2014年12月発売
梶真琴が、喫茶店で耳にした不可解な会話。それは、保険外交員風の男が老婦人に契約書のサインを求めている光景だった。男は、死んだことに気づかぬ人間を説得する「死神」だと宣う。漫画家志望で引きこもりの梶は、なかば強引に死神業を手伝わされることに。最期を迎えた人々を問答無用であの世へ送る、空前絶後、死神お仕事小説!
西暦2803年、メニー・メニー・シープから光は失われ、邪悪なる“咀嚼者”の侵入により平和は潰えた。絶望のうちに傷ついたカドムは、イサリ、ラゴスらとともに遙かな地へと旅立つ。いっぽう新民主政府大統領となったエランカは、メニー・メニー・シープ再興に向けた苛酷な道へと踏み出していく。そして瀕死の重傷を負ったアクリラは、予想もせぬカヨとの再会を果たすがーふたたび物語が動き始めるシリーズ第8巻後篇。
ケイロニア王グインの愛妾ヴァルーサ。おそるべき魔道師たちがケイロニアの都サイロンを恐怖に陥れた『七人の魔道師』事件の際、彼女はグインと出会った。王と行動をともにした“まじない小路”の踊り子が、のちに豹頭王の子を身ごもるに至る、その数奇なる生い立ち、そして波瀾に満ちた運命とは?「グイン・サーガ トリビュート・コンテスト」出身の新鋭が、グイン・サーガへの想いを熱く描きあげた、奇跡なす物語。
一九三〇年代、アメリカ中西部の広大な農地は厳しい日照りと砂嵐に見舞われた。作物は甚大な被害を受け、折からの大恐慌に疲弊していた多くの農民たちが、土地を失い貧しい流浪の民となった。オクラホマの小作農ジョード一家もまた、新天地カリフォルニアをめざし改造トラックに家財をつめこんで旅の途につくー苛烈な運命を逞しく生きぬく人びとの姿を描き米文学史上に力強く輝く、ノーベル賞作家の代表作、完全新訳版。
祖先が開拓した故郷の土地を捨て苦難と困窮の旅のすえ、約束の地カリフォルニアへとたどり着いたジョード一家。そこで迎えたのは、美しく豊かな果樹園や綿畑と、敵意にさらされながら低賃金のわずかな仕事を奪いあう過酷な日々だった…。歴史の荒波のなかで資本主義に翻弄される人びとの苦境を浮き彫りにし、時代を越えてなお世界じゅうで衰えぬ評価を受けつづける不朽の名作。ピュリッツァー賞受賞。映画化原作。
最新型特殊装備“龍機兵”を擁する警視庁特捜部は、警察内部の偏見に抗いつつ国際情勢のボーダーレス化に連れて変容する犯罪に日夜立ち向かうー由起谷主任が死の床にある元上司の秘密に迫る表題作、特捜部入りする前のライザの彷徨を描く「済度」、疑獄事件捜査の末に鈴石主任が悪夢の未来を幻視する「化生」など、吉川英治文学新人賞&日本SF大賞受賞の“至近未来”警察小説、珠玉の傑作短篇集。
世界最高のインターネット・カンパニー、サークル。広くて明るいキャンパス、一流のシェフを揃えた無料のカフェテリア、熱意ある社員たちが生み出す新技術ーそこにないものはない。どんなことも可能だ。故郷での退屈な仕事を辞めてサークルに転職した二十四歳のメイは、才気あふれる同僚たちに囲まれて幸せな会社生活を送りはじめる。しかし、サークルで推奨されるソーシャルメディアでの活発な交流は、次第にメイの重荷になっていき…。人間とインターネットの未来を予見して世界を戦慄させた、笑いと恐ろしさに満ちた傑作小説。
