2014年11月発売
「このままじゃおれたちはやばい、ラストに相当やばい場面が待っているかもしれない。おれたちというのは、床屋のまえだとおれ、それにもちろん津田さんの三人組のことだ。だけど厳密にやばいのはあんただよ。わからないか。夜汽車に乗って旅立つ時だよ」いきなり退職金を手渡された津田伸一にいよいよ決断の機会が訪れるー忽然と姿を消した家族、郵便局員の失踪、裏社会の蠢き、疑惑つきの大金…たった一日の交錯が多くのひとの人生を思わぬ方向へと導いてゆく。
元吉原の北隣、長谷川町。その南側にあるお稲荷さんに通じた細道に移り住んで稽古屋の看板を掲げた音四郎とその妹お久。兄はほんの二年前まで芝居小屋に出ていた役者あがり、足に大けがを負って舞台を去り、今では隠居のように妹と暮らしている。厳しい稽古に妹は評判を案じるのだがーー。 「大女」「ならのかんぬし」「いぬぼうさき」「はで彦」「宵は待ち」「鷺娘」「菊の露」「丙午」「にせ絵」。弦音ひびく江戸情緒あふれる9編を収録。
老人が遺した一冊のノート。たった一行だけ書かれた、「波の音が消えるまで」という言葉。1997年6月30日。香港返還の前日に偶然立ち寄ったマカオで、28歳の伊津航平は博打の熱に浮かされる。まるで「運命」に抗うかのように、偶然が支配するバカラに必然を見出そうともがく航平。謎の老人との出会いが、彼をさらなる深みへと誘っていき…。緑の海のようなバカラ台には、人生の極北があった。生きることの最も純粋な形を求めて、その海に男は溺れる。
バカラは地獄です。あなたは破滅します。でも、私には、それが羨ましい。美しい中国人娼婦が抱えた哀しい秘密、老人が背負い続けてきた罪と罰、航平の父の死の意外な真相。明かされていく過去を振り切るように、航平は己自身を賭けて最後の大勝負に挑む。そしてー。生と死の極限の歩みの果てに辿り着いた場所で、男はその意味を知る。遺された言葉の、ほんとうの意味を。
ある夜、僕は崖から突き落とされた。目が覚めると、巻き添えになった美形の高校生の姿に変わっていたー入れ替わった姿で、僕は犯人探しを始める。僕を殺した奴は、誰だ。容疑者=クラスメイト。
白川丹波は伊勢神宮から日本橋の姫子島神社にやってきた神主。寂れた神社を立て直すため氏子たちを集めるが、揃いも揃って曲者ばかり。人々の心を祓い清めるため、若き禰宜(神主)が行う"禊ぎ"とは?
反政府的な立場を貫いたために、国を追われた人気作家・三宅。父親が去ってから、公安警察に四六時中見張られている娘の志穂の耳に、三宅の訃報が届く。遺骨を引き取ろうと、北欧の町へ向かう。飛行機の出発を待っていると、政府の要人である中田が乗り込んできた。志穂の見張りと、三宅の死が確実なものか、確かめるためらしいのだが…。最果ての地で、志穂と中田を待ち受けていた衝撃の真実とは…。サスペンス・ロマン。
かつて実戦空手の最高峰「無双塾」で鍛練に励んだ藤堂忠之。先輩から預かった貧乏道場の再建を目指すものの、お人好しな性格も相まって、いつもトラブルの矢面に立たされることに。暴力団に追われる空手家、武力行使も辞さない自警団のリーダー、素性を偽る女子高生。一筋縄ではいかない入門希望者たちを相手に、藤堂の奮闘が再びはじまる!鮮やかなアクションシーンで描かれる、笑って泣ける青春格闘小説第2弾!!
