2014年11月発売
時は慶長、大坂の陣。眼下には大地を埋め尽くさんばかりに徳川勢の旗幟がはためく。真田幸村は己の造った出丸に立ち、苛烈な戦場を見据えていた。身に纒うは朱一色の戦装束。狙うは家康の首級ただひとつ。武士に生まれし者の宿命、見事に命の華を咲かせ、武名の芳香を遺そうぞーたったふたつの戦にすべてを賭けた、稀代の智将の壮烈な生きざまを、濃密かつ流麗な筆致で描ききる戦国歴史巨編。
1514年夏。国王ヘンリー8世の巡幸に伴う弁護士業務と、北部で捕らえられた謀反人ブロデリックをロンドンに連行するよう命じられたシャードレイク。訪れた北部の町ヨークで、ガラス職人オールドロイドが王に関する不穏な言葉を残して落下死する現場に遭遇する。やがてシャードレイクが幾度と命を狙われる一方、ブロデリックの身も危うくなり…。CWA賞受賞シリーズ、英国で大人気の歴史ミステリー。
ヘンリー8世巡幸での役目を終え、あとはロンドンへ謀反人を護送するだけとなったシャードレイク。ヨークを発った晩にまた襲われるが、その犯人は意外な人物だった!さらにロンドンにたどり着いたシャードレイクを待っていたのは、身も凍る過酷な試練。そして、ヨークでの謁見以来、シャードレイクの中に募る王への不信感は、驚愕の事実とともに、一連の事件の真相へとシャードレイクを導くのだった!
南アフリカの灼熱の空の下、ひとりの男が息子を殺される。それは、“アルテミス”と呼ばれる殺人者が誕生した瞬間でもあった。犯罪者を標的にした連続殺人の捜査にあたるのは、飲酒問題に苦悩する刑事。一方、幼子を抱えた若い娼婦が、牧師に驚くべき告白をする…。様々な人生模様が複雑に絡み合う時、壮大なるミステリの構図が浮かび上がる。実力派が放つ「マルティン・ベック賞」に輝く傑作!
チェコ・シュルレアリスムの巨匠が描く、ゴシック小説!鞭打ち、不老長寿、魔術、吸血鬼、異端審問、双子のロマンス…果たして少女はイタチ顔の長官、老婆、神父に打ちかつことができるのか?17歳の少女、欲望×背徳の一週間。
圧倒的な数の暴力を前に、熾烈を極めるアルザス防衛戦。死力を尽くし戦い続ける冒険者達であったが、ついに限界の時が訪れる。アルザス村の背後を十字軍の重騎士部隊にとられたことで、クロノはやむなく撤退を決断。 決死の脱出を図るがーー白き絶望に抗うアルザス防衛戦、ここに完結。果たして、スパーダへ続く道の先に、希望はあるのか。
学校では「アホジュン」と蔑まれ、友達はひとりもいない。でも、孤独じゃなかった。「音」があった。自転車があった。歌われることを待っている「歌」もあった。14歳。夏の少し前。同級生のトクが奏でるギターを聴いて、ジュンは、やっと気がつく。自分が楽器であることに。「僕、楽器なんだ!」小説の愉楽、ここにあり!!歓喜。興奮。ささやかだけれど奇跡的な物語。
少年の胸に芽生えた同級生男子への恋心。どうしようもない感情に翻弄され傷つく彼にやがて家族との別れ、そして決断の時が訪れる。本当の自分を生きるために。繊細な心理描写で究極の性の苦悩を描き切った青春文学の新たなる傑作。
18年前に死んだはずの画家から届いた絵葉書が封印された町の過去を解き明かすーイクメンでカリスマ学芸員のパパと保育園児のかえでちゃん。寂れゆく町に引っ越してきた、オアシスのような父娘コンビが、ピカソ、マティス、ゴーギャン、シャガールらの名画解釈をもとに、夭折の天才画家が絵に込めた想いを読み解き、その最期の真相に迫る!
地球防衛のための援助を得るべく、ケイローンの首都惑星シュリシュクに到着した恵一たちを待っていたのは、“魂の試練”だった。同様の要請を携えこの星を訪れている他の28種族との3回の戦いの結果により、支援の優先順位が決まる!初戦はドローンを相手に戦う団体白兵戦。2回めは、選抜された兵士による機動戦闘艇を使った格闘戦。3回めが、艦隊同士の機動戦であった。果たして恵一たちは、この試練に勝ち残れるか!?
高野信念はオタクグッズ会社経営の35歳。偶然出会った病気がちの彼女・妙と過ごす時間を増やすため、彼女の父親(強引・無口)に勧められるがまま在宅個人投資家に転身した。ネット投資に精を出す彼に時々届く間抜けなメールには、どこか宇宙人っぽさが感じられる…。謎の相場変動の原因は本当に宇宙人の所業か?高野は艱難辛苦を乗り越え無事に妙と結婚できるのか?いい歳したオタクが一喜一憂する恋愛金融SF!
