2010年8月31日発売
水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)-。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。
ほかの新聞記者から畏怖されながらも、権力の前に屈した父・洋介が残したと言われる、所在不明の遺書。難民の救済活動をしていたが、ドラッグ中毒死してしまった、高校時代の同級生で元ジャーナリストの三枝響子。三流ゴシップ誌の編集長・石神遼一がちらつかせる、すべてのメディアが嫌悪したとされる謎の“Nファイル”。戦前から政財界の暗闇に恐るべき影響を与え続けているという、古神道系宗教法人「七生舞の会」。ペーパーバック『Into a black sun』を手にし、羨望と尊敬を込めて「戦場の哲学者」と呼ばれる伝説の傭兵・ミノワ。-外資系民間軍需請負企業に籍を置く戦争のプロ・野際昭輔と、コロンビアの内戦で負傷した子供達だけを集めたダンスチームに属する少女・リサが、運命の糸で繋がれたとき、実体無き悪が蔓延する世界に復讐を始める。
明治の末。幼少の頃に実父を失い、以来、父の同期生だった紀田財閥二代目の清一に育てられてきた徹雄。可憐な美貌、そして類稀な画の才能を開花させた徹雄は十七歳を目前にしたある日、生まれて初めて自分の意思…画家を志したいということを義父、清一に告げる。だが、それは息子に執着する清一の怒りに触れ、獰猛な獣と化した義父に犯されてしまう。娼婦の如く抱かれる日々が続き、やがて…。禁忌滴る官能の折檻。
留学中、友人のアーキルに密かな想いを寄せていた真樹。だがアーキルの王子としての立場を思い、黙って姿を消した。…七年後、仕事で赴任したのはアーキルのいる国、ジャルマイラ。そして最会した二人…真樹を捕え、凌辱するという形でアーキルの復讐が始まる。彼を裏切った過去への贖罪から、想いを伝えることができない真樹。アーキルもまた…。そんな時、アーキルの兄、ナジムが真樹を欲し…。ねじれた傷心愛。