2013年発売
智勇度胸を懐に、韋駄天のごとく諸国を駆け抜ける影の飛脚たち。憂国志士をかたる無頼漢から商家のドラ息子奪還に挑む鶴吉。烏合の衆を率いて、河川増水で閉ざされた帰路を切り開く、宇三郎。そして、弟のように育てた次郎吉を迎えに上総を訪れた治助は、男の逞しい成長と世の変遷を肌身で感じる。血を熱くする活劇。胸に灯点す人の情。志水辰夫第三の黄金期を示す、三作を収録。
不甲斐ない彼氏と理不尽な職場を捨て、ひとり旅に出た弥生は、滞在先の上海で葉月蓮介と出会う。蓮介は、高級家具を扱うレゴリスの若き経営者として注目される存在だった。一方、この街に住むシュウメイは、美貌を買われ、レゴリスのCMモデルに選ばれるも、それをきっぱりと断っていたー。恋は前触れもなく、始まった。道尾秀介があなたに贈る、絆と再生のラブ・ストーリー。
澪湖は大学三年生。父の妹の和を幼少の頃から母親より慕っていた。その叔母が、最近、どこかおかしい。叔母夫婦はようやく恵まれた愛娘を生後五カ月で亡くしていた。それで、精神に変調を来したのだろうか。大きな悲嘆が彼女を壊してしまったのか…澪湖の疑惑は深まるばかり。不安な彼女を支えてくれたのは、オタク青年木塚くんだったー独自の文体で、人格変容の恐怖を探る長編。
僕は二度、パン屋を襲撃した。一度めは包丁を体に隠して、二度めは散弾銃を車に載せてー。初期作品として名高い「パン屋襲撃」「パン屋再襲撃」が、時を経て甦る。ドイツ気鋭画家のイラストレーションと構成するヴィジュアル・ブック。
高校生のとき親に対する反発から家出同然で上京したこともある光二だが、認知症で介護が必要となった父、そして家と、向き合わざるをえなくなる。さらに父の死後、東日本大震災が発生し、家を失った多くの人々を光二は眼のあたりにする…。喪われた家をテーマに著者が新境地を拓いた長編小説。
シーズンオフのリゾート地で出会った男女。人里離れた場所に住む人気女性作家とのその夫。連れ立って音楽フェスティバルに出かける父と息子。死を意識し始めた老女と、かつての恋人ー。ふとしたはずみに小さな嘘が明らかになるとき、秘められた思いがあふれ出し、人と人との関係ががらりと様相を変える。ベストセラー『朗読者』の著者による10年ぶりの短篇集。
『アルケミスト』の執筆直後、パウロは師であるマスターJに課題を与えられた。それは「守護天使と話し“誰もが自分の愛するものを殺す”という詩ののろいを解く」というもの。パウロと妻クリスは40日間の砂漠の旅を始め、守護天使に会うための条件を知るヴァルキリーズと呼ばれる女性集団に出会った。パウロとクリスは彼女たちと旅を続ける中、嫉妬や自己疑念、激しい恐怖と戦わなければならなくなるー。
何気ない会話や行動を「フラグ」として認識し、ありきたりな日常をドラマチックに変えてしまう謎の装置“フラッガーシステム”。平凡な高校生・東條涼一は、淡い期待と下心から、そのデバッグテストの参加者(主人公)を引き受けてしまうのだが…両親が海外へ転勤、家出少女といきなり同棲、ツンデレお嬢様とのラブコメ、魔法設定で悪の組織と闘い…etc.やがてフラッガーシステムは「ある意味」感動的なラストへ向けて、涼一が思いもよらない暴走をはじめる。
刑事、宇佐見の周囲で次々に不審な死を遂げる重要参考人や過去の事件の被疑者たち。これはただの偶然ではない…。疑惑の目は同僚の高口に向かうが、彼は病気を抱えた定年間近の男だ。そんな宇佐見の前に現れたのは高口の主治医、鈴村。怜悧な美貌と見事な肉体をもつ完璧な外科医…彼こそが死に神なのか…だがなぜ?鈴村と接触を図るうち、いつしか宇佐見の心は謎めく男に搦め捕られ、ついには家庭も捨ててしまうことに…。息詰まる惑溺のサスペンス。
俺とマコトは小学校時代からの腐れ縁だ。マコトは昔からドッキリを仕掛けるのが生き甲斐で、社長となった今も変わらない。そんなヤツが、史上最大の「プロポーズ大作戦」を実行すると言い出したー。天使よりも純情。悪魔よりも非情。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか?第25回小説すばる新人賞受賞作。
安政七年三月、桜田門外の変。世に維新回天の軸がまわりはじめ、八年後の江戸無血開城に至るまで重要な役割を果たした男が三人いた。勝麟太郎、西郷吉之助、そして薩摩藩合伝流鉄炮師範で、十五匁筒の使い手・斬善次郎安綱。藩主・島津斉彬の謎の死後、実権を握った久光に疎んじられ、鹿児島城下の屋敷に軟禁されていた善次郎は、藩の運命をも左右するある秘密を守り抜くため、妻子を連れ脱藩。次々と襲いかかる討っ手に、百発百中の士筒が火を噴く!動乱の世に国を捨て、妻子の命を、藩の秘密を守るべくニューヒーローが駆け抜ける、痛快幕末エンタテインメント。
冗談と本気の狭間で怪しく躍動する麺々(面々)が、誰もが予想しなかったムーブメントを巻き起こす!!初代B-1グランプリでチャンピオンの栄冠に輝いた「町おこしの先駆者」の快進撃の秘密とは。
東京・高円寺。同じ夜に起きた医学部教授の自殺と女子高生の突然死。しかし、女子高生の姉・桜井礼子は妹の死に疑問を抱き、仲間達と原因究明をはかる。鍵を握るのは、もう一人の医学部教授と都市伝説カクシワラシ、そして謎の言葉“カジュアル”。人間の心に宿る究極の恐怖の謎に迫る書き下ろし長編ミステリ。
実のところ、日々、車同士は排出ガスの届く距離で会話している。本作語り手デミオの持ち主・望月家は、母兄姉弟の四人家族(ただし一番大人なのは弟)。兄・良夫がある女性を愛車デミオに乗せた日から物語は始まる。強面の芸能記者。不倫の噂。脅迫と、いじめの影ー?大小の謎に、仲良し望月ファミリーは巻き込まれて、さあ大変。凸凹コンビの望月兄弟が巻き込まれたのは元女優とパパラッチの追走事故でしたー。謎がひしめく会心の長編ミステリーにして幸福感の結晶たる、チャーミングな家族小説。