2014年12月発売
買収攻勢にさらされた女性用のシェルターを守るため、チェイスは買い手の“AMホールディングス”に赴いた。そこへ現れたのは、若き経営者アレッサンドロ・モレッティ。かつてチェイスが愛し、清い関係のまま別れた相手だった。8年前のあの日、自分には夫がいると告げ、真実を隠したまま、チェイスはアレッサンドロの前から姿を消したのだった。もう私のことなど覚えていないはず…そう思っていたのに、彼はいまだくすぶる、当時の恨みを忘れていないようだった。この好機を逃すものかとでも言うように、アレッサンドロは言った。「僕と寝れば、シェルターは存続させてやってもいい」と。
弟の学費を工面できずに苦悩していたオードリーは、仕事の休憩中に上級秘書たちの会話を偶然耳にして唖然とした。若くして巨万の富を築き上げたヴィンチェンツォ・トマジーエキゾチックな黒髪、地中海のように美しい青色の瞳、そして映画スターのように見事な体躯を持つ完全無欠のCEOが、義理の子供のため、母親役を務める女性を雇おうとしているなんて。ずっと秘かに憧れていた彼の元で、幼い子供たちの世話をする…それで弟が進学できるのなら、もう私が欲しいものなど何もないわ。ところが面接に臨んだオードリーに、ヴィンチェンツォは言った。「母親だけじゃない。僕の妻を演じるのも仕事だー昼夜を問わずね」
一族同士は憎み合っていても、アレッシア・バッタグリアは、マッテオ・コレッティをずっと恋い焦がれていた。そんなアレッシアに、両家和解のための結婚が命じられる。相手はよりにもよって、マッテオの従兄弟アレッサンドロ。アレッシアはたまらず、ある決意を胸に、マッテオを訪ねた。そして結婚式当日ーアレッシアは祭壇から逃げ出した。マッテオに追ってきてほしいという、一縷の望みにすがって。あの夜、想いを打ち明けた私を、マッテオは情熱的に愛してくれた。きっと彼は来てくれる…。そう願ったが、マッテオは現れない。呆然と立ち尽くすアレッシアを、ふいに、奇妙な吐き気が襲った。
出張先のホテルで予約に手違いがあり困っていたルースは、ホテルの経営者で大学時代の同級生、ベンと偶然再会した。ルームメイトの恋人だった彼の変わらぬ姿に、ルースは胸騒ぎを覚えた。8年前、ルームメイトに連れられ、ベンの誕生パーティに出席したが、ホテル王の子息である彼を取り囲む人々はみな派手好きで、居場所のないルースは独り図書室へ逃げこんでやり過ごそうとしていた。そこへベンが現れ、パーティが苦手な彼女に同調したかと思いきや、突然唇を奪ったのだ。お堅くてつまらない私に、なぜキスなんて?しかも彼は友達の恋人…。粋酔なルースは驚きと怖さで逃げ出したのだ。それっきりだったベンと、今夜、彼の豪華ホテルで同室になるとは!
護衛隊長の父とともに宮殿で暮らし始めた12歳のときから、アビーはヴィンチェンツォ皇太子を兄のように慕い、憧れていた。けれど身分の違いは明らかで、彼はやがて近隣国の王女と結婚し、彼女は良き友人として密かな恋心を封印した。やがて28歳になり、アビーは胸に大きな秘密と不安と喜びを抱えていた。子宝に恵まれぬ皇太子夫妻の代理母として、彼の子を身ごもっているのだ。不幸にも、皇太子妃は先日、不慮の事故で亡くなってしまったが。ヴィンチェンツォを励ますためにも、元気な赤ちゃんを産まなければ!しかし、アビーが官殿にいられるのは出産までという契約。愛する皇太子との別れが、刻一刻と近づいていた…。
シングルマザーだった母の苦労を身近で見てきたリラの望みは、自分を大事にしてくれる夫と、長く続く幸せな結婚生活を送ること。しかしリラには忘れられない人がいた。2年前に出会い心奪われたゼイン。セクシーな彼は有名なプレイボーイで、理想の夫とはかけ離れている。けれどあのとき、情熱を交わす一歩手前で彼の秘書が現れなければ、母と同じ道をたどっていたかもしれない。もうゼインのことは忘れるのよ。そう誓った矢先、リラはゼインの兄の恋愛スキャンダルに巻き込まれてしまう。マスコミに追われるリラを、フラッシュと質問の嵐から助け出したのはゼインだった。「リラ、ぼくと来るんだ」そしてリラが連れていかれた先は、なんと彼のスイートルームで…?!
グレースは大企業のCFOブレイクの屋敷で赤ん坊の世話をしている。実はその赤ん坊は、従姉の忘れ形見。ブレイクと従姉は短い間恋人同士だった。わけあってグレースは親族と名乗れずにナニーをつとめていたが、二人の関係を彼に知られてしまい、嘘をついていたことを問い質される。けれど、言えなかった。言えば彼を危険に晒すことになるから。グレースは悩んだ末、赤ん坊を慈しんで育ててほしいとだけ言い残し、悲しみに張り裂けそうな胸の内を隠して屋敷を去った。2週間後、彼女の家にブレイクが現れた。まさか赤ちゃんの身に…?「今日は君に提案があって来た」続く彼の言葉にグレースは絶句した。私をナニーではなく“妻”として屋敷に迎えたいですって?
