2014年12月発売
外国人青年、少女、老婦人、大家族…。空港の到着ロビーで行き交う人々の、人生の一瞬の重なりを鮮やかに掬い取った川端賞受賞の表題作。恋人に別れを告げられ、妻が眠る家に帰った男性の心の変化をこぼさず描く「寝室」。“僕らは幸福だ”“いいわ”-夫婦間の小さなささくれをそっと見つめた「ピクニック」。わたしたちが生きる上で抱え続ける、あたたかい孤独に満ちた、六つの旅路。川端康成文学賞受賞作。
唐、吐蕃、南詔の三国が支配を狙う雲南の国境地帯。この地を訪れた一行は、孤児を引き取って暮らす男女、宋格之と呉紫蘭に出会う。やがて大国の争いは激化し、子ども達に危機が迫る中、僕僕らは村に伝わる守り神「鋼人」の封印を解くため、湖底へと向かう。迫りくる軍勢。進まぬ国家間の和解。裏で糸を引く「胡蝶」。戦争前夜の狂騒を前に、王弁は何を思う?緊迫のシリーズ第六弾!
若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、生命の起源に迫る研究に打ち込んでいた。ある時、ついに彼は生命の創造という神をも恐れぬ行いに手を染める。だが、創り上げた“怪物”はあまりに恐ろしい容貌をしていた。故郷へ逃亡した彼は、醜さゆえの孤独にあえぎ、彼を憎んだ“怪物”に追い詰められることになろうとは知る由もなかったー。天才女性作家が遺した伝説の名著。
西田りかは、上司の柏木荘太に惹かれ、不倫関係になった。それを知った荘太の妻、美津子はりかに接近し、見合い話を持ちかける。相手に選んだのは一人娘の美羽が兄と慕い、家族ぐるみのつき合いをしている落合圭一だったが、思惑は一人歩きを始め、それぞれの思いは変化し、その先には予想もしない展開がー。愛憎、嫉妬、プライド。女たちの内面を艶やかにリアルに描く、傑作情愛群像。
吉原で開業する医師・光蘭。腕に遠島の刺青があることもあって、普通の患者は寄りつかない。専ら遊女の医者として生活している変わり者だ。奉行所の与力に頼みこまれて、吉原界隈で起きる事件の探索を気まぐれに手伝い、時には奉行所が裁けない悪を代わりに『捌く』。禿には優しいが、引き取った猫は餌をやっても懐かない。活殺自在な凄腕医師の人情診療譚。
傷つきながらも、師である雲斎のもとに帰り着いた大鳳。彼を追ってやってきた典善の前に、雲斎が立ちはだかる。一方、九十九はキマイラ制御の鍵「ソーマ」から薬を作る法を求め、高野山に向かっていた。そして、ついに身体をキマイラに乗っ取られた久鬼。もはや意志の力もソーマすらも利かなくなってしまった久鬼に、謎の僧・狂仏はキマイラを支配する法を教えるという。9番目の、月のチャクラとはいったいー!?
神田の町にはとある有名な伝説があった。自分が死ぬ直前、死神の幸吉が現れて、最後に会いたい人に会わせてくれるのだという。引き離された我が子にひと目会いたいと願うお夏のもとへ幸吉がやってきた。死神の使いを名乗る狸と猫の妖かしに連れられ、子供に会いに行ったお夏が思わず涙した理由とは…。語る事情は違えども、最後に募る想いの深さはみな同じ。妖かし迷コンビも大活躍、涙と人情のお江戸もののけ騒動記。
恋を覚えたばかりの美青年・魚住真澄は、クリスマス間近、病院でさちのという少女に出会う。重い病を抱え、耐えるように生きる彼女に、魚住は「おれのお母さんになって」と告げる。困惑しつつも、次第に魚住と打ち解けていくさちの。遊園地に行きたい彼女のため、魚住は久留米も誘って、煌めくような冬の一日を過ごすが…。魚住が初めて知る、胸が苦しくなるような幸福の時間。そして…。
鳥羽・伏見の戦いに敗れ、旧幕軍は窮地に立たされていた。しかし、徳川最強の軍艦=開陽丸の艦長・沢太郎左衛門と盟友・榎本武揚は薩長からの圧力に屈することなく北へ向う。それは新政府軍に抗戦を続ける奥羽越列藩同盟を救援するため。日本史上初の近代海戦、荒れ狂う北の海…。時代の大きなうねりを乗り越え、彼らは新しい時代を切り開くことができるのか?歴史小説の名手が海を舞台に明治維新を描き切った渾身の長編。
マドリードで盗まれたゴヤの名画。イギリスで捜査を担当する臨時主任警視のマートランドは、学友の画商チャーリー・モルデカイを訪ね手がかりを得る。ナショナル・ギャラリー、ターナー作品の裏に隠された一枚の写真。石油王クランプフのビンテージ・カーを、外交封印のもとにアメリカに運ぶ仕事を引き受けたモルデカイだが、マートランドに弱みを握られ汚れ仕事を押しつけられー。
