2010年12月発売
「次の“バツ”は、こいつに決定していいと思うのですが」自殺した息子が遺した一冊のノート。そこには息子を死に追いやった人物たちの名が記されていた。嶋津は復讐に乗り出すが、老体にむち打つ彼に協力者が現れて…。連中を罰したい。
新人・野間宏、戦後日本に颯爽と登場ーー初期作品6篇収録のオリジナル作品集 1946年、すべてを失い混乱の極みにある敗戦後の日本に、野間宏が「暗い絵」を携え衝撃的に登場ーー第一次戦後派として、その第一歩を記す。戦場で戦争を体験し、根本的に存在を揺さぶられた人間が、戦後の時間をいかに生きられるかを問う「顔の中の赤い月」。ほかに「残像」「崩解感覚」「第三十六号」「哀れな歓楽」を収録する、実験精神に満ちた初期短篇集。 ーー草もなく木もなく実りもなく吹きすさぶ雪風が荒涼として吹き過ぎる。はるか高い丘の辺りは雲にかくれた黒い日に焦げ、暗く輝く地平線をつけた大地のところどころに黒い漏斗形の穴がぽつりぽつりと開いている。その穴の口の辺りは生命の過度に充ちた唇のような光沢を放ち、堆い土饅頭の真中に開いているその穴が、繰り返される、鈍重で淫らな触感を待ち受けて、まるで軟体動物に属する生きもののように幾つも大地に口を開けている。
「小説推理」で好評連載中の「2000字ミステリー」を、一挙まるごと5年分、60編収録。各話は原稿用紙5枚分というお手軽な長さなので、通勤通学の車内でちょこっと開くのにオススメです。短くても、伏線やどんでん返し、ミスリードの仕掛けありで、これはオイシイ!
友人の眞姫に誘われて、美香萌は同級生の川田歩と眞姫の兄の4人で鉱物採集にいく。心の中で小石を作ってしまう秘密の体質を持っている美香萌は、石に詳しい川田のことが少しずつ気になっていく。あり時、眞姫から川田が好きだと聞かされてー(「笑う石姫」)。他にも別世界へ誘う3作品を収録した、美しくも切ない珠玉の短編集。
杏羅町ー。地方都市の片隅に広がる妖しき空間に迷い込んだ三津田は、そこで古書店「古本堂」を見いだす。ある日、親友の飛鳥信一郎を伴って店を訪れた彼は、奇怪な同人誌『迷宮草子』を入手する。その本には「霧の館」を初め、七編の不思議な作品が収録されていた。“作家三部作”第二長編、遂に降臨。
謎と怪異は、同人誌『迷宮草子』から溢れでるようにー。尚も読み進める三津田と飛鳥信一郎の周囲の異変は激しさを増していく。解き明かさなければ破滅が待つ。二人は“本”の恐怖から逃れることができるのか。最終話「首の館」の扉が開く。著者の綴る異界の源がここにある。驚愕のホラー&ミステリ完結編。
十手と鑑札を返上し、岡っ引きから足を洗って十年。「泣きの銀次」も来年には不惑を迎えようとしていた。小間物問屋の主として細々と暮らしていたある日、銀次は監禁されていた娘を助ける。実は近頃、娘のかどわかしが頻発しているという。「下手人を捕らえるため手を貸して欲しい」と言われた銀次はー。
日比野左内。子供達に剣術を教えながら、父の敵討ちの相手である兄を探す日々。ついに現れた兄・博之進は無実を訴えるとともに何者かに命を狙われている様子なのだ。兄を匿いつつも真の敵との対決に挑む左内は、強大な相手の前に自分の剣を見失ってー大人気シリーズ最終巻にして最高傑作。
高麗の高僧・晦然が得意の絶頂にあったその日、彼を待ち受けていたのは二度の元寇で散った高麗の兵士たちの霊であった。供養のため倭国に渡った晦然は「一然書翰」を書き記す。この奇書が、三四五年の時を経て、徳川幕府と李朝を揺るがし、柳生一族をも混乱に陥れたのだった。
