2010年3月発売
部下の自殺をきっかけにうつ病に罹り、会社を辞め妻子とも別れ、何もかもを捨てて故郷・博多に戻った青野精一郎。肺がんを発病し、死の恐怖から逃れようとするかのように、結婚と離婚をくりかえす津田敦。48歳となった、小学校以来の親友ふたり。やるせない人生を共に助け合いながら歩んでいく感動の再生物語。
秋内、京也、ひろ子、智佳たち大学生4人の平凡な夏は、まだ幼い友・陽介の死で破られた。飼い犬に引きずられての事故。だが、現場での友人の不可解な言動に疑問を感じた秋内は動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。そして予想不可能の結末が…。青春の滑稽さ、悲しみを鮮やかに切り取った、俊英の傑作ミステリー。
江戸は神田、玄関で揉めごとの裁定をする町名主の跡取りに生まれた麻之助。このお気楽ものが、町の難問奇問に立ち向かう。ある日、女好きの悪友・清十郎が「念者のふりをしてくれ」と言ってきた。嫁入り前の娘にできた子供の父親にされそうだという。本当の父親は一体誰なのか。
今なお、河童伝説が残る川で、左手首が切断された死体が、続いて、左腕が切り落とされた死体が浮かぶ。一方、相馬野馬追祭を見物に出かけていた棚旗奈々たち一行は、岩手県遠野まで足を伸ばしていた桑原崇と合流。そこでまた、血なまぐさい事件が…。事件の真相と、河童にまつわる真実が解き明かされる。
日常のふとした裂け目に入りこみ心が壊れていく女性、秘められた想いのたどり着く場所、ミステリの中に生きる人間たちの覚悟、生活の中に潜むささやかな謎を解きほぐす軽やかな推理、オトギ国を震撼させた「カチカチ山」の“おばあさん殺害事件”の真相とは?優美なたくらみに満ちた九つの謎を描く傑作ミステリ短編集。
良人との離縁を望み最後の助けを求めて女が駈け込む「縁切寺」として名高い鎌倉の東慶寺。門前にある餅菓子屋の倅で忍びの未裔でもある平左十手の使い手・和三郎が、寺役人の野村市助、公儀御庭番の息女紀乃とともに、夫婦の事情の背後に隠された意外な真実を鮮やかに暴き出す。表題作「おねだり女房」を含め全四編。
北町奉行所で閑職に就きながら、動物や人の心を診る「よろず医者」の顔も併せ持つ中原龍之介。彼の元に、熱血漢の新米同心、松本光太郎が唯一の部下として左遷されてきた。米問屋の子どもが行方知れずになった事件を調べる二人だが、店の桜木の下から人骨が見つかって…新シリーズ第一作。
獣医のリョウコは、2匹のジンベエザメに「星」「半月」と名前をつけて、研究をしていた。懸命の処置も空しく半月は息を引き取るが、星は成長し海に放たれる。時は流れ、西オーストラリアで研究していたリョウコが海中で目した光景とは(表題作)。パンダやペンギンなどの動物をテーマに、6作品を収録した珠玉の短編集。
紙芝居の慰問で赴いた南方から、命からがら引き上げてきた蒲生太郎、帰ってみれば東京の生家は丸焼けで、家族も全滅。傷心の太郎は戦地で世話になった軍医・金木令吉を頼り、秋田の山奥、仙北郡神代村へやってきた。そこで出会った戦争未亡人の敏子と深い仲になり、村で暮らしてゆく決意をするー。
決してスマートとはいえない風貌に「鈍牛」「アーウー」と渾名された訥弁。だが遺した言葉は「環太平洋連帯」「文化の時代」「地域の自主性」など、21世紀の日本を見透していた。キリスト教に帰依した青年期から、大蔵官僚として戦後日本の復興に尽くした壮年期、そして“三角大福”の一人として党内抗争の渦中へー「政治家は倒れて後やむ」と言い総選挙の最中に壮絶な“戦死”を遂げるまでを、愛惜とともに描く。
愛する妻の貞節を信じ切れない夫は試しに妻を誘惑してみてくれと親友に頼みこむが…。突飛な話の発端から、読む者をぐいぐいと作者の仕掛けた物語の網の目の中に引きずりこんでゆくこの「愚かな物好きの話」など四篇を精選。『ドン・キホーテ』の作者(一五四七ー一六一六)がまた並々ならぬ短篇の名手であることを如実にあかす傑作集。
おじさんの経営する米軍キャバレーで働いていた武士のところに、幼馴染みの寧々子が働きたいとやってきた。ずっと寧々子に恋心を抱いていた武士だが、想いを告げられない過去があった。そんななか、常連客である一人のアメリカ兵が寧々子に近づいてきた。-第11回「講談社Birth」小説部門受賞作(『お父さんの少年時代』を改題)。
グッキーは、惑星ケルノトの警戒厳重な要塞カルミノンス=クロルから闇のスペシャリスト12名とともに逃げだしたものの、惑星からの脱出には失敗してしまった。闇のスペシャリストの脱走を知ったゼロ守護者は、惑星ケルノトを攻撃するための艦隊派遣を決めた。一方、ローダンは、グッキーたちを救出するべく、マルティミュータントのダライモク・ロルヴィクと副官タッチャー・ア・ハイヌたちをケルノトに送りこんだが…。
才気煥発で有能な軍人であり、数数の勲章を授与された英雄ウィルソン・コール。共和宙域辺境に左遷された彼は、やがて腐敗した共和制政府と航宙軍に嫌気がさし、仲間とともに老朽巡視艦“セオドア・ルーズベルト”を奪取、星図すらない辺境宙域へと脱走した。これからは海賊として生きるのだ!だが狙うは無辜の商船ではなく、同業者の海賊船だった。難破した貨物船を装い、海賊船をおびきよせた初仕事はうまくいったが…。
“おれ”は、東西の指定広域暴力団と地場の組織が鎬を削る街に事務所を開く私立探偵。やくざと警察の間で綱渡りしつつ、泡銭を掠め取る日々だ。泣く子も黙る組長からは愛犬探しを、強面の悪徳刑事からは妻の浮気調査を押しつけられて…。しょぼい仕事かと思えば、その先には、思いがけない事件が待ち受けていた!ユーモラスで洒脱な、ネオ探偵小説の快作。