ポール・アンダースンの偽名を与えられた外務省職員は、英領ジブラルタルのホテルの一室で苛立ちを露わにしていた。彼は閣外大臣クインの代理として、テロリスト捕獲のための“ワイルドライフ作戦”に顧問として参加していた。だが、秘密任務に関わった経験は皆無で、なぜ自分が呼ばれたのか見当もつかない。やがてポールは、作戦が成功裏に終了したとだけ告げられ、任を解かれる。一方、クインの秘書官トビー・ベルは、大臣の不審な行動を監視していた。ジブラルタルでの作戦には胡散臭い民間防衛企業の男の影がちらついていたからだ。しかし、トビーの調査には隠蔽を謀る官僚たちの厚い壁が立ちはだかり…。“ワイルドライフ作戦”とは何だったのか?スパイ小説の巨匠が描く、世界の新たな闇。
生体受像の技術により生活のすべてを記録しいつでも己の人生を叙述できるようになった人類は、宗教や死後の世界という概念を否定していた。唯一死後の世界の概念が現存する地域であるミクロネシア経済連合体の、政治集会に招かれた文化人類学者イリアス・ノヴァクは、浜辺で死出の旅のためのカヌーを独り造り続ける老人と出会う。模倣子行動学者のヨハンナ・マルムクヴィストはパラオにて、“最後の宗教”であるモデカイトの葬列に遭遇し、柩の中の少女に失った娘の姿を幻視した。ミクロネシアの潜水技師タヤは、不思議な少女の言葉に導かれ、島の有用者となっていくー様々な人々の死後の世界への想いが交錯する南洋の島々で、民を導くための壮大な実験が動き出していた…。民俗学専攻の俊英が宗教とミームの企みに挑む、第2回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。
孫権の裏切りにより関羽が戦死ー。復讐の怒りに燃える蜀の皇帝・劉備は孔明の諌言も聞かずに呉へ進撃したが…。関羽・張飛・曹操・劉備…『三国志』の大立者・英雄たちが孔明だけを残して去る。酒見版『三国志』必読の大転換点。
「死にたくなったら電話して下さい。いつでも。」空っぽな日々を送る浪人生・徳山は、ある日バイトの同僚に連れられて十三のキャバクラを訪れる。そこで出会ったナンバーワンキャバ嬢・初美から、携帯番号と謎のメッセージを渡される。猛烈なアプローチを怪しむも、気がつけば、他のことは何もかもどうでもいいほど彼女の虜に。殺人・残酷・猟奇・拷問・残虐…初美が膨大な知識量と記憶力で恍惚と語る「世界の残虐史」を聞きながらの異様なセックスに溺れる徳山は、やがて厭世的な彼女の思考に浸食され、次々と外部との関係を切断していきー。ひとりの男が、死神のような女から無意識に引き出される、破滅への欲望。全選考委員が絶賛した圧倒的な筆力で、文学と人類に激震をもたらす、現代の「心中もの」登場!第51回文藝賞受賞作!
「本間は、作中で少年の死体が発見された今日この日まで、少年が死を選ぶなど、露ほども考えてはいなかった。」 大学院を目指すという名目のもと、亡き祖父の家で一人暮らしをしながら小説を書いている本間。ある日、その主人公であるモイパラシアが砂漠で死んだーー彼の意図しないところで。 原稿用紙の上に無造作に投げ出された少年の左腕。途方にくれながらも本間が、黒インクが血のように滴る左腕を原稿用紙に包み庭に埋めようとした時、そこから現れたのは少年が飼育していたトカゲの「アルタッド」だった……。 幻想的かつ圧倒的にリアルな手触りを持つシームレスな小説世界と、その独自の世界観を支える完成された文体、そして「書くこと」の根源に挑んだ蛮勇に選考委員が驚愕した「青春小説」の傑作誕生! 第51 回文藝賞受賞作。 【選考委員絶賛!】 「何故虚構なのか」という原点を描かんとする強度ゆえの真摯さ。期待の受賞。 ーー藤沢周氏 私はこれを圧倒的に推した。もう断然こういう小説が好きだ。アルタッドが出てくるところは何度読んでも楽しい。主人公が書く小説が主人公の生きる世界の完全に外側にある、それが非常に独特な感じをつくっているのも書き手としての大きな資質だ。こういう小説は前例がない。 ーー保坂和志氏 ときおり顔をのぞかせる、作者の意図せざる無邪気さがこの書き手の魅力。大きな可能性を開花させてほしい。 ーー星野智幸氏 すべての候補作品に登場する人間たちを差し置いて、アルタッドが一番キュートで魅力的。描写力のたまものだろう。 ーー山田詠美氏
エリナ・ダリーは縁あって裕福な実業家イニス・セントエーメと婚約し、車を駆ってハネムーンに出発した。ところが希望に溢れた旅路は、死んだ猫を抱えたヒッチハイカーとの遭遇を境に変容を余儀なくされる。幸福の青写真は引き裂かれ、婚約者と車を失ったエリナは命からがら逃げ惑う破目に。彼女を救ったリドル医師は、悪夢の一夜に起こった連続殺人の真相に迫ろうとするが…。
ヴェネチアで不思議な老姉妹に出会ったことに始まる夫婦の奇妙な体験、映画『赤い影』の原作「いま見てはいけない」、急病に倒れた牧師の代理でエルサレムへのツアーの引率役を務めることになった聖職者に次々と降りかかる出来事「十字架の道」など、日常を歪める不条理あり、意外な結末あり、天性の語り手である著者の才能が遺憾なく発揮された作品五篇を収める粒選りの短編集。