一族との縁組を断り、松平定信を敵に回した立花併右衛門。だが愛娘瑞紀は、なんと縁談相手の旗本家に掠われてしまう。それでも定信は、将軍家斉(いえなり)の暗殺未遂事件の黒幕探しを併右衛門にあえて依頼する。併右衛門をかばい手裏剣を肩に受けた衛悟に殺到する刺客たち。人気爆発シリーズ白熱の第七弾! <文庫書下ろし> (2010年12月、講談社文庫として刊行) 幕政の実力者松平定信を敵に回した併右衛門は、将軍謀殺をはかる黒幕に迫れるか? 無類の面白さ! 第一位シリーズ、白熱の第七作! 「この文庫書き下ろし時代小説がすごい!」(宝島社刊)第一位
球技はダメ、運動会も嫌い。そんな雪国の少年が知った「走る」喜び。全道中学選手権で優勝、高校の陸上部でも頭角をあらわす。仲間の死、インターハイでの瀬古利彦の快走。左足の怪我と、諦めきれぬ陸上への思い。そして出生の秘密。「少年」は3年間怪我と戦い、早稲田大学競走部に準部員として入部を許される。
親が死んでも葬式に出るな!早稲田大学競走部の名将・中村清監督は、自尊心が強く、思い出みが激しく、敵だらけの老人だった。果たして、早稲田は箱根路に臙脂の旋風を巻き起こせるのか。そして、主人公の実父母とは…。箱根駅伝の選手だった著者が走ることの魅力と運命の奇跡を描く、感動的長編。
秀吉の密命を受け、難攻不落と言われた三木城に、二人の男が忍び入った。片や、かつて主君に離反し「裏切り者」と呼ばれた涼山。片や、主家への忠誠に生きる寺本生死之介。二人はともに開城工作に暗躍する。やがて明らかになる涼山の真意とは。「三木の干殺し」を題材に、「正義」のあり方を問う本格戦国小説。
退廃が翳を落とす江戸市井の片隅に、人知れず生きる男と女。色と欲、そして仮借ない世相が時にやりきれない犯罪を呼び起こす。残忍な手口で殺された乱暴者の遺体から、意外な犯罪のからくりと、その憐れな動機が浮き彫りになる「大黒屋」など、芳醇な情緒と狂おしい哀感を湛えた傑作時代ミステリー六編。
深夜、ロスの展望台で発見された男の射殺体。後頭部に二発。怨恨か処刑かー。殺人事件特捜班での初仕事に意気込むボッシュだが、テロリストが関与している可能性が浮上。FBIの捜査介入に阻まれながらも、ボッシュはひたすら犯人を追う。十二時間の緊迫の捜査を描く、スピード感溢れる傑作サスペンス。
「後篇」では、ドン・キホーテの狂気は大きく様変わりする。もはや彼は、自らの狂気に欺かれることはない。旅篭は城ではなく旅篭に見え、田舎娘は粗野で醜い娘でしかない。ここにいるのは、現実との相克に悩み思案する、懐疑的なドン・キホーテである。
フェイヤーダル人からローダンたちに、惑星プレーンドム訪問を許可する連絡がきた。テストでは合格しなかったにもかかわらず、何者かの介入により、許可がでたのだ。プレーンドムには、行方不明のテラに関して情報を持つと思われる、テルムの女帝の謎を解く鍵があるにちがいない。だが、ローダンのほかに、フェイヤーダル人が指定してきた同行者七人は、異種族との交渉経験のすくない“ソル”生まれの若者ばかりだった。
オッド・トーマスは、海辺の町に引き寄せられるようにしてやって来た。そこで暮らし始めた彼は、海と空が真っ赤に染まる悪夢を何度も見るようになり、桟橋で謎めいた若い女性アンナマリアと出会う。彼女はなぜかオッドのことを知っているようだった。悪夢と関係のある怪しげな男たちから彼女を守りつつ、この町で何が起きているか調べるオッドは、やがて恐るべき陰謀を知ることに!オッドが人生の転機を迎える注目作。
人類がいなくなった海辺で、スノーマンは夢うつつを漂っている。思い出すのは、文明があったころの社会。スノーマンがまだジミーという名前だった少年時代。高校でめぐりあった親友クレイクとかわした会話。最愛の人オリクスとのひとときー。誰がこんな世界を望んでいたのだろうか。そして、自分はなにをしてしまったのだろうか。カナダを代表する作家マーガレット・アトウットが透徹した視点で描き出す、ありうるかもしれない未来の物語。