12歳の天才ヴァイオリニスト、ミシェルが辿り着いたのは、とある高名な音楽家が住むという不気味な洋館であった。そこで出会ったのはクロエと名乗る不思議な雰囲気を持つ少女。クロエが呪いから解放されるには、ミシェルの協力が必要だと言うのだが…?2014年No.1フリーホラーゲーム待望のノベル化。
慶長五年九月十五日(一六〇〇年十月二十一日)。天下分け目の大戦ーー関ヶ原の戦いが勃発。--なぜ、勝てたのかーー東軍伊東潤(徳川家康)天野純希(織田有楽斎)吉川永青(可児才蔵)--負ける戦だったのかーー西軍葉室麟(石田三成)上田秀人(宇喜多秀家)矢野隆(島津義弘)--そして、両軍の運命を握る男ーー冲方丁(小早川秀秋)当代の人気作家七人が参陣。日本史上最大の決戦を、男たちが熱く描いた「競作長編」。 慶長五年九月十五日(一六〇〇年十月二十一日)。 天下分け目の大戦ーー関ヶ原の戦いが勃発。 ーーなぜ、勝てたのかーー 東軍 伊東潤(徳川家康) 天野純希(織田有楽斎) 吉川永青(可児才蔵) ーー負ける戦だったのかーー 西軍 葉室麟(石田三成) 上田秀人(宇喜多秀家) 矢野隆(島津義弘) ーーそして、両軍の運命を握る男ーー 冲方丁(小早川秀秋) 当代の人気作家7人が参陣。 日本史上最大の決戦を、男たちが熱く描いた「競作長編」。 「人を致して」 伊東潤 「笹を噛ませよ」 吉川永青 「有楽斎の城」 天野純希 「無為秀家」 上田秀人 「丸に十文字」 矢野隆 「真紅の米」 冲方丁 「孤狼なり」 葉室麟
“貴族祭”の行われるダルマラス村に巨大石棺を無事に届けたことで、Dたちの仕事は終わったはずだった。しかし、石棺の中にいるのがローランジュ公爵夫人だと知った村長が、祭りが終わるまでDに村に残るように依頼する。そして祭りの当日、貴族用の墓所に運び込まれた石棺が騒ぎはじめ、見張りの村人がバタバタと倒れる事態に村長は、Dに助けを求める。しかし、それは公爵夫人がDをおびき出すための罠だったー!?
巧妙な手口が神業と噂の盗賊、鼬鼠の伝五郎が捕まった。残した千社礼の裏面に拙い文字でおとっつァんと小さな落書きがあったのが決め手という…悪行に手を染めても薄幸の女たちと築いた家族を護ろうとした男の数奇な人生。どんな親でも親は親ー血が繋がっていようといまいと、立派であろうとなかろうと、その巡り合わせは特別なもの。いつの時代にも通じる親子の情を万感胸に迫る筆で謳いあげた人情時代小説・第四弾!
元暴力団捜査係の刑事・遠沼が拳銃を盗み、留置場にいた女性を連れて失踪した。彼を追う特捜刑事・香月功は、“蛇の指輪”をはめた暴力団幹部に急襲される。何故か、東西の暴力団も遠沼を捜しているという。そのことを知った香月は、それぞれの組長の愛人達に接近。捜査のうちに明らかになる遠沼の正体と、“蛇の指輪”の悲しき因縁とは?暴力うずまく世界を警察手帳を持たずに捜査する“顔のない形事”シリーズ第18弾!
愛したいのに愛せないーー38歳、小説家の夏帆は、母親への畏怖と反発から逃れられずに生きてきた。 大人になり母との関係を見つめ直すうち、衝撃の真実が……。共感と感動の自伝的小説。(解説/島本理生)
織田信長の二女、冬。その器量の良さ故に、父親に格別に遇され、周囲の女たちの嫉妬に翻弄される。戦国の世では、男は戦を行い、熾烈に覇権を争い、女は武器を持たずに、心の刃を研ぎすまし、苛烈な“女いくさ”を仕掛けあう。その渦中にあって、冬は父への敬慕の念と、名将の夫・蒲生氏郷へのひたむきな愛情を胸に、乱世を生き抜いてゆく。自ら運命を切り開いた女性の数奇な生涯を辿る歴史長編。
1792年8月の蜂起で王権が停止され、立法議会に代わって国民公会が開幕。フランスは共和政へと突き進む。やがて開かれた国王裁判でルイ16世の死刑が確定し──。王政の最期を描く、衝撃の第12巻。(解説/安達正勝)
とある事情から弟夫婦の子、なずなを預かることになった私。独身で子育て経験のない四十半ばの私は、周囲の温かい人々に見守られながら、生後二ヶ月の赤ん坊との暮らしを始める。第23回伊藤整文学賞受賞作(解説/陣野俊史)
古い都の南、朽ちた楼門の袂で、男は笛を吹いていた。笛を吹いてさえいれば、男は幸せだった。ある春の夜、笛を吹く男の前に、黒い大きな影が立っていた。鬼だ。笛の音を気に入った鬼は、男に絶世の美女を与え、百日の間は絶対に触れてはならぬと告げるが…(「鬼の笛」)。人ならざるものを描くことで浮き上がる、人間の業や感情。民話や伝承をベースに紡がれた六編を収録した短編集。
一人きりで目覚めてしまう明け方。私は人の声に触れたくて、知らない誰かに電話をかける。冷たいシーツの上、澄み切った夜明けの青い空気の隙間で溺れてしまわないようにー(「顔色の悪い魚」)。色彩が、もし息子たちを生むのなら、五感は、常に心を親にしている。金、赤、青、紫、白、緑、橙、黄、灰、茶、黒、銀。心の中のパレットから選びだした言葉で描きだされた、12色の短編集。