2009年発売
麻生家に通う途中で見かけた新内流しの娘の視線に、思惑を量りかねる麻太郎。ある日その娘がひったくりに遭い、その荷物を麻太郎が取り返してやるのだが…。麻太郎、花世、源太郎たちが大活躍する表題作をはじめ八篇を収録。次巻より、文明開化の東京へと舞台を移す人気シリーズ、「江戸のかわせみ」の掉尾を飾る一冊。
新宿のスラムで育った亞宮柾人は、ストリートギャング同士の抗争で逮補され、矯正施設に送られる。だがK七号施設と呼ばれるそこは、政治・思想犯専用の刑務所だった。囚人による自治が認められ、一見、自由で新しい施設だが、柾人は陰謀のにおいを感じ、真相に迫ろうとする。思想と信仰の危うさに迫るノンストップ近未来サスペンス。
同僚にプロポーズされたのを機に、不倫中の上司と別れる決意をした朋絵だったが、最後のデートを後輩に目撃され…。男と女の間に流れる、もはや愛とは呼べないくろぐろとした感情、女と女の間の、友情とは呼べない嫉妬や裏切り、優越感。女たちの心に沈む思いを濃密に描きだした、八つの傑作恋愛短篇。
昭和7年夏、秋野暮愁が主催する暮愁庵句会で出会った三人娘ー大学教授の父を亡くしたばかりの阿藤ちゑ、東京女子医学専門学校の学生・池内壽子、そして浅草芸者の松太郎。句会を通して友情を育む娘たちの恋模様を、古き良き東京を背景に瑞々しく描く。読めば思わず一句詠みたくなる、出色の“句会小説”。
藤堂浩志はソマリア沖にいた。国外で武力行使ができない防衛省は、苦肉の策として浩志たち傭兵を海賊対策に派遣したのだ。だがその最中、商船が攻撃を受け、沈没させられる事件が続発する。人質を取り、金品を要求するはずの海賊がなぜ?渦中のソマリアを舞台に、アフリカの覇権を賭けた大国の謀略が錯綜する。注目の気鋭が放つ、アクション超大作第五弾。
南蛮人と見紛う異相、生まれながらの巨躯と膂力。箱根山塊に「風神の子」ありと恐れられた英傑がいたー。時は戦国。関東の雄・北条氏一門は、関白豊臣秀吉率いる桁外れの軍勢を小田原城で迎え討たんとしていた。北条百年を影で支える風魔一党の束ね小太郎は、主君を救う奇策を講じるが…。謀略渦巻く乱世に、自由を求め生きた、稀代の忍びの生涯を描く歴史巨編。
今、徳川と戦になれば勝ち目はないー。太閤の奇矯な振舞いと石田三成の暴走を案じる秀吉麾下の忍び曾呂利新左衛門が助力を請うたのは、古河公方氏姫と静かに暮らす小太郎だった。一方、虎視耽々と機を窺う家康の影には、先代服部半蔵を凌ぐ頭脳を持つ剣士が。家康の世子秀忠に迫る、独り忍び唐沢玄蕃の兇手…。乱世再来を望む忍びたちが歴史を動かそうとしていた。
天下を取った家康の、唯一の気がかりは小太郎率いる風魔衆だった。折しも新開地江戸で、日本橋の大店が兇賊に蹂躙される。何者の仕業か?徳川忍び衆総帥柳生又右衛門は、小太郎一派に相違なしと断定、ここに風魔狩りの命が下ったー。勝利するのは剣の極意か、徒手空拳の技か。乱世を締め括る影の英雄たちが、箱根山塊で激突する!迫力の時代巨編、堂々の完結。
萩本欽一、和田アキ子、とんねるず、出川哲朗など「笑いの神様の子供たち」との交流を綴った抱腹の実話集。誰とでも絡める唯一無二の才能を生かし、その交遊から得た“芸”の神髄とはいったい!?テレビでの勢いそのままに、至極の超ハイテンションエピソードが全41話で炸裂する!バラエティー番組、クイズ番組、ロケ番組などテレビでその姿を見かけない日がないエンターテイナー勝俣州和が贈る、話題騒然初エッセイ。
元眼科医の湯浅マキは七十九歳。物忘れは多少激しくなってきたものの、足腰丈夫、いたって元気な高齢者である。ある日息子夫婦に誘われてドライブに出かけるが、着いた先はなんと病院だった!しかも認知症の傾向が見られたため、そのまま検査名目で入院させられてしまう。同じ病棟のそれぞれ事情を抱えた入院患者たちに次第に興味を抱き始めるマキだったが…。「老い」は罪なのか、老人が誇りを持って生きられる場所はないのかー。コミカルなタッチで高齢者の自立・幸せを問う、ユーモア医療小説。