5歳のエイミーはフォン・ノイマン式自己複製ヒューマノイド「vN」の子ども。vNの母親の「複成」で、人間の父親と3人で暮らしている。しかし、彼女の日常は、卒園式の日に現れたvNの「お祖母ちゃん」、ポーシャの襲撃で一変した。エイミーが母親を助けようと、ポーシャに噛みついて呑み込んだ途端、彼女の身体は急成長し、大人になったのだ…。実はエイミーたちは、vNなら必ず備わっているはずの人間を傷つけないための安全機構が壊れていた。危険なvNとして、あるいは人間の支配からvNを解き放つ鍵として、エイミーは追われることになるが…。波乱万丈のジェットコースターSF。
乙霧村という小さな村で一家五人を惨殺し、犯人も斧で頭を割られて絶命するという凄惨な事件が起こった。事件から二十二年後ー大学教授であり『乙霧村の惨劇』の著者でもある泉蓮が顧問を務める、文学サークルの大学生六人が村を訪れた。そこに斧を持った正体不明の男が現れた!戦慄の長編ミステリー。
何者でもないがゆえに、逆に、人間の生の全体と深く係わる。『特性のない男』で知られるムージルは、他者性、あるいは一回しか存在しないものをどのように表現しようとしたのか。また、イメージや比喩の扱いをとおして、非言語的なものを言語によってどのように語ろうとしたか。ムージル文学の奥行に深く分け入り、その創作方法と小説世界を明らかにする。
『閨房哲学』は、18世紀以前の思想や同時代の啓蒙思想が入り込み、豊饒なテクストが形成されている。サドの哲学が性と見事に結びついたリベルタン文学の集大成であり、とりわけ途中挿入された「フランス人よ、共和主義者になりたければあと一息だ」は有名だ。これまでにも翻訳がみられるが、本書は18世紀初版本の当時のテクストを忠実に再現し、最新の研究成果をともなった詳細な注と解説を付す決定版といえる。
シドニーの心と体には、何かおかしなことが起こっていた。隣に座ったアレクシオが、あまりにハンサムで、すてきすぎたからだ。今、自分が利用している航空会社の経営者がどうしてここに?しかも、もっと信じられないのは、彼から夕食に誘われたことだ。世界じゅうの美女が結婚したくて追いかけるような男性が、なぜ野暮ったい格好をして、眼鏡までかけている私を?夜明けがきたら、さっさと捨てられるに決まっているわ。待って。食事に誘われただけで、なぜそれ以上のことを想像しているの?アレクシオがシドニーの体に視線をやり、セクシーな笑みを浮かべる。その表情は、ディナー以外の目的があると雄弁に物語っていた…。
買収攻勢にさらされた女性用のシェルターを守るため、チェイスは買い手の“AMホールディングス”に赴いた。そこへ現れたのは、若き経営者アレッサンドロ・モレッティ。かつてチェイスが愛し、清い関係のまま別れた相手だった。8年前のあの日、自分には夫がいると告げ、真実を隠したまま、チェイスはアレッサンドロの前から姿を消したのだった。もう私のことなど覚えていないはず…そう思っていたのに、彼はいまだくすぶる、当時の恨みを忘れていないようだった。この好機を逃すものかとでも言うように、アレッサンドロは言った。「僕と寝れば、シェルターは存続させてやってもいい」と。
弟の学費を工面できずに苦悩していたオードリーは、仕事の休憩中に上級秘書たちの会話を偶然耳にして唖然とした。若くして巨万の富を築き上げたヴィンチェンツォ・トマジーエキゾチックな黒髪、地中海のように美しい青色の瞳、そして映画スターのように見事な体躯を持つ完全無欠のCEOが、義理の子供のため、母親役を務める女性を雇おうとしているなんて。ずっと秘かに憧れていた彼の元で、幼い子供たちの世話をする…それで弟が進学できるのなら、もう私が欲しいものなど何もないわ。ところが面接に臨んだオードリーに、ヴィンチェンツォは言った。「母親だけじゃない。僕の妻を演じるのも仕事だー昼夜を問わずね」
