもらう「名前」。放課後の「初キス」。女友達からの「ウェディングヴェール」。子供が描いた「家族の絵」--。人生で巡りあうかけがえのないプレゼントシーンを、小説と絵で鮮やかに切りとった12編。贈られた記憶がせつなくよみがえり、大切な人とのつながりが胸に染みわたる。発売以来、ロングセラーとなって愛されている短編集。
九つの子が、拾った生首を写生した。その絵を瓦版にして売ったところ江戸中が大騒ぎに。北の御番所の名誉にかけても生首の主を探せと、またまた無理難題が半次に持ち込まれて…。
恋はスタンプカードのようなものだ、と私は思う。キスをして、好きだと思って、何かをわかり合って、やさしい気持ちになってーー。そんなことがある度に、私たちはスタンプを押す。いつまで続くのかな? 密やかな気分で私は思う。このカードはいつか、かけがえのない何かと交換できる。そんな日がきっとくる。その日まで、私たちは小さな声で歌うのだ。最強の恋のうたを歌うのだーー。 累計18万部突破のロングセラー「100回泣くこと」に続く、初恋青春小説の誕生。
妻ある「恋人」カシキとつきあっていた小説家の私は、恋も仕事もうまくいかない日々から抜け出すため、テレビ局で知り合った8歳年下の学生アルバイト、ズームーと暮らし始める。服装やヘアスタイルに細やかに気を配る繊細な心の持ち主であるズームーは、カシキからは得られない大きな安らぎと平穏を私にもたらす。しかしひとたびカシキから電話で呼び出されると、真夜中でもタクシーを飛ばしてすぐに会いに行ってしまう私だった。 新直木賞作家が、辛い恋と安らかな恋の間で、激しく揺れ動く「厄介な私」を描いた甘美で愚かで危険な恋愛小説。
「オレ、ここで投げなかったらきっと後悔する!」 強豪横浜リトルとの激闘で見事勝利をおさめた三船ドルフィンズ。だが、エースで4番の吾郎はチームメイトに何も告げず福岡へ転校してしまう……。さっそく名門博多南リトルに入団した吾郎だが、なぜかエースの古賀だけが吾郎の入団を歓迎していなかったーー。果たしてその理由は? なぜ、吾郎はサウスポーになったのか? 今はじめて明かされる友情の物語!
時は享保年間。八代将軍徳川吉宗は大衆の窮状に直接耳を傾ける画期的な政策を実施した。世にいう目安箱である。目安箱を管轄する御用取次の加納久通は、お取り上げにならなかった訴え“難立願”のなかにも看過できない事案が含まれていることに以前から気づいており、頭を悩ませていた。久通は、一度闇に葬られた訴状を秘密裡に調査する「目安箱改め方」の設置を決意。白羽の矢を立てられたのが、竜巻誠十郎という青年である。誠十郎は剣を持たず、想身流柔術を駆使する天涯孤独の侍だった。新・江戸川乱歩賞作家による書き下ろし長編時代小説シリーズ第一弾。
野球賭博絡みのトラブルがもとで失踪した父親から少年のもとに葉書が届く。「野球をやっているか」。父親の願いを適えるべきか、野球を嫌悪する母親に従うべきか。少年の心は揺れる。そんななか、少年は憧れの同級生とある劇を上演することになった…。いまもっとも注目を集める作家が描く親と子の迫真のドラマ。