2010年5月12日発売
現代化の波が押し寄せるギリシャの街アルカディア。パンデリス親子もまた、さらなる利益を求めて観光客誘致に躍起となり、人里離れてひとり静かに暮らしているガブリリス老人の土地を、ヴィラ建設地にしようと目論んでいた。そんななか、ガブリリスがひき逃げ事故で命を落とす。折しも故郷に戻ってきた太った男ヘルメス・ディアクトロスは、友人ガブリリスを偲びつつ、真相の究明に乗り出す。地元の警察、マスコミ、開発者…各々の利権や欲望が露呈し、事件は意外な結末を迎える。娘を黄金に変えた古代ギリシャのミダス王の悲劇が、再び現代に繰り返される。
江戸のかたぎ長屋にやってきた浪人・瀬能宗一郎。剣の腕はたつが、どこか素っ頓狂。形見の銘刀「國房」を質に入れ、代わりに差しているのは竹べらに銀箔を巻いた「竹光」だ。もの珍しい江戸の生活を満喫していた宗一郎だが、生来の性格からか、はたまた隠された素性故か、様々な厄介事に巻き込まれる。やがて宗一郎をつけ狙う怪しい影が!侍とはいえ、剣を抜かなくなった平和な時代。それでも剣に憑かれた男たちの人生が苛烈に交錯する。漫画表現の最先端を走る松本大洋の同名ベストセラーコミックス原作者が書き下ろす小説シリーズ第一弾。
主人公の瑠菜は、私立女子中学の二年生。毎朝、お天気キャスターの吉岡さんのことがかっこいいなあ、などと思いながらひとりで朝食をとり、電車に乗って学校へ向かう。本はけっこう好きで、でも、まわりに自分が読んだ面白い本の話ができる友達がいない。だから、みんなの話題に話を合わせている。家に帰れば、エリートサラリーマンの父と、カルチャースクール通いに熱をあげる母がいる。ある日。瑠菜は、自分が誰とも繋がっていないと思ってしまう。そして、ひとり電車に乗ってある場所を目指すが、彼女にやさしい奇跡が起こる。
元禄の討ち入りから十四年。既に世にないはずの赤穂浪士が江戸に出没、かつて浅野家に仕えていた女たちが次々と殺される。その悪行を偶然目にした駿河屋の娘・お京がさらわれ、大石内蔵助を名乗る男とその一党から届いた脅迫状には、身柄と交換に『将監闇日記』を渡せという要求が。だが誰も、その『闇日記』なるしろものに覚えがなかった。さらに、浦島太郎を探しに「竜宮」からやってきたという“於兎姫”一行も現れて…。複雑に入り組んだ謎を解くべく、八丁堀同心・水木半九郎が立ち上がる!多くの者が必死に探す『将監闇日記』とは?北上次郎選第三弾。
『将監闇日記』の謎が解けぬうち、今度は半九郎の妻・お柳が行方不明に。どうやら、蔵前の札差し・松前屋本蔵が関わっているらしい。本蔵はかつて「お役者小僧」の異名をとった、大盗賊であった。その本蔵の手引きを受けて、半九郎はお柳を救い出すべく悪の巣窟・幽冥庵に忍び込む。お柳を誘拐しておきながら、その幽閉先を教える本蔵の狙いは何なのか?そして『将監闇日記』とは、「竜宮」とは?浅野内匠頭、大石内蔵助らを名乗る悪党たちや、於兎姫一行までもが絡むなか、いよいよすべての謎が明らかに!半九郎シリーズ第二弾にして、戦後時代伝奇小説の傑作。