2010年9月発売
エスカレートする遊びの中で、少年と少女が禁じられた快楽に目覚めていく「少年」、女に馬鹿にされ、はずかしめられることに愉悦を感じる男を描く「幇間」、関東大震災時の横浜を舞台に、三人の男が一人のロシア人女に群がり、弄ばれ堕ちていく「一と房の髪」など、時代を超えてなお色鮮やかな、谷崎文学の真髄であるマゾヒズム小説の名作6篇。この世界を知ってしまったら、元の自分には戻れない。
『桜ハウス』と名づけた家でハウスシェアをしていた女たち。蝶子36歳・遠望子31歳・綾音26歳・真咲21歳。あれから十数年の月日が経ち…。今明かされる真咲の離婚の真相。婚約破棄を繰り返していた綾音が、選んだ男。遠望子のもとを訪れた女の目的は?そして、蝶子に新しい男が!?一生懸命に生きるからこそ、どこかコミカルになってしまう30〜40代の女たち4人を小気味よく描く傑作連作集。
完さんが日本に帰ってきた!明治の政府になって早7年。江戸の広告代理店、広目屋「藤由」の居候から、アメリカでのジャーナリズム体験をひっさげ、今度は東京日日新聞の居候となった香冶完四郎。人気の新聞錦絵をひと目みるなり、不審の数々を暴き出す推理の冴えは昔のまま。免許皆伝の剣をステッキに替え、いまや売れっ子戯作者となった仮名垣魯文らと事件の真相を探る。人気シリーズ第4弾。
時は安土桃山。運命的に出会った四人の若者が一座を結成した。驚くべき速さで三味線を弾きこなす藤次郎。出雲のお国一座の笛役者・小平太。信長の従者だった黒人の太鼓叩き・弥介。べらぼうに喧嘩の強い天性の舞姫・ちほ。型破りな芸で熱狂的に民衆に迎えられた彼らは、やがて、庶民への支配を強める秀吉に立ち向かうことにー。エネルギッシュで爽快な、第20回小説すばる新人賞受賞作。
室町後期、荘園の新代官として赴任することになった僧の清佑。村のものどもを愛子と思った撫育するよう老師から言われたが、村人たちは一筋縄ではいかない。食うや食わずの生活では、どんな手を使っても生きのびることが第一なのだ。寺で純粋培養され、理想に燃える代官と、代官でさえうまく利用しようとするしたたかな村人たち。清佑の一方通行とも見える彼らへの思いは実を結ぶのか。第14回中山義秀文学賞受賞作。
気になる男性と出会うたび、「この人と結婚するかも」って直感する。けど、結果はいつも外れ。このままじゃ私、ただのイタい妄想独身女!?二度と変な直感は抱かないと反省したのも束の間、英会話教室で出会ったケンのことが早速気になって…(『この人と結婚するかも』)。その他、迷走する男の勘ちがいを描く『ケイタリング・ドライブ』を同時収録。
1558年、アン・ブーリンの娘エリザベスが念願のイングランド女王に即位する。国の安定を求めて国内外の権力者との結婚を進言する国務長官ウィリアム・セシルをよそに、エリザベスは幼なじみで国賊の汚名を被るロバート・ダドリーに夢中だった。ダドリーもまた、貞淑な妻エイミーをないがしろにし、宮廷に入り浸る。恐ろしいほど激しい人間関係を描いた、史実に基づく壮絶な物語。待望の人気シリーズ第3弾。
強気に振る舞うエリザベス女王だったが、フランスやスコットランドとの争いや、国庫の枯渇と、イングランドを破滅へと導くようだった。一方、恋人ロバート・ダドリーの野心に反感を持つ者たちが激増。宮廷には暗雲が立ち込める。密約、謀略、不審な死の影…。八方塞がりとなったエリザベスが、女王として、女として、選んだ道とは!?「処女女王」の激しすぎる物語。
中央アメリカの軍事国家マヌエリアで、日本商社の支社長が誘拐された。CIAをバックにつけた反政府ゲリラの犯行だという。合衆国と軍事政権間の緊張が高まるなか、国際対テロ用特殊部隊「トランプ・フォース」が出動。元商社マンの佐竹は、中国美女リーとともに社員を装って政権と接触するが、そこには思いがけぬ陰謀が隠されていた…密林での激闘に胸躍る、シリーズ第二弾。
大晦日の夜。連続無差別殺人事件の唯一の生存者、梢絵を囲んで推理集団“恋謎会”の面々が集まった。四年前、彼女はなぜ襲われたのか。犯人は今どこにいるのか。ミステリ作家や元刑事などのメンバーが、さまざまな推理を繰り広げるが…。ロジックの名手がつきつける衝撃の本格ミステリ、初の文庫化。
クリスマスイヴを控え、ペンション「春風」に集った七人の客。そんな折、オーナー・晶子のもとに、二十一年前に起きた医者一家虐殺事件の復讐予告が届く。刻々と迫る殺人者の足音を前に、常連客の知られざる一面があらわになっていき…。復讐を心に秘めているのは誰か。葬ったはずの悪夢から、晶子は家族を守ることができるのか。
水道橋のある街で事故に遭った女ともだち。主人のいない部屋で晩餐に腕をふるう料理人。排水管の水漏れ解決に奮闘する下宿人の私ー。異国に暮らした男と個性的で印象深い女たちの物語。ほのかな官能とユーモアを湛えた珠玉の短篇集。
