2013年11月20日発売
江戸の裏社会で存在感を増す男、残月の異名を持つ郎次は、抜け荷の稼業を一手に仕切っており、一家の跡目を襲う立場と見なされていた。だが、一人の因業女を始末したことから、潮目が変わり、次第に抜き差しならない立場に追い込まれていく。
御一新から10年。武士という身分を失い、根津遊廓の美仙楼で客引きとなった定九郎。自分の行く先が見えず、空虚の中、日々をやり過ごす。苦界に身をおきながら、凛とした佇まいを崩さない人気花魁、小野菊。美仙楼を命がけで守る切れ者の龍造。噺家の弟子という、神出鬼没の謎の男ポン太。変わりゆく時代に翻弄されながらそれぞれの「自由」を追い求める男と女の人間模様。第144回直木賞受賞作品。
僕が小説を書くようになったのには、心に秘めた理由があった(「小説家のつくり方」)。ふたりぼっちの文芸部で、先輩と過ごしたイタい毎日(「青春絶縁体」)。雪面の靴跡にみちびかれた、不思議なめぐり会い(「ホワイト・ステップ」)。“物語を紡ぐ町”で、ときに切なく、ときに温かく、奇跡のように重なり合う6つのストーリー。ミステリ、ホラー、恋愛、青春…乙一の魅力すべてが詰まった傑作短編集!
食品輸入会社の現地職員としてアテネで働く美貴は、仕事で訪れたとある村で廃院となった修道院を見つける。その宿坊の壁に描かれた大天使ミカエルを目にして以降、彼女の周りでは次々と不可思議な現象が起こる。無人の聖堂で不意に聞こえる祈りの声、相次ぐ村人の死、積み重なる家畜の死骸。全ては神の仕業か悪魔のいたずらか。異国の地を舞台に繰り広げられるサスペンス長編。
関ヶ原合戦が終わった。天下分け目の大戦に勝利した東軍徳川方では恩賞問題に苦悩していた。黒田如水(官兵衛)に謀反の疑いあり!そんな訴えがあり、徳川家康は本多正純に真偽の究明を命じた。如水と石田三成との間に密約は存在したのか。東西決戦の絵図をひいたのは何者なのか。黒田如水・長政ら父子の情をからめ、関ヶ原合戦に秘められた謎の方程式を、鮮やかに解き明かした傑作長編。
戦国時代。土佐の名門、長宗我部家の若き当主・元親は、領民が安らかに暮らせる戦のない国を目指して四国統一に乗り出す。巧みな戦略で着実に領土を広げてゆくが、戦で多くの部下を失い、肉親をも殺めたことで、元親は自身の器量と夢との間で苦しみ始める。さらに、天下を目指す信長、秀吉の脅威が迫りー。四国の覇者、長宗我部一族の栄光と挫折を真正面から描く、圧巻の歴史小説。
動乱の予兆をはらむ幕末の会津藩。下級武士の家に生まれた伊庭俊輔は、頭はいいが大人しい一平、何事にも中庸を得た新次郎ら幼馴染と楽しい日々を過ごしていたが、上士の子弟に因縁を吹っかけられ袋叩きに遭う。将来を誓い合った隣家の娘である梨津に縁談話が持ち上がり、平穏な暮らしが一変する。時代の激浪にもまれ、俊輔は大切なものを守りぬけるのか。青春時代小説の新基軸、ここに始まる。
「女」という漢字を分解すると、“く”“ノ”“一”-女忍者の通称である。そのくノ一を主人公にした、傑作六篇を収録。真田方の忍者と徳川方の女忍の因縁のドラマ。愛する新妻が隠密だと知った夫の苦悩。男たちの間を流転する忍びの悲哀…。戦国乱世の裏で、江戸時代の泰平の底で、くノ一たちが濃艶に、きらびやかに乱舞する。本邦初のくノ一アンソロジー、ここに見参!オリジナル文庫。
イギリス医学界の重鎮、アーサー・ヒルがノーベル賞を受賞したー。知らせを受けた青年医師の津田は、同じ分野で研究を続けながら惜しくもこの世を去った恩師、清原の死因を探るなかで、アーサーの周辺に不審な死が多いことに気付く。彼らを死へと追いやった見えざる凶器とは一体何か。真相を追ううちに津田は大きな陰謀に飲み込まれてゆく。ノーベル賞を題材にした本格医療サスペンス。
党の粛清により、隣の男に貸した帽子を除いて、すべての写真から消滅した男。一枚の写真も持たずに亡命したため、薄れゆく記憶とともに、自分の過去が消えてしまうのではないかと脅える女…。“笑い”と“忘却”というモチーフが、さまざまなエピソードを通して繰り返しバリエーションを奏でながら展開され、共鳴し合いながら、精緻なモザイクのように編み上げられる物語。
「付き合い始めたあの頃、僕はこれっぽっちも君のことが好きじゃなかった。全部嘘だった」天才サウンドクリエーターの小笠原秋は、人気バンド「CRUDE PLAY」の元メンバー。青果店を営む家で育った小枝理子は、クリプレの大ファンの、歌うことが好きな女子高生。ビジネスとしての音楽につまらなさを感じていた秋は、気まぐれに理子に声をかけ、自分の正体を隠したまま付き合い始める。しかし、理子がクリプレのプロデューサーにスカウトされ、デビューすることに。“嘘”から始まった、秋と理子のせつない恋の行方はー!?累計四百五十万部突破同名コミックの映画版ノベライズ。
事件記者のアビーは人気俳優ジャック・ウインターのプライベートジェットに乗り込み、彼にインタビューすることになった。彼はスター然として尊大だが、スクリーンで見るよりはるかに男性らしく、強烈な魅力を放っていた。そんな中ジェット機が墜落し、ホンジュラスのジャングルに不時着してしまう。危機的状況下でアビーは不注意な行動からジャックの罰を受けることになり…。人気作家の満を持しての日本デビュー作!
ジャックと共にジャングルから救出されたアビー。帰国後、彼の手ほどきでBDSMの世界に足を踏み入れる。自分は硬派なキャリアウーマンだと自負していたのに、彼に鞭打たれると、歓びと期待感を覚えてしまうーアビーは戸惑いながらも、彼の優しさに触れ、心を解き放つのだった。そんな折、ジャックの過去がスキャンダラスに報道され、二人の間に誤解が生まれる。セクシーでホット、その上、心温まる極上ロマンス!
西暦453年、フン族王アッティラの婚礼の祝宴に沸く陣地。強力な騎馬部隊を率いて中央アジアからロシア・東欧を制覇し、帝政末期の西ローマ帝国まで脅かしたアッティラは、「神の鞭」の異名を取り、西側キリスト教徒を震え上がらせていた。そのアッティラが宴の席でローマからの使いの巧妙な手口により毒殺されるー。“トレジャーハンター”のファーゴ夫妻は知り合いの考古学者フィッシャー博士から、ハンガリーでフン族のものらしき遺跡を発見したとの連絡を受ける。遺跡からは武装した千体もの遺骸が発掘され、そのひとつの鎧にアッティラの墓のありかを示す暗号が見つかる…。