2014年12月発売
猛吹雪の中、メリッサは名士カーク家の邸宅を訪れた。全身ずぶ濡れになりながらもここへ来たのには訳があった。カーク家の三男ドルトンの身に危険が迫っていると感じ、そのことを本人に一刻も早く伝えたかったのだ。私の一家は地元の人々から白い目で見られてきたけれど、ドルトンだけは何かと親切にしてくれた…。幼少期のトラウマのせいで男性を恐れるメリッサだったが、知らず知らずのうちに彼への想いが静かに育っていたのだ。だが、警告を聞くや彼は鬼の形相になり、怯える彼女をなじった。「なぜ、そのことを知っている!誰から聞いたんだ!」
ただいま!なつかしいわたしの家、そして、大好きな兄さん…。ロンドンのハイスクールを卒業したわたしは由緒ある美しい屋敷クイーンズ・ダウアーに帰ってきた。兄さんと住むこの家こそ、わたしの愛のお城。幼いころからひとすじに慕いつづけてきた兄さん。でも、ひそかな想いが大人の愛に育っていることに、決して気づいてくれないんだわ。だって、ずっとずっと年上の大人の兄さんにとって、わたしはいまも、小さな妹にすぎないんですもの…。
幼稚園で働くアニーは、素行の悪い弟に手を焼いていた。そんなアニーのもとに、弟の勤め先の社長で、“全米で最も冷酷な経営者”と悪名高いダンカンが訪れる。彼はアニーの弟が会社の金を横領したと告げ、彼女に金を肩代わりするだけの経済力がないと知ると、罪を見逃す代わりに、ある取り引きを持ちかけてきた。冷徹すぎるという、社会的に不利な汚名を返上するため、クリスマスまでの1カ月、愛情深い恋人役を演じてほしいというのだ。もし引き受けなければ家を担保にもらい、弟は刑務所に入れるーそう脅されては、もはやアニーに選択の余地などあるはずがなかった。
アマルフィ海岸で突進してきた高級車にはねられそうになり、サブリナは崖から落ちて脚に怪我を負ってしまう。車を運転していたのは、イタリア公爵マルコ・カルヴェッティ。医師でもあるという彼は、歩くのもままならないサブリナを気遣い、怪我がよくなるまで自分の別荘に泊まるよう告げた。マルコの魅力と唐突な招待に戸惑うサブリナだったが、豪奢な屋敷に足を踏み入れると、奇妙なことに気づいた。別荘の使用人を始め、会う人がみな揃いも揃って、まるで幽霊でも見たかのように驚いた顔で彼女を見るのだ。サブリナがマルコの亡き妻に生き写しであることなど、彼女は知る由もない。ましてや、これがつらい恋の始まりだとは。
旅する修行僧が、飛騨の奥深い山中で出会った艶かしい婦人との、奇妙な怖い体験を語る(『高野聖』)。男に裏切られた婦人の、執念の恐ろしさを描く(『黒壁』)。幻想文学のパイオニア泉鏡花の怖い話。詳しい解説がついています。
中高一貫の美心国際学園(BIS)の高等部へ編入した、SF小説が大好きな15歳の少女・伏木空は、SFに理解のない同級生・埋火武人に誘われ、ビブリオバトル部に入部、個性的な五人の仲間と活動を始めるが…。「彼にSFを好きと言わせたい!」日本初の本格的ビブリオバトル青春小説。
ハンネ・ヴィルヘルムセン、オスロ市警の腕利き女性犯罪捜査官。クリスマス休暇直前の真夜中近く、緊急の呼び出しを受ける。マンションで四人の他殺死体が発見されたというのだ。被害者は海運会社の社長とその妻、長男、そして身元不明の男。相続がらみの事件?だがハンネは、四人目の被害者のことが気になっていた。伝説の女性捜査官が事件を追う、ノルウェーの人気警察小説。
不可能犯罪ばかりが起こる街、蝦蟇倉市。賑やかな商店街や老婦人が営む和菓子屋があり、いわくつきの崖や海を望むホテルがあるこの街は、一見のどかなようで、どこかおかしい。蝦蟇倉警察署には“不可能犯罪係”が存在し、スーパーの駐車場では怪しい相談屋が事務所を開いている。この街の日常は、いつも謎に彩られている。第一線で活躍する作家たちによる、不思議な街の道案内。