一族同士は憎み合っていても、アレッシア・バッタグリアは、マッテオ・コレッティをずっと恋い焦がれていた。そんなアレッシアに、両家和解のための結婚が命じられる。相手はよりにもよって、マッテオの従兄弟アレッサンドロ。アレッシアはたまらず、ある決意を胸に、マッテオを訪ねた。そして結婚式当日ーアレッシアは祭壇から逃げ出した。マッテオに追ってきてほしいという、一縷の望みにすがって。あの夜、想いを打ち明けた私を、マッテオは情熱的に愛してくれた。きっと彼は来てくれる…。そう願ったが、マッテオは現れない。呆然と立ち尽くすアレッシアを、ふいに、奇妙な吐き気が襲った。
出張先のホテルで予約に手違いがあり困っていたルースは、ホテルの経営者で大学時代の同級生、ベンと偶然再会した。ルームメイトの恋人だった彼の変わらぬ姿に、ルースは胸騒ぎを覚えた。8年前、ルームメイトに連れられ、ベンの誕生パーティに出席したが、ホテル王の子息である彼を取り囲む人々はみな派手好きで、居場所のないルースは独り図書室へ逃げこんでやり過ごそうとしていた。そこへベンが現れ、パーティが苦手な彼女に同調したかと思いきや、突然唇を奪ったのだ。お堅くてつまらない私に、なぜキスなんて?しかも彼は友達の恋人…。粋酔なルースは驚きと怖さで逃げ出したのだ。それっきりだったベンと、今夜、彼の豪華ホテルで同室になるとは!
護衛隊長の父とともに宮殿で暮らし始めた12歳のときから、アビーはヴィンチェンツォ皇太子を兄のように慕い、憧れていた。けれど身分の違いは明らかで、彼はやがて近隣国の王女と結婚し、彼女は良き友人として密かな恋心を封印した。やがて28歳になり、アビーは胸に大きな秘密と不安と喜びを抱えていた。子宝に恵まれぬ皇太子夫妻の代理母として、彼の子を身ごもっているのだ。不幸にも、皇太子妃は先日、不慮の事故で亡くなってしまったが。ヴィンチェンツォを励ますためにも、元気な赤ちゃんを産まなければ!しかし、アビーが官殿にいられるのは出産までという契約。愛する皇太子との別れが、刻一刻と近づいていた…。
シングルマザーだった母の苦労を身近で見てきたリラの望みは、自分を大事にしてくれる夫と、長く続く幸せな結婚生活を送ること。しかしリラには忘れられない人がいた。2年前に出会い心奪われたゼイン。セクシーな彼は有名なプレイボーイで、理想の夫とはかけ離れている。けれどあのとき、情熱を交わす一歩手前で彼の秘書が現れなければ、母と同じ道をたどっていたかもしれない。もうゼインのことは忘れるのよ。そう誓った矢先、リラはゼインの兄の恋愛スキャンダルに巻き込まれてしまう。マスコミに追われるリラを、フラッシュと質問の嵐から助け出したのはゼインだった。「リラ、ぼくと来るんだ」そしてリラが連れていかれた先は、なんと彼のスイートルームで…?!
グレースは大企業のCFOブレイクの屋敷で赤ん坊の世話をしている。実はその赤ん坊は、従姉の忘れ形見。ブレイクと従姉は短い間恋人同士だった。わけあってグレースは親族と名乗れずにナニーをつとめていたが、二人の関係を彼に知られてしまい、嘘をついていたことを問い質される。けれど、言えなかった。言えば彼を危険に晒すことになるから。グレースは悩んだ末、赤ん坊を慈しんで育ててほしいとだけ言い残し、悲しみに張り裂けそうな胸の内を隠して屋敷を去った。2週間後、彼女の家にブレイクが現れた。まさか赤ちゃんの身に…?「今日は君に提案があって来た」続く彼の言葉にグレースは絶句した。私をナニーではなく“妻”として屋敷に迎えたいですって?