2009年8月発売
1989年の香港ツアーで一人の青年が消えた。彼が想いを寄せていた女性、同じツアーに参加した会社員、添乗員…青年を取り巻く人々の記憶は、肝心なところが欠落していた。15年後、彼の行方を追う駆け出しライターは、当時ひそかに流行していた「迷子つきツアー」という奇妙な旅に行き着くがー。記憶のいたずらが、一人の人間の運命を変える。現実と虚構の境が揺らぐ、ミステリアスな物語。
舞に賭ける女性の青春を描く傑作長編 日舞の家元を父に持つ天才と謳われる異父妹の陰で、ひっそりと精進を続ける秋子に、目を向けるものはいなかった…。戦火を挟んだ激動の時代、踊り一筋に生きる女性を描く傑作。(解説/進藤純孝)
大学理事長が失踪したと捜索願が出された。しかし捜査を始めると母親の態度は一変、非協力的に。大学関係者も言を左右し、状況は遅々として掴めない。一方、女性の遺体が仙台で見つかり、法月の担当していた大学職員の失踪者だと判明した。胸に爆弾を抱えながら、自分を苛めるように捜査する法月を気遣う高城だが…。
対海賊課刑事ラテルと黒猫型宇宙人アプロは、ある少女の叔父捜しを依頼されるがー“海賊版”ではない本家本元「敵は海賊」、あの〓(よう)冥も一目置いた女海賊マーゴ・ジュティが遭遇した怪奇現象を描く「わが名はジュティ、文句あるか」、〓(よう)冥の良心たる白猫クラーラ誕生の秘密を初めて明かす書き下ろし「〓(よう)冥の神」、そして、あの戦闘妖精との競演を果たした「被書空間」-以上4篇収録の敵は海賊シリーズ初の短篇集。
葡萄山にある“蒼橋”義勇軍司令部は騒然としていた。“天邪鬼”迎撃のために急造した“踏鞴山”のビーム砲が突然リークし、強烈な電磁パルスが蒼橋星系全域を襲ったのだ。これによりすべての通信は途絶、特に低軌道上にある老朽化した“紅天”系衛星に多大の被害を与えていた。義勇軍が懸命に復旧作業に取り組むなか、“紅天”の秘密工作部隊は様々な破壊活動を実行、さらにその怖るべき魔手は葡萄山司令部にも迫っていた…!?伝説の痛快宇宙冒険SF誕生秘話、待望の第2弾。
物理学者ゼバスティアンは、提唱する「多世界解釈」理論をめぐって論争の渦中にあった。彼を鋭く批判していたのは、学生時代からの親友で天才物理学者のオスカー。親友との摩擦は、ゼバスティアンの望むところではないのだが…。ある時、テレビの科学番組でオスカーと激しく議論を戦わせた翌日、ゼバスティアンの息子リアムが誘拐される。犯人と思しき人物からの要求は、医療スキャンダルの秘密を握ると噂される妻の同僚を殺害することだった。息子を救うためゼバスティアンは要求に従うことを決意する。だがなぜ、ゼバスティアンが選ばれたのか?天才警視シルフの捜査は、事件の悲劇的な真相を明らかにしていく。ドイツ文学界の新星が放つ哲学的ミステリ。
5歳で引き金を引いて数十年。香港闇社会の工作員トニーは、組織を裏切った元相棒を始末すべくアメリカに渡るが、行方はまったく掴めない。13歳の時「少女に糞を食らわせつつ殺す異常者」と感覚がシンクロしたニーナは、以来、殺人鬼の脳に同調して犯人を特定しろとFBIに強要され続けた。その頃、全米で謎の大量失踪が同時多発的に発生。人々は意味不明の言葉を喚き、奇怪な行動を取って姿を消し…。
神の手を持つ医者はいなくても、この病院では奇蹟が起きる。夏目漱石を敬愛し、ハルさんを愛する青年は、信州にある「24時間、365日対応」の病院で、今日も勤務中。読んだ人すべての心を温かくする、新たなベストセラー。第十回小学館文庫小説賞受賞。
いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人たちの非難の目にさらされる老いた男。戦時下に少年時代をすごし、敗戦後、豊かさに向けてひた走る日本を、ただ生真面目に生きてきた男は、いつ、なぜ、家族も道も、失ったのかー。その孤独な魂を鎮魂の光のなかに描きだす圧倒的長篇。
走って、止めて、蹴る。頭が考えるとおりに足が動かなくても、それがサッカーや。グラウンドに転げる身体、飛びちる汗。女監督が作中でサッカー論を展開し意表をつく芥川賞候補作ほか、文學界新人賞を受賞した「廃車」を併録。
優しい夫と息子と団地で暮らす何不自由ない生活を捨て、ある日、女は長崎へと旅立った。かつて六〇〇〇度の雲で覆われ、原爆という哀しい記憶の刻まれた街で、女はロシア人の血を引く美しい青年と出会う。アルコール依存の末に自殺した兄への思慕を紛らわすかのように、女は青年との情交に身を任せるがー。生と死の狭間で揺れる女を描き、現代人の孤独に迫った三島賞受賞作。
配りきれないチラシが層をなす部屋で、自分だけのメルヘンを完成させようとする「わたし」。つけ始めた日記にわずか四日間の現実さえ充分に再現できていないと気付いたので…。新潮新人賞選考委員に「ピンチョンが現れた!」と言わしめた若き異才による、読むほどに豊穣な意味を産みだす驚きの物語。綿密な考証と上質なユーモアで描く人類創世譚「クレーターのほとりで」併録。
持ちかけられた交換殺人に乗ってしまい、知人の夫を殺した罪で逮捕された友竹智恵子だが、警察の不手際で脱走に成功。顔を変え、身分を偽り、日本全国を逃亡し続ける。智恵子を追いかける警察の執念。時効の壁は15年。逃亡劇は驚愕の結末へ突き進む。
骨折した双子の姉に懇願され、身代わりデートに赴いた楓。お相手は…アラブの王族で大企業を経営するセレブ、イスハークだった。エメラルドの瞳をもつ美貌のイスハークに、なぜかどきどきしてしまう楓。一方のイスハークは初恋の相手に瓜二つの楓にすっかり魅せられ、結婚を前提にした交際を申し込む。そんな折、楓の会社が外資系企業に買収された。新社長はなんとイスハークで…。偽りのフィアンセに疼く恋心。