ここ蝦蟇倉市では、不可能犯罪がよく起こる。廃墟や神社に死体を隠す少女、互いに秘密を抱えたまま無人の球場で会話する高校生、そして事件を追って街を訪れるルポライター。高台にあるレストランで、古書マニアが住むアパートの一室で、森の中の美術館でー。この街で起こる事件は、仕掛けと遊び心に満ちている。架空の都市を舞台に同世代の人気作家が競演する「街」の物語。
南綾子、32歳。売れないエロ作家。彼氏ナシ。自分をヤリ逃げしたサイテー男の幽霊を「婚活アドバイザー」にして、本気で婚活することに。講師だけがイケメンのお料理合コン、場末感漂う30・40代限定お見合いパーティー、そして、最終手段の婚活サイトー婚活ズレしてしまった崖っぷち女の魂の叫びが炸裂する、スポ根恋愛小説。
東日本大震災で露わになった家族の実像。乳飲み子を抱える遠乃は舅と義兄と、夫と離婚できずにいた福子は命を助けた少年と、息子と母の三人暮らしだった出戻りの渚はひとり避難所へむかった。段ボールの仕切りすらない体育館で、「絆」を強要される三人の妻たち。真の「再生」を問う問題作。
この傷痕にかけて、俺が一生護る。あの夜、誓いを立てた幼なじみは、時を経て謎多き美女へと羽化して現われた。特捜部検事となった淳平と、疑惑の政治家の私設秘書を務める優衣。追い追われる立場に置かれつつも、愛欲に溺れゆくふたり。だがある日を境に、淳平に暗い疑念が膨らんでいく。優衣、おまえは本当は誰なんだ?阪神淡路大震災と東日本大震災。ふたつの悲劇に翻弄された孤児の命運を描く、究極の恋愛サスペンス!
「短篇の巨匠」マンローが怖いほどリアルに描く人の営み。円熟期を代表する金字塔的作品集。ジラー賞受賞“カナダ最大の文学賞”。全米批評家協会賞受賞。O・ヘンリー賞受賞(表題作)。2013年ノーベル文学賞受賞。
凍える夜は、あなたの吐息で暖めてー電子書籍の人気作家5人が「白」をテーマに贈る冬の恋物語。初めてのデートの夜に降った雪。立ち上る珈琲の湯気。純白のレースに縁取られた下着。彼が作ってくれた雪見鍋…。忙しい毎日に疲れた心と身体をとろかす、豪華なLOVEアソート!
その街は、どぶ川の西側にあった。七棟の長屋と朽ちかかった物置のような家が五軒、あぶなっかしく建っている。「電車ばか」の六ちゃんは自分だけの市電を街へ走らせ、日雇い稼ぎの増田さんと河口さんは、ある日突然、妻が入れ替わり、右翼の寒藤先生は資金調達に余念がない…。あけすけで小意地は悪いがお人好しの、愛すべき人びと、吹き溜まりに塵芥が集まるようにしてできた街ー。そこで巻き起こる悲喜劇と、したたかに生きぬく人びとの姿を、限りない愛着と共感を込めて描く名作!
時は、明治元年暮。火の手の迫る伝馬町牢屋敷から解き放ちとなった訳ありの重罪人たちー博奕打ちの信州無宿繁松、旗本の倅岩瀬七之丞、夜鷹の元締め白魚のお仙。牢屋同心の「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者も死罪、三人とも戻れば全員が無罪」との言葉を胸に、自由の身となった三人の向う先には…。幕末から明治へ、激動の時代をいかに生きるかを描いた、傑作時代長編。
終戦の日の朝、19歳のぼくは東京から故郷・広島へ向かう。通信兵としての任務は戦場の過酷さからは程遠く、故郷の悲劇からも断絶され、ただ虚しく時代に流されて生きるばかりだった。淡々と、だがありありと「あの戦争」が蘇る。広島出身の著者が挑んだ入魂の物語。