2011年発売
格式あるクリスマスパーティーに参加した超セレブお嬢様・ミホの前に現れたのは、なんと約束された将来の結婚相手。だけどソイツはクスリを売りさばくような超ワル者だとわかり…大大大ピンチのミホ!そんなミホに手を差し伸べたのはーイケメンヤンキーズの中で最もバナナの似合う男・破天荒な凪!?さらには千里の父、極道界のドン・純の登場でますますデンジャラスな大展開。
馬鹿にしたければ笑えばいい。あたしは、とっても「しあわせ」だった。風呂は週に一度だけ。電気も、ない。酒に溺れる父の暴力による支配。北海道、極貧の、愛のない家。昭和26年。百合江は、奉公先から逃げ出して旅の一座に飛び込む。「歌」が自分の人生を変えてくれると信じて。それが儚い夢であることを知りながらー。他人の価値観では決して計れない、ひとりの女の「幸福な生」。「愛」に裏切られ続けた百合江を支えたものは、何だったのか?今年の小説界、最高の収穫。書き下ろし長編。
おれたち、なんでこんな眠たい田舎町に生まれたんやろうな。原発がなければ成り立たない街。ここで男は育ち、仕事をし家庭を持ったー。閉塞感に押しつぶされるこの街で、やるせなさを抱きつつ男は生きる。
マイケル・ビアードは、狡猾で好色なノーベル賞受賞科学者。受賞後は新しい研究に取り組むでもなく、研究所の名誉職を務めたり、金の集まりそうな催しで講演をしたりの日々。五番目の妻に別れを告げられた後は、同僚の発明した新しい太陽光発電のアイディアを横取りしてひと儲を狙っている。そんな彼を取り巻く、優しくも打算的な女たち。残酷で移り気なマスメディア。欺瞞に満ちた科学界とエネルギー業界ー。一人の男の人生の悲哀とともに、現代社会の矛盾と滑稽さを容赦なく描き切る、イギリスの名匠による痛快でやがて悲しい最新長篇。
異質さゆえ、互いから目を逸らせぬまま成長した幼馴染は、それぞれの足で大阪から東京へと辿りついた。八月二日夕刻、合田雄一郎警部補は電車から女性の飛び込みを目撃する。現場より立ち去ろうとしていた佐野美保子との一瞬の邂逅。欲望に身を熱くした。旧友野田達夫との再会は目前に迫っていた。合田、野田、美保子、三人の運命が、溶鉱炉の如き臙脂色の炎熱の中で溶け合ってゆく。
野田達夫を次第に追いつめてゆくのは工場での果てなき労働、そして不眠…。一方、合田雄一郎は佐野美保子を欲するあまり、常軌を逸しはじめた自分に気付く。十八年前に分かれたはずの人生が、なぜ再び交わってしまったのか!意志もなく踏み出された数歩。生命を失った物体が深夜にごろりと転がった。一睡もできぬほど暑い夏の出来事だった。照柿ーそれは断末魔の悲鳴の色。
地下鉄に毒ガスが撤かれた1995年3月、わたしはアメリカへ発った。明るく巨大なアメリカで、私は孤独を満喫した。一生このままでいられるなら、どんなに幸福だろうとさえ思った。ただ、孤独であることの僥倖とは別に、そこには「女」が絶対的に欠けていたー。孤独を愛する男を描く表題作の他、「ふける」「日本私昔話よりじいさんと神託」を収録。
あの夜、歌舞伎町のビルに火を放ったのは自分なのか、それとも?-泥酔した記憶が定かでない中古レコード店主は自問を繰り返す。不穏な日々を彩るように流れるディランの歌声。やがて不審な客が店を訪れ「火をつけろ」とつぶやき姿を消した…。あの「九月十一日」の直前、東京・西新宿を舞台に、変容する世界を描く表題作と、三十一年間借りたままの本を返しにゆく奇妙な一日を写す「返却」。現代演劇を刺激し続ける著者が挑む“小説の冒険”。