猛吹雪の中、メリッサは名士カーク家の邸宅を訪れた。全身ずぶ濡れになりながらもここへ来たのには訳があった。カーク家の三男ドルトンの身に危険が迫っていると感じ、そのことを本人に一刻も早く伝えたかったのだ。私の一家は地元の人々から白い目で見られてきたけれど、ドルトンだけは何かと親切にしてくれた…。幼少期のトラウマのせいで男性を恐れるメリッサだったが、知らず知らずのうちに彼への想いが静かに育っていたのだ。だが、警告を聞くや彼は鬼の形相になり、怯える彼女をなじった。「なぜ、そのことを知っている!誰から聞いたんだ!」
ただいま!なつかしいわたしの家、そして、大好きな兄さん…。ロンドンのハイスクールを卒業したわたしは由緒ある美しい屋敷クイーンズ・ダウアーに帰ってきた。兄さんと住むこの家こそ、わたしの愛のお城。幼いころからひとすじに慕いつづけてきた兄さん。でも、ひそかな想いが大人の愛に育っていることに、決して気づいてくれないんだわ。だって、ずっとずっと年上の大人の兄さんにとって、わたしはいまも、小さな妹にすぎないんですもの…。
幼稚園で働くアニーは、素行の悪い弟に手を焼いていた。そんなアニーのもとに、弟の勤め先の社長で、“全米で最も冷酷な経営者”と悪名高いダンカンが訪れる。彼はアニーの弟が会社の金を横領したと告げ、彼女に金を肩代わりするだけの経済力がないと知ると、罪を見逃す代わりに、ある取り引きを持ちかけてきた。冷徹すぎるという、社会的に不利な汚名を返上するため、クリスマスまでの1カ月、愛情深い恋人役を演じてほしいというのだ。もし引き受けなければ家を担保にもらい、弟は刑務所に入れるーそう脅されては、もはやアニーに選択の余地などあるはずがなかった。
アマルフィ海岸で突進してきた高級車にはねられそうになり、サブリナは崖から落ちて脚に怪我を負ってしまう。車を運転していたのは、イタリア公爵マルコ・カルヴェッティ。医師でもあるという彼は、歩くのもままならないサブリナを気遣い、怪我がよくなるまで自分の別荘に泊まるよう告げた。マルコの魅力と唐突な招待に戸惑うサブリナだったが、豪奢な屋敷に足を踏み入れると、奇妙なことに気づいた。別荘の使用人を始め、会う人がみな揃いも揃って、まるで幽霊でも見たかのように驚いた顔で彼女を見るのだ。サブリナがマルコの亡き妻に生き写しであることなど、彼女は知る由もない。ましてや、これがつらい恋の始まりだとは。
旅する修行僧が、飛騨の奥深い山中で出会った艶かしい婦人との、奇妙な怖い体験を語る(『高野聖』)。男に裏切られた婦人の、執念の恐ろしさを描く(『黒壁』)。幻想文学のパイオニア泉鏡花の怖い話。詳しい解説がついています。
中高一貫の美心国際学園(BIS)の高等部へ編入した、SF小説が大好きな15歳の少女・伏木空は、SFに理解のない同級生・埋火武人に誘われ、ビブリオバトル部に入部、個性的な五人の仲間と活動を始めるが…。「彼にSFを好きと言わせたい!」日本初の本格的ビブリオバトル青春小説。
ハンネ・ヴィルヘルムセン、オスロ市警の腕利き女性犯罪捜査官。クリスマス休暇直前の真夜中近く、緊急の呼び出しを受ける。マンションで四人の他殺死体が発見されたというのだ。被害者は海運会社の社長とその妻、長男、そして身元不明の男。相続がらみの事件?だがハンネは、四人目の被害者のことが気になっていた。伝説の女性捜査官が事件を追う、ノルウェーの人気警察小説。
不可能犯罪ばかりが起こる街、蝦蟇倉市。賑やかな商店街や老婦人が営む和菓子屋があり、いわくつきの崖や海を望むホテルがあるこの街は、一見のどかなようで、どこかおかしい。蝦蟇倉警察署には“不可能犯罪係”が存在し、スーパーの駐車場では怪しい相談屋が事務所を開いている。この街の日常は、いつも謎に彩られている。第一線で活躍する作家たちによる、不思議な街の道案内。
ここ蝦蟇倉市では、不可能犯罪がよく起こる。廃墟や神社に死体を隠す少女、互いに秘密を抱えたまま無人の球場で会話する高校生、そして事件を追って街を訪れるルポライター。高台にあるレストランで、古書マニアが住むアパートの一室で、森の中の美術館でー。この街で起こる事件は、仕掛けと遊び心に満ちている。架空の都市を舞台に同世代の人気作家が競演する「街」の物語。
南綾子、32歳。売れないエロ作家。彼氏ナシ。自分をヤリ逃げしたサイテー男の幽霊を「婚活アドバイザー」にして、本気で婚活することに。講師だけがイケメンのお料理合コン、場末感漂う30・40代限定お見合いパーティー、そして、最終手段の婚活サイトー婚活ズレしてしまった崖っぷち女の魂の叫びが炸裂する、スポ根恋愛小説。
東日本大震災で露わになった家族の実像。乳飲み子を抱える遠乃は舅と義兄と、夫と離婚できずにいた福子は命を助けた少年と、息子と母の三人暮らしだった出戻りの渚はひとり避難所へむかった。段ボールの仕切りすらない体育館で、「絆」を強要される三人の妻たち。真の「再生」を問う問題作。