波瀾にみちた幼年時代を送った少女ゾーイは、コロニー防衛軍を退役したジョンとゴースト部隊出身のジェーンの養女となり、植民惑星ハックルベリーで幸せな日々を送っていた。やがて両親とともに新たな植民惑星をめざすが、宇宙船は目的の星に到着しなかった。しかも、ゾーイたちは思いもよらない陰謀にまきこまれていく…『最後の星戦』をゾーイの視点から描き、その知られざる冒険の旅を明らかにするシリーズ第四弾。
すべての子どもたちが人工授精で誕生し、掌にノードを埋め込まれて生活する時代。人々はノードを介して情報や思念を交換する。中2の少女、不動火輪と滝口兎譚は授業の自由課題で小学校の遠足バス転落事故を調査し、死亡前の生徒の思念記録を偶然手に入れた。その記録に関わる大きな陰謀と、二人の家庭の事情が複雑に絡み、遂に事件は勃発するー大人世界の不条理に抗う少女たちの絆を描く、俊英作家の新世代青春小説。
死んだほうがいい。死にたくない。生き残るー。“天国への階段”をシンボルとするマルドゥック市。ある夜、少女娼婦ルーン=バロットは、賭博師シェルの奸計により爆炎にのまれる。瀕死状態の彼女を救ったのは、委任事件担当者にしてネズミ型万能兵器のウフコックと、ドクター・イースターだった。一命をとりとめたバロットはシェルの犯罪を追うが、その眼前に敵の事件担当官ボイルドが立ちはだかる。それはかつてウフコックを濫用し、殺戮の限りを尽くした因縁の相手だった。壮絶な銃撃戦の果てバロットとウフコックは、シェルが運営するカジノで自らの有用性をかけた勝負に挑む。過去の自分と向き合い、生きる意味を考え始めたとき、バロットの最後の闘いが幕を切ったー。少女の喪失と再生を描いた著者の最高傑作に、大幅な改訂を加えた新版、堂々刊行。
医師の話ではない。人間の話をしているのだ。 栗原一止は夏目漱石を敬愛し、信州の「24時間、365日対応」の本庄病院で働く内科医である。写真家の妻・ハルの献身的な支えや、頼りになる同僚、下宿先「御嶽荘」の愉快な住人たちに力をもらい、日々を乗り切っている。 そんな一止に、母校の医局からの誘いがかかる。医師が慢性的に不足しているこの病院で一人でも多くの患者と向き合うか、母校・信濃大学の大学病院で最先端の医療を学ぶか。一止が選択したのは、本庄病院での続投だった(『神様のカルテ』)。新年度、本庄病院の内科病棟に新任の医師・進藤辰也が東京の病院から着任してきた。彼は一止、そして外科の砂山次郎と信濃大学の同窓であった。かつて“医学部の良心”と呼ばれた進藤の加入を喜ぶ一止に対し、砂山は微妙な反応をする。赴任直後の期待とは裏腹に、進藤の医師としての行動は、かつてのその姿からは想像もできないものだった。 そんななか、本庄病院に激震が走る。 【編集担当からのおすすめ情報】 読んだ人すべての心を温かくする、 39万部突破のベストセラーに、第二弾が登場します。 第一弾は櫻井翔、宮崎あおいの出演で2011年全国東宝系にて、映画化! 2010年本屋大賞第二位。 その前作を遙かに超える感動を、お届けします。 大反響! 発売一週間で4刷、21万部突破!
事件の陰にある「救い」を描いた連作長編 一人娘・真由が誘拐されて一か月、安否のわからないまま、白石千賀は役場の仕事に復帰、溜池工事の請負業者決定を控えていた。そんな千賀にかかってくる「おたくの真由ちゃんが死体で発見されました」といういたずら電話の主とは・・・・(第一話「談合」)。真由ちゃん誘拐事件から2か月後、同じ町内に住む24歳の会社員・鈴木航介が死体で発見された。同僚の久保和弘はその1週間前、経理部員である航介から不正を指摘されていた。そして、航介の携帯にいまも届くメールの中に衝撃的な一文を発見する(第二話「追悼」)。渡亜矢子は真由ちゃん事件の犯人を追っている刑事。無事に戻ってきた幼児から証言を引き出すのは容易ではなかったが、工夫を重ねて聞き出した犯人像に近い人物を探し当て、ついに逮捕にこぎ着けるが・・・・(第三話「波紋」)。そして最終話、すべてのエピソードが1つの線になり、事件の背景にさまざまな「救い」があったことを知る(「再現」)。「一つの事件が起こした波紋は、別の新しい事件を引き起こし、その新しい事件がまた波を立てる。波は当事者のみならず、周りの人々までをも飲み込み、翻弄していく」──
八代将軍・吉宗の時代、質素倹約を強いる幕府に対抗して、尾張名古屋は遊興を奨励し、空前の繁栄を見せていた。異人との出会いから、夫をすて福岡を出たこなぎと、女敵討ちのために江戸を離れた鉄太郎。長い旅路の末に名古屋の地でめぐり逢った二人は、それぞれの秘密を胸に秘めたまま接近する。巨大な政争の具となっていることも知らずにー。著者渾身の傑作歴史時代小説。