輸入家具店店長の裕子は四十二歳、夫、娘と何不自由のない毎日を送っていたが、実母が認知症になったことから、その人生が大きく暗転する。母親の介護を巡る実兄との諍い、夫の隠された過去への不信感から逃れるように、裕子は妻子ある男との関係を深めていく。不倫ではない、浮気でもない、真の恋愛を求める裕子にとって、その男は、人生の秋に巡り会う“奇跡の恋愛相手”となるのだろうか。魂が触れ合う真の恋を、裕子は掴むことができるのだろうか。絶妙な舞台設定とハプニング続出のストーリー!“林真理子恋愛文学の最高傑作”と呼ばれる珠玉の純愛小説。
「この街は、根っこに様々な問題を抱えています。新住民と旧住民ということだけではありません。この学園都市の住民たちは、役職や地位によっていくつもの層に分かれていて、その悪い影響が子どもの中にも出ているんです」三人の少女達の墜落死に揺れる街で、失踪した青年の捜索を依頼された元カメラマンの探偵・辰巳翔一。青年の無実を信じ、捜査を続ける辰巳の行く手に、新興都市の闇と過去の迷宮がたちはだかる!ゆがんだ教育環境の下で震える少女たちの孤独と、疵を負った青年の「魂」の救済を描く感動のミステリー。
列車に飛び乗り、上京して四十年。何もかもが夢のようにうまくいっていたバブル期の輝かしい栄光は過去のものとなり、経済的な困窮に陥った夫婦が、死を覚悟して帰郷する。-人気のない故郷。真っ白な雪に埋もれた母校でふたりが見つけた希望とは?バブル崩壊、不景気、リストラ、経費削減など、社会の大きな流れの中で人生を左右される人々の苦悩の日々と切なさを描き、第三回ヤフー・ジャパン文学賞を受賞し、ドラマ化された表題作を収録。離婚で離ればなれになった親子の絆や仮面夫婦の成れの果てを綴った作品など、涙を誘うヒューマン・ノベル四篇。
「八歳の夏僕は最低な約束をした。だって知らなかったんだ…好きになっちゃいけないって。無駄だって。僕の人生にはタイムリミットがある」八歳の頃、とある病院で出会った種田繭と垣野内逞。淡い恋心を抱く二人は偶然、心臓の病気で逞が二十歳まで生きられないことを知ってしまう。失意の中、守れない約束だとわかりながら、結婚の誓いをする二人。しかし、成長をかさね、逞は、次第に繭と距離をおくようになる…。惹かれあいながらも、抗えない運命に悩み苦しむ二人の“初恋”の行方はー。累計600万部の大ヒット同名コミックを完全ノベライズ化。
東京・新宿中央公園で地場スーパーの会長・草野重二が他殺死体となって発見された。手がかりは、現場に残された「8」と思われるサインのみ。一方、大和新聞東北総局遊軍記者の宮沢賢一郎は、青森への出向を命じられる。直後、五所川原市内のパネル工場で殺人事件が発生。宮沢は東京の草野重二殺害事件と五所川原の事件が、「津軽のスローハンド」と呼ばれた津軽三味線伝説の名手・佐藤流海により繋がっていることに気づく。警察の捜査力を上回るほどの取材力を持つ新聞記者の活躍を描く「みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎」シリーズ第三弾。
17歳の平凡な少女キャサリンは、リゾート地バースで恋に落ち、由緒あるお屋敷に招待されて有頂天。古めかしいお屋敷で、愛読中のゴシック小説に出てくるようなホラー体験ができる、と大喜びでノーサンガー・アビーに出かける。ところが、小説の読みすぎでキャサリンの妄想はとんでもない方向に…。オースティン初期の辛口ラブコメディー。定評ある読みやすい新訳で初の文庫化。
精神科医でミステリー作家の藍霄が受け取ったメールは、周囲の人間が突然自分のことを知らないと言いだす、奇怪な体験を訴えていた。王明億と名乗る謎の差出人はさらに、自分は七年前の未解決密室殺人事件の犯人であり、それには藍霄も関わっていた、と言う。数日後、発見された浮浪者の首切り死体が王明億のものと判明、苦境に立たされた藍霄を救うべく、友人の秦博士と李君が事件解決に乗り出す。幻想的な謎と強烈な不可能興味。台湾ミステリーの最前線をリードする、鬼才の異形の本格ミステリー。