トラブルを呼ぶ男、三枝。今度は目の前で中国人実業家、姜が敵対する組織に拉致されるという事件が…。しかも、姜からひどい辱めを受けたばかりにもかかわらず、三枝は彼の救出を画策。ベタ惚れの恋人の頼みに王も渋々動き出すことに…。一方、王の義弟、小野は愛する楊への独占欲が募るあまり、次第に鬱屈した思いをかかえるようになって…。姜救出作戦が浮き彫りにしていく二組の恋人たちの明と暗…錯綜する愛。
雪男が中学生の頃の出来事ー。兄に悟られることのないように、祓魔師の仕事をこなす雪男。ある土曜日、チャリティーコンサートのボランティアをすることになった奥村兄弟の前に、悪魔に寄生された男が現れる…!その他、しえみ、出雲、竜士、志摩、子猫丸、メフィストたちの小説でしか読めないエピソードを収録。
時給300円弱。茨城の“奴隷工場”から19歳の中国人少女が脱走した。彼女が戻らないと、250人の研修生は全員が強制送還される。タイムリミットは1週間。捜索を依頼されたマコトは、チャイナタウンの裏組織“東龍”に近づく。彼女の事情を知り、板ばさみになり悩むマコト。万策つきた時、マコトの母が考えた秘策とは。
かつてわが国有数の盛り場でありながら、震災と戦災により、その輝きを失った日本橋。その地に創業享保八年、昭和まで九代続いた老舗菓子店「立花屋」はあった。街の歴史と家族の営為を書きとめ、その栄華と没落を描ききった胸うつ名作。『東京少年』『流される』とともに自伝的三部作をなす長編小説。
高校の同級生だった女性から手紙が届き、四十年ぶりに再会して登った浅間山での一日。青春の輝きに満ちていた彼女だったが…。人生の復路に始めた山歩きだからこそ知るかけがえのないものとは。過ぎゆく時のいとおしさが稜線を渡る風とともに身の内を吹きぬける山歩き短篇集。各賞で絶賛された珠玉の四篇収録。
東北の没落した旧家で、末期癌の夫に尽くす妻の清枝。ある日そこに五十一年前に失踪した父親の頭蓋骨が宅配便で届く。差出人は集団就職で町を出た翌年、火事で死んだはずの同級生・長沢一郎だった。「骨」に込められた思いと秘密とは?高度成長期の昭和を舞台に描かれる、成功と喪失、そして復讐と因果の物語。
きわめて知的で魅力的な青年ジェレミー。僕の兄にして連続殺人犯。彼が施設を脱走してニューヨークに潜伏、殺人を犯したという。連続する惨殺事件。ジェレミーがひそかに進行させる犯罪計画の真の目的とは?強烈なサスペンスに巧妙な騙しと細密な伏線を仕込んだ才人カーリイの最高傑作。
三十五歳の脚本家、奈津は、才能に恵まれながら、田舎で同居する夫の抑圧に苦しんでいた。ある日、夫の創作への関与に耐えられなくなった奈津は、長く敬愛していた演出家・志澤の意見に従い、家を飛び出す決意をする。束縛から解き放たれた女性が、初めてめぐり合う生と性、その彷徨の行方を正面から描く衝撃的な官能の物語。
志澤とのかつてないセックスを経験した奈津は、テレビの取材で訪れた香港で、大学時代の先輩・岩井と久しぶりに出会う。夫とも、志澤とも異なる、友情にも似た岩井との性的関係は、彼女をさらなる境地へと導く。抑圧を解放した女性が、官能の果てで見たものは?作家・村山由佳が新境地を切り開いた金字塔的小説。
年の瀬の佃島で、渡し船が突如突っ込んできた船に当て逃げされ転覆、乗っていた四人が死んだ。だが、死んだ船頭以外の三人の遺体には刺し傷が見つかる。やがて、出航直前に別の船に乗るよう声をかけられた娘がいたとの証言も出て、事故の謎はさらに広がる。南町奉行根岸肥前が活躍する「耳袋秘帖」殺人事件シリーズ第十二弾。