2010年12月発売
杏羅町ー。地方都市の片隅に広がる妖しき空間に迷い込んだ三津田は、そこで古書店「古本堂」を見いだす。ある日、親友の飛鳥信一郎を伴って店を訪れた彼は、奇怪な同人誌『迷宮草子』を入手する。その本には「霧の館」を初め、七編の不思議な作品が収録されていた。“作家三部作”第二長編、遂に降臨。
謎と怪異は、同人誌『迷宮草子』から溢れでるようにー。尚も読み進める三津田と飛鳥信一郎の周囲の異変は激しさを増していく。解き明かさなければ破滅が待つ。二人は“本”の恐怖から逃れることができるのか。最終話「首の館」の扉が開く。著者の綴る異界の源がここにある。驚愕のホラー&ミステリ完結編。
十手と鑑札を返上し、岡っ引きから足を洗って十年。「泣きの銀次」も来年には不惑を迎えようとしていた。小間物問屋の主として細々と暮らしていたある日、銀次は監禁されていた娘を助ける。実は近頃、娘のかどわかしが頻発しているという。「下手人を捕らえるため手を貸して欲しい」と言われた銀次はー。
高麗の高僧・晦然が得意の絶頂にあったその日、彼を待ち受けていたのは二度の元寇で散った高麗の兵士たちの霊であった。供養のため倭国に渡った晦然は「一然書翰」を書き記す。この奇書が、三四五年の時を経て、徳川幕府と李朝を揺るがし、柳生一族をも混乱に陥れたのだった。
一族との縁組を断り、松平定信を敵に回した立花併右衛門。だが愛娘瑞紀はなんと縁談相手の旗本家に掠われてしまう。そして定信は将軍家斉の暗殺未遂事件の黒幕探しを併右衛門にあえて依頼する。併右衛門をかばい手裏剣を肩に受けた衛悟に殺到する刺客たち。人気爆発シリーズ白熱の第七弾。
球技はダメ、運動会も嫌い。そんな雪国の少年が知った「走る」喜び。全道中学選手権で優勝、高校の陸上部でも頭角をあらわす。仲間の死、インターハイでの瀬古利彦の快走。左足の怪我と、諦めきれぬ陸上への思い。そして出生の秘密。「少年」は3年間怪我と戦い、早稲田大学競走部に準部員として入部を許される。
親が死んでも葬式に出るな!早稲田大学競走部の名将・中村清監督は、自尊心が強く、思い出みが激しく、敵だらけの老人だった。果たして、早稲田は箱根路に臙脂の旋風を巻き起こせるのか。そして、主人公の実父母とは…。箱根駅伝の選手だった著者が走ることの魅力と運命の奇跡を描く、感動的長編。
秀吉の密命を受け、難攻不落と言われた三木城に、二人の男が忍び入った。片や、かつて主君に離反し「裏切り者」と呼ばれた涼山。片や、主家への忠誠に生きる寺本生死之介。二人はともに開城工作に暗躍する。やがて明らかになる涼山の真意とは。「三木の干殺し」を題材に、「正義」のあり方を問う本格戦国小説。
退廃が翳を落とす江戸市井の片隅に、人知れず生きる男と女。色と欲、そして仮借ない世相が時にやりきれない犯罪を呼び起こす。残忍な手口で殺された乱暴者の遺体から、意外な犯罪のからくりと、その憐れな動機が浮き彫りになる「大黒屋」など、芳醇な情緒と狂おしい哀感を湛えた傑作時代ミステリー六編。
深夜、ロスの展望台で発見された男の射殺体。後頭部に二発。怨恨か処刑かー。殺人事件特捜班での初仕事に意気込むボッシュだが、テロリストが関与している可能性が浮上。FBIの捜査介入に阻まれながらも、ボッシュはひたすら犯人を追う。十二時間の緊迫の捜査を描く、スピード感溢れる傑作サスペンス。
「あなたはとことん見下げ果てた人間です」私は二十ドルぶんの通貨を、デスクの向こう側に少し押し出した。「君は二十ドルぶん、彼のことを案じていた。しかし何を案じているのか、もうひとつよくわからない」行方不明の兄オリンを探してほしいー私立探偵フィリップ・マーロウの事務所を訪れたオーファメイと名乗る若い娘は、20ドルを握りしめてこう言った。いわくありげな態度に惹かれて依頼を引き受けることとなったマーロウ。しかし、調査を開始した彼の行く先々で、アイスピックでひと刺しされた死体が!謎が謎を呼ぶ殺人事件は、やがてマーロウを欲望渦巻くハリウッドの裏通りへと誘う…。村上春樹が「愛おしい」作品と呼び、翻訳を熱望した『かわいい女』、ついに半世紀ぶりの新訳なる。