画商チャーリー・モルデカイは、マドリードのプラド美術館からゴヤの名画をかっぱらい、アメリカ・ニューメキシコ州の石油王に配達した。やばい仕事で命を狙われモルデカイは這々の体で故郷のイングランドに戻り鉱山の洞窟に身を潜めた。アメリカ大使館のブルーチャー大佐は、モルデカイを助ける代わりに、捜査対象と結婚し金の流れを突き止めてほしいという。夫となったモルデカイは、今度は妻から暗殺の依頼を受けー。
東京の有楽町と間違えて、おばけの町ー幽落町に引っ越した僕・御城彼方。生身の人間なのに“あの世”と“この世”の中間の不安定な存在として、この町で1年間暮らさなければならなくなった僕は、大家さんでもある龍の化身の水脈さんに助けられながら、毎日を過ごしていた。そして今日も、水脈さんの営む駄菓子屋“水無月堂”には、悩みを抱えた“人ならざる者”が救いを求めてやって来る…。
八雲は高校時代の同級生の妹の生霊を目撃する。集中治療室に入っている彼女の思念は「深い森」と八雲に訴えた。その頃、遊び半分で樹海に侵入した大学生が死体を発見、幽霊から電話がかかってくるようになる。警察を懲戒免職となり、心霊専門の探偵を始めた後藤は、霊からの電話を受けて、とり憑かれてしまう。樹海では両眼の赤い男の目撃情報もあり、何者かの罠と思われたが…。シリーズ最高のクライマックスが迫る!
身勝手な藩主と家老らにより、崩壊の危機にある河遠藩。貧困と悪政にあえぐ故郷の惨状を聞いた元藩士・小早川彦蔵は、藩の立て直しに奔走した亡き父の遺志を継ごうと決意した。帰郷し、藩の重要人物の暗殺計画を知った彦蔵は、皮肉なことに己の両親を斬殺した藩を救うため、剣を振るうこととなる。数奇な運命に立ち向かいながら人生を歩んだ彦蔵。彼が集大成とした絵に描かれていたものはー。大人気シリーズ、堂々完結!
東京都内の公園で臓器をすべてくり抜かれた若い女性の死体が発見された。やがてテレビ局に“ジャック”と名乗る犯人から声明文が送りつけられる。その直後、今度は川越で会社帰りのOLが同じ手口で殺害された。被害者2人に接点は見当たらない。怨恨か、無差別殺人か。捜査一課のエース犬養刑事が捜査を進めると、被害者の共通点としてある人物の名前が浮上したー。ジャックと警察の息もつかせぬ熾烈な攻防がはじまる!
天正10年、甲斐の武田氏を滅ぼし天下統一に王手をかけた織田信長は、正親町帝に大坂遷都を迫った。このまま信長の躍進が続けば、朝廷はどうなることかー不安と忍耐が限界に達した帝は、ついに重大な勅命を下す…。本能寺の変まで、残り38日。日本史上最大の謎を、明智光秀をはじめ、近衛前久、吉田兼和、里村紹巴、徳川家康ら、信長を取り巻く男達の心理戦から炙り出す、著者渾身の歴史巨編。
永倉萌絵が転職した亀石発掘派遣事務所には、ひとりの天才がいた。西原無量、21歳。笑う鬼の顔に似た熱傷痕のある右手“鬼の手”を持ち、次々と国宝級の遺物を掘り当てる、若き発掘師だ。大学の発掘チームに請われ、萌絵を伴い奈良の上秦古墳へ赴いた無量は、緑色琥珀“蓬莱の海翡翠”を発見。これを機に幼なじみの文化庁職員・相良忍とも再会する。ところが時を同じくして、現場責任者だった三村教授が何者かに殺害され…。
かつて一刀流道場の四天王と謳われた勘定方の瓜生新兵衛は、上役の不正を訴え藩を追われた。18年後、妻・篠と死に別れて帰藩した新兵衛が目の当たりにしたのは、藩主代替わりに伴う側用人と家老の対立と藩内に隠された秘密だった。散る椿は、残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるものーたとえこの世を去ろうとも、ひとの想いは深く生き続ける。秘めた想いを胸に、誠実に生きようと葛藤する人々を描いた感動長編!
国際色豊かな唐帝国の全盛期、玄宗皇帝の時代。遊牧民族の小競り合いが絶えない辺境の地で、ソグド人の父と突厥の母をもつロクシャンこと安禄山は謎の日本人・井真成と出会った。商才を磨きながら武人としての出世を重ねた安禄山は、豊かな経済力を背景に、ついに中央で皇帝と楊貴妃の寵臣に上りつめる。しかしそれは、飽くなき権力闘争の幕開けに過ぎなかったー。唐帝国を揺るがした男の生涯を描く、長編中国歴史小説。