2013年発売
パリのゲルマント館の一翼に引っ越した一家。家主の公爵夫人は神秘の輝きを放つ貴婦人。その威光にオペラ座で触れた「私」は、コンブレー以来の夢想をふくらませ、夫人の甥のサン=ルーを兵営に訪問、しだいに「ゲルマンのほう」へ引き寄せられる。
剣客修行の旅に出た大柿半兵衛は、袋井の宿で雲海という奇妙な老人と出会う。売れっ子の絵師でもある雲海は、酔えば酔うほど強くなるという「酔剣」の達人でもあった。雲海の酒乱癖にもめげず、教えを請うた半兵衛の腕は、めきめき上達していく。そんなある日、半兵衛は黒装束の一団に襲われた、西国大藩の綾姫とその一行を救い出した。だが、その裏には、驚くべきお家騒動の陰謀が隠されていた。書き下ろし。
世界の米海軍基地を標的にした同時多発テロを未然に防ぎ、冷戦時代に行方不明となった水爆のありかを示す。一冊の書物が持つ恐るべき力を知り尽くし、いかなる困難な依頼をも達成してきた書物狩人ユーイチ・ナカライ。だが、無敵を誇るル・シャスールの前に、ついに強大な宿敵が現れる。シリーズ第三弾。
仕事なし、彼女なし、借金あり。とにかくツイてない。律儀なことが唯一の取り柄。そんなノボルに持ちかけられたのは、絶対に失敗するはずのない完全誘拐計画。その報酬は一千万円。人生を立て直すためのたった一度の犯罪。そう誓って受けたこの仕事。だが彼は、身に覚えのない事件の殺人犯になっていた。
群雄割拠の戦国時代、ついに上洛を果たした信長。天下布武を掲げた彼の者の心中は、我欲への依怙か天下静謐かー。信長の行状と真意を探るべく、剣聖上泉伊勢守の下に集められた五人のはみ出し者たちは、互いに牽制と信頼を繰り返しながらその異能を開花させていく。乱世を生きた若者たちの青春活劇開幕。
新陰流の使い手、豪商の長男坊、陰陽師家の香道師、役の行者の末裔、男装の女剣士。朝廷の命運までも左右する信長とは、果たして何者なのか?その答えを探し続ける五人は、疋壇城近くで於市御寮人が実兄・信長へあてた密状を入手する。海道作品ならではの、典雅な世界観と豪快な剣戟場面に胸が躍る。
忍者の末裔三人組、鴨志田甲斐(伊賀服部流)、中村貴湖(伊勢服部流)、柏木竜之介(甲賀)プラス忍者犬のほうろくは、奪われた秘密の社伝を追って、長野・戸隠へ。敵対する波多野村雲流に襲われながらも、甲斐は戸隠に伝わる「鬼女・紅葉」と「天岩戸」ふたつの伝説の、これまで語られることのなかった真相に迫る。シリーズ第5弾。
20年前、使用人夫婦に全財産を奪われ、かつての邸宅に監禁され、調教されてきた静子夫人。ある夜、レズビアンプレイの相手として連れてこられた19歳の繭子は、出産後すぐに引き離された実の娘だった。故・団鬼六氏に名作を託された著者が、業と欲望の深淵に、真っ正面から向き合った、渾身の力作官能長編。
神町。どこにでもあるようなこの片田舎の町は戦後日本の縮図でもあった。米軍の占領政策の一端を担ったパン屋とヤクザ、田宮家と麻生家は神町で絶大な勢力となり、息子の代になっても両家の固い結びつきは続いていたーあの事件が起きた炎熱の夏までは。壮大な構想の下に始まる「神町トリロジー」第一部。
未曾有の洪水に襲われ水没した神町。二つの死体と共に、終戦直後にこの町で起きた忌まわしい惨劇が浮かび上がる。不穏な噂が町を覆い尽くし、やがてそれは町を二分する勢力の全面抗争へ。神の町の狂態の行き着く果ては。小説のあらゆる可能性を追求し、毎日出版文化賞、伊藤整文学賞をダブル受賞した傑作。
モルタルで石像のごとく固められた変死体が発見された。翌朝、愛宕署特捜本部に入った犯人からの電話。なぜか交渉相手に選ばれたのは、新人刑事の如月塔子だった。自らヒントを提示しながら頭脳戦を仕掛ける知能犯。そして警察を愚弄するかのように第二の事件がー緻密な推理と捜査の迫力が光る傑作警察小説。
眠りに就くと猫の身体に乗り移れるという、不思議な能力を持つ小学六年生のぼく。町で起きた女児襲撃事件の謎に、猫のジェニイの身体を借りて挑むことに。スリル満点、はじめての冒険の結末はー。子どもが大人になるために大切なことを教えてくれる、あったかくて、少し切ないファンタジック・ミステリ。
新学期、横浜にある女子高の特進クラスで上杉小春は碓氷優佳という美少女に出会う。おしゃべりな小春とクールな優佳はやがて親友にー。二学期の中間試験で、東海林奈美絵が成績を急上昇させた。どうやら、夏休み中にできた彼氏に理由があるらしい。だが校則では男女交際は停学処分だ。気をもむ小春をよそに平然とする優佳。奈美絵のひと夏の恋の結末を優佳は見切ったようで…(「夏休み」)。教室のどこかで、生まれ続ける秘密。少女と大人の間を揺れ動きながら成長していくきらめきに満ちた3年間を描く青春ミステリー。
ANAグループ機内誌『翼の王国』の人気連載、待望の文庫化!二度目の失業でつらい思いをしていた時に、目に飛び込んできた憧れの人の姿。結婚も意識していた7年越しの恋人に別れを告げられ、ひとりで訪れた異国の街ー。人生の大切な一場面をあざやかに切り取った短編12本と、作家が仕事でプライベートで訪れた、国内外の印象的な場所を描く11編のエッセイ。あたたかく心にしみる作品集。
佐藤善幸、外食チェーンの正社員。身に覚えのない女性問題が原因で左遷された先は、6年半一度も帰っていなかった故郷の町にある店舗だった。淡々と過ごそうとする善幸だが、癖のある同僚たち、女にだらしない父親、恋人の過去、親友の結婚問題など、面倒な人間関係とトラブルが次々に降りかかり…。ちょっとひねくれた25歳男子の日常と人生を書いた、第23回小説すばる新人賞受賞作。
16歳の夏、なにもかもが嫌になって家出をした徹平。もう戻らないと心に決めた旅立ちだった。丸2日、夜行列車に揺られて降り立ったのは北海道は十勝の無人駅。たまたま知り合ったおばちゃんの家に泊まり、20トントラックに乗せてもらうことに。道中、ヤザワ好きの運転手に心をゆるし、打ち明け話をする。そして彼と別れ、ひとり礼文島に渡るー青春ロードノベル、著者初の文庫書き下ろし。
地方都市・波山市の市議会議長が殺された。当直明けの夜、波山署の刑事・本宮宣親は遺体が安置されている病院に向かう。亡くなった議長の妻と娘は何かを隠しているようだった…。事件当時、被害者宅付近で聞こえた男女の声を手掛かりに、本宮は県警本部の若手女性刑事・平原優子と組み、事件の足取りを追う。捜査を進めていくうちに、奇しくも、本宮自身が封印していた高校時代の苦い思い出と事件が絡み合いー。時代に翻弄された人々の哀しみを丁寧に描いた感動の警察小説。