「後篇」では、ドン・キホーテの狂気は大きく様変わりする。もはや彼は、自らの狂気に欺かれることはない。旅篭は城ではなく旅篭に見え、田舎娘は粗野で醜い娘でしかない。ここにいるのは、現実との相克に悩み思案する、懐疑的なドン・キホーテである。
フェイヤーダル人からローダンたちに、惑星プレーンドム訪問を許可する連絡がきた。テストでは合格しなかったにもかかわらず、何者かの介入により、許可がでたのだ。プレーンドムには、行方不明のテラに関して情報を持つと思われる、テルムの女帝の謎を解く鍵があるにちがいない。だが、ローダンのほかに、フェイヤーダル人が指定してきた同行者七人は、異種族との交渉経験のすくない“ソル”生まれの若者ばかりだった。
オッド・トーマスは、海辺の町に引き寄せられるようにしてやって来た。そこで暮らし始めた彼は、海と空が真っ赤に染まる悪夢を何度も見るようになり、桟橋で謎めいた若い女性アンナマリアと出会う。彼女はなぜかオッドのことを知っているようだった。悪夢と関係のある怪しげな男たちから彼女を守りつつ、この町で何が起きているか調べるオッドは、やがて恐るべき陰謀を知ることに!オッドが人生の転機を迎える注目作。
竜之介は美人社長秘書の恭子と、肌を合わせていた。彼女からは常務会で話し合われた最もホットなニュースを得られる。情報を得るのが遅い者は、まず出世の見込みはない。そこから竜之介の“野望街道”は始まった!ライバルからの女スパイ、専務の女、常務の娘、部下の恋人、同僚の嫁、自社CMタレント、新人女社員ーすべてを喰らい尽くして出世の道をつき進む。
侍になろうと剣豪の道を進んだものの、秋月栄三郎は権威と保身に走る武士に幻滅し、取次屋という商売を始めた。武家と町人のいざこざを、知恵と腕力で丸く、時には強引に収める仕事である。が、大坂の商家から幼馴染が訪ねてきたのがきっかけで、栄三は横暴な武家のとんでもない事件に巻き込まれる。デビュー作にして「笑える、泣ける!」傑作時代小説がここに誕生。
さる侯爵が、美しい養女ジュリーを、放蕩三昧の金持ちV***氏に輿入れさせようと企んだ。ところが、ジュリーには結婚を誓い合った若者がいる。彼女を我が子同然に可愛がり育ててきた侯爵夫人は、この縁談に胸を痛め、パリのみならずフランス全土で流行していた訴訟の手管を使う奸計を巡らせた。すなわち、誹謗文を流布させ、悪評を流して醜聞を炎上させるのだ。この醜聞の代筆屋として白羽の矢が立ったのは、腕は良いがうだつの上がらない弁護士、ルフォンだった。哀れルフォンの命運やいかにー。猛火に包まれたゴシップが、パリを駆けめぐる。『ミノタウロス』の著者が奏でる、エッジの効いた諷刺小説。
柴田勝家を滅ぼし、お市の方の三人娘、ちゃちゃ、お初、お江の身柄を預かった秀吉は、天下人への地歩を固める。やがてちゃちゃを自らの側室に、お江を政略結婚の道具にしながら、豊臣政権の永続に心を砕く。佗び茶の創始者である千利休は、職田信長に次いで秀吉の茶堂も務め、天下の大盛事・北野大茶会を仕切るなど、諸大名との間を取り持つ存在として政権に重きをなす。二人を軸に描く絢爛戦国物語。
伊賀には表と裏がある。八劔なる裏伊賀の忍者たちは、血を掛け合わせて人材を生み出す謎の集団。元和5年、八劔に美しく能力を備えた赤子・錏娥哢〓(あがるた)が誕生する。忍びの技を修練し、見目も麗しく成長。いくつかの旅で男たちと交わり、ますます妖しく輝きを放つ。寛永14年、錏娥哢〓(あがるた)は天草四郎時貞を追って島原に潜入する。島原の乱異聞ともいうべき、破天荒、前代未聞の忍者小説。