2010年6月発売
戦国末、ローマに派遣された天正遣欧少年使節。八年後に帰国した彼らを待っていたのは「禁教」だった。四人の内、ある者は道半ばで倒れ、国外に追放され、拷問の中で殉教する。だが、千々石ミゲルだけは信仰を捨てた。切支丹の憎悪を一身に受けながら、彼は何のために生きようとしたのか?ミゲルの苦悩の生涯を、妻「珠」の目から描く傑作。
AVとテレビ、ふたつの世界がぶつかり、反目し合い、火花が散り、新たなうねりが生まれた!1990年代前半から21世紀の現在まで、「悩ましき人々」の群像がおりなす劣情と感動。業界の裏の裏まで知る著者が圧倒的な迫力で描ききった、ノンフィクションノベルスの金字塔、ここに堂々完結。
幕末の京都で道具屋「とびきり屋」を営む若夫婦・真之介とゆず。わけありの道具を「見立て」、癖のある人々を「目利き」しながら、ふたりは少しずつ成長してゆくー。動乱の京都を舞台に、「道具」と夫婦愛を描いた佳品六篇を収録。
葉子の夫は失踪し七年、彼女の元に骨笛が届いた。謎は謎を呼び寄せ、運命は絡み合う。東京、福岡、四国、五島、ローマ、ヴェネツィア、パリを結ぶ愛と愛の不在の物語。
長く疎遠だった父、その遺品の整理中に見つけた大学ノートには、表紙に大きく「めぐらし屋」と書かれていた。困惑する娘の蕗子さんに、折も折、当のめぐらし屋を依頼する見知らぬ客からの電話が舞い込む。そして、父の独居暮らしに淡い輪郭が与えられるたび、蕗子さんの遠い記憶は小さくさざめくのだった。地方都市を舞台に、温かで端正な筆致で描く、飾りない人びとの日常光景。
ミスター・ボーンズは犬だ。だが彼は知っていた。主人のウィリーの命が長くないことを。彼と別れてしまえば自分は独りぼっちになることを。世界からウィリーを引き算したら、なにが残るというのだろう?放浪の詩人を飼い主に持つ犬の視点から描かれる思い出の日々、捜し物の旅、新たな出会い、別れ。詩人の言う「ティンブクトゥ」とは何なのか?名手が紡ぐ、犬と飼い主の最高の物語。
八重山群島に屹立する高層タワーは災厄への予兆なのか?超自然的な存在と交感するユタの血を引く女、暴力の歴史に身をおく島民の末裔たちによるテロル。蹂躙されてきた南島の時空間は正史の側にいる人間の愚行と悲哀を暴き、重層的な物語として未曾有のカタストロフへと向かう。21世紀の政治的混沌と内乱の緊張を刻み込む、著者の小説的達成。
父から「悪の欠片」として育てられることになった僕は、「邪」の家系を絶つため父の殺害を決意する。それは、すべて屋敷に引き取られた養女・香織のためだった。十数年後、顔を変え、他人の身分を手に入れた僕は、居場所がわからなくなっていた香織の調査を探偵に依頼する。街ではテログループ「JL」が爆発騒ぎを起こし、政治家を狙った連続殺人事件に発展。僕の周りには刑事がうろつき始める。しかも、香織には過去の繰り返しのように、巨大な悪の影がつきまとっていた。それは、絶ったはずの家系の男だったー。刑事、探偵、テログループ、邪の家系…世界の悪を超えようとする青年の疾走を描く。芥川賞作家が挑む渾身の書き下ろしサスペンス長編。新たなる、決定的代表作。
イラストレーター森山由海(別名フジワラヨウコウ)氏のオリジナル・イラスト二点を渡された三人の小説家が、そのイラストが扉絵・挿絵になるような短篇小説を執筆。森山氏はそれぞれにあらためて三点目のイラストを描き下ろすー。「SF Japan」と「問題小説」の二誌にまたがって、三年間連載。二十四名の人気作家が集結し腕を揮った前代未聞の競作企画が遂に単行本化。まずは第一弾、「奏の1」の開演。
澁澤龍彦が「人獣交合の描写のエロティシズムとグロテスクぶりにかけては、この橘外男の『陰獣トリステサ』以上のものは、まだ世界のどこの文学にも現われていないようだ」と絶賛した表題作ほか、綺想の傑作『青白き裸女群像』『妖花イレーネ』を一挙収録。
中三の夏休み、転落事故がもとで七年間の記憶を失ってしまった涼。それから十年。失業の憂き目にあった涼は、産業スパイとしてある化粧品会社に潜り込まないかという危険な誘いについ乗ってしまう。ところが、潜入したその会社のイケメン社長、宮守はなんと前夜、街で出逢い抱かれた相手…しかも彼は涼の幼馴染みで、記憶喪失になる直前まで二人は恋人同士だったと言う…。欠けた真実か偽りの過去か…ミスティラブ。