2010年8月発売
物語の背景 ぼんやり王国 恩賜の「琉球藩」 一葉落ちるころ 属領見習 与那原良朝の夢と現実 日本よ裏切るな 外交だらけの国 巨塔と古井戸 冷える夏 処分官と弁当 首里城南殿 屋良座沖の野望 ただふしぎな蒙昧
沖縄問題はすべてここから始まった。今だからこそ、圧倒的リアリティーをもって読める日本政府と琉球王国の話。 処分官として派遣された松田道之が琉球に突きつけたのは、尚泰(しょうたい)王の上京、清国への朝貢禁止、明治年号の強制など独立どころか藩としての体裁をも奪うものであった。琉球内部でも立場により意見が分かれ……。「世界で軍隊をいちばんきらうという琉球」がどう対処するのか。小説で沖縄問題の根源に迫る不朽の名作。 <沖縄の人々の間に、かつて自らの国家であった琉球王国が存在し、それがヤマト(沖縄以外の日本)によって、力によって滅ぼされたという記憶がよみがえってくる。そうなると日本の国家統合が内側から崩れだす。この過程が始まっていることに気づいている東京の政治エリートがほとんどいないことが、現下日本の悲劇である。いまわれわれが直面している危機を認識するために、本書がひとりでも多くの人の手に取られることを望む。>--佐藤優 解説より ヘラルド情報 風雲遵奉書 白と黒のあいだ 滅びと念仏 国を売ること 前夜のひとびと 徒労と真実 ふたつの船出 死なない覚悟 エピローグ あとがき
意を決して告白をした王子・カレル。 その恋の相手が自分だと気づかない従者・マリエ。 生真面目なマリエは、殿下の想いが叶うよう奮闘するのだがーー。 すれ違いから始まる、不器用な恋の行方は?
少女アリス・リデルの生まれたままの姿を撮影していたルイス・キャロルは、その合間に不思議な未来の話をはじめる…暗黒の検閲社会を描く表題作をはじめ、低IQ化スパイラルが進行する日本社会の暴走を描く「リトルガールふたたび」、夢と現実の中間にある“亜夢界”を舞台に、人間と登場人物との幸福な共存を力強く謳う中篇「夢幻潜航艇」など、SF的想像力で社会通念やカルト思想の妥当性を問い直す傑作中短篇7本。
直参旗本にして大目付の父の代理で、浅草にある饅頭屋の息子の祝言に列席した大河内右京。式の最中、芝で起きた殺しの嫌疑で、その息子がしょっぴかれた。右京が事件の真相を調べ始めると、最近、父・政盛が懸念していた薩摩藩の怪しげな動向に繋がった。結婚したばかりの妻・綾音を連れて、遠く薩摩へ乗り込んだ右京を待ちかまえていたのはー。
東の坂東の地で、阿高と、同い年の叔父藤太は双子のように十七まで育った。だがある夜、蝦夷たちが来て阿高に告げた…あなたは私たちの巫女、火の女神チキサニの生まれ変わりだ、と。母の面影に惹かれ蝦夷の地へ去った阿高を追う藤太たちが見たものは…?“闇”の女神が地上に残した最後の勾玉を受け継いだ少年の数奇な運命を描く、日本のファンタジーの金字塔「勾玉三部作」第三巻。
西の長岡の都では、物の怪が跳梁し、皇太子が病んでいた。「東から勾玉を持つ天女が来て、滅びゆく都を救ってくれる」病んだ兄の夢語りに胸を痛める十五歳の皇女苑上。兄と弟を守るため、「都に近づくさらなる災厄」に立ち向かおうとした苑上が出会ったのは…?神代から伝わる“輝”と“闇”の力の最後の出会いとその輝きを、きらびやかに描きだす、「勾玉三部作」のフィナーレを飾る一冊。
町外れの砂原に建つ“緑の家”、中世を思わせる生活が営まれている密林の中の修道院、石器時代そのままの世界が残るインディオの集落…。豊饒な想像力と現実描写で、小説の面白さ、醍醐味を十二分に味わわせてくれる、現代ラテンアメリカ文学の傑作。
“緑の家”を建てる盲目のハープ弾き、スラム街の不良たち、インディオを手下に従えて他部族の略奪を繰り返す日本人…。ペルー沿岸部の砂の町とアマゾン奥地の密林を舞台に、様々な人間たちの姿と現実を浮かび上がらせる、バルガス=リョサの代表作。
賭博師ボーモントは友人の実業家であり市政の黒幕・マドヴィッグに、次の選挙で地元の上院議員を後押しすると打ち明けられる。その矢先、上院議員の息子が殺され、マドヴィッグの犯行を匂わせる手紙が関係者に届けられる。友人を窮地から救うためボーモントは事件の解明に乗り出す。
初代警視総監川路利良を先頭に近代化を進める警視庁と、元江戸南町奉行たちとの知恵と力を駆使した対決。綺羅星のごとき明治の俊傑らが銀座の煉瓦街を駆けめぐる。風太郎明治小説の代表作。
1匹の茶トラが、キャット・シッターの芹と新しい依頼主、カメラマンの一郎を出会わせてくれた……猫によってゆっくりと癒され、結びついていく孤独な人々の心をハートウォーミングに描く静かな救済の物語。
ヌイグルマー。それは、愛する者を守るためにぬいぐるみと合体した勇者たちの、熾烈なる戦いの伝説。ロックも含む大槻ケンヂの全作品の中でも、最もぶっ飛んだノンストップSFバトルアクションの傑作。敵も味方も異常。人類の危機を救うべく、ぬいぐるみの超人が高円寺〜中野間を愛と血と綿と炎で覆いつくす。で、さらに読者を感動で泣かす。
ある日突然村に現れた44号と名乗る少年には、並外れた腕力の他に、他人の心を読み、時空を旅するという信じられない能力が隠されていた。同名異本も存在するが、本作はトウェインの手による決定版の完訳!
古寺巡りに来ていた女子大生ひとみと留学生ジーンは西洋風の同じ顔の謎の集団に襲われるが、ヴォルフと名乗る男に救われる。謎の集団の目的は? ヴォルフの正体とは? 未曾有のダーク・オペラシリーズ!
十九世紀の琉球王朝。嵐吹きすさび、龍踊り狂う晩に生まれた神童、真鶴は、男として生きることを余儀なくされ、名を孫寧温と改め、宦官になって首里城にあがるーー前代未聞のジェットコースター大河小説!!
大和朝廷で改革を進める聖徳太子の期待を背負い、遣隋使に加わった留学生・高向玄理と南淵請安は、隋都で大使・小野妹子から密命を受ける。通事(通訳)・鞍作福利が、奪われた隋帝の国書を追って失踪したため、その行方を探ることになったのだ。高句麗侵略の準備に騒然とする隋で2人が見たのは、帝国の疲弊した現実だった。国書は誰に、なぜ奪われたのか?東アジアの視点から古代日本を活写する、全く新しい歴史小説の誕生。
高句麗侵略に失敗した隋では、煬帝の圧政に対し内乱が拡大する。日中の対等な国交実現をめざす高向玄理と南淵請安も、理想に燃えて革命運動に身を投じた。大和朝廷では、高句麗・百済との同盟を推進する聖徳太子と、新羅と組んで権力保持を目論む大臣・蘇我馬子の対立が表面化しようとしていた。帰国した小野妹子は、増長する馬子を牽制すべく太子を支えるが、斑鳩の宮に暗雲が垂れ込める。一級の歴史エンターテインメント。