2014年12月発売
恋人に裏切られたロミリーはロンドンを離れ、兄を頼ってスコットランド高地へやってきた。湖畔に立つ兄夫婦の屋敷が、きょうから私の家…。森や湖の美しい眺めが、傷ついた心を慰めてくれた。そんなある日、ロミリーは山頂にそびえる古城の持ち主で、魅力的な年上男性ジェームズ・ゴードンと出会う。兄はジェームズの話を聞くだけで顔をこわばらせたが、その理由はロミリーには見当もつかなかった。だがやがて恐ろしい事実が明らかになる。なんと兄の妻が、かつてジェームズと不倫関係にあったというのだ。既にジェームズを愛していたロミリーは、絶望するが…。
リサは18歳。病気で倒れた父の負債を肩代わりしてもらうため、愛してもいない富豪ジャレットとの結婚を受け入れた。5年間、彼の幼い娘の面倒をみるという条件付きで。本当の意味で妻になることは要求しない、と言いながら、男と女が一緒に暮らすのだから当然だろうとばかりに、ジャレットは若いリサの身体を要求した。強引で執拗な愛の行為に翻弄されながらも、リサはその甘さにめざめ、どうしようもなく夫に惹かれていく。「愛情は二の次だ。これは欲望の処理にすぎない」平然と言い放つ夫の心に、愛などないと知りながら…。
私の夫であったあなたは、いったい何者だったのですか?老作家・藤田杉のもとにある日届いた訃報ー。それは青春の日々を共にし、十五年のあいだは夫であった畑中辰彦のものだった。尊敬し信頼もしていた辰彦が後に杉を苦しめ、「ぼんくら」「明るい詐欺師」と呼ばれたのは、いったいなぜだったのか?遠い記憶の中に、杉は辰彦のほんとうの姿を探し始めた…。「戦いすんで日が暮れて」から四十五年、佐藤愛子が人生のすべてを懸けて描く鎮魂歌。
大手文具メーカー「あねちけ」に勤める富岡兼吾(33歳)は、普段から自分に厳しい昭和的体育会系上司・下永に不満を持っていた。ある日、酒に酔った下永を家まで送った兼吾は、下永の妻・秀子と出会い、復讐のためのある企みを思いつくーこれは官能小説ではない…純愛小説である。
夫の浮気がきっかけで、専業主婦から金欠バツイチになった49歳のミナミ。ある日ミナミは、おしかくさまという“お金の神様”を信じる女たちと出会う。ATMのお社にお参りし、「無紋のおふだ」を財布に入れて、小金を増やす女たち。やがてミナミは、教祖に会うべく、上野動物園に向かうが!?現代日本のお金信仰を問う文藝賞受賞作。
脱線、飛躍、妄想、停滞、誤読、のろのろと、そしてぐずぐずとー決めたことは「なかなか読み出さない」「できるだけ長い間読み続ける」のふたつ。横光利一の名作短編「機械」を11年かけて読んでみた。読書の楽しみはこんな端っこのところにある。本を愛する全ての人に捧げる第21回伊藤整文学賞評論部門受賞作の名作。
金色の小鳥が舞い、夏芙蓉の花が咲き乱れる紀州・新宮の路地。歌舞音曲に現を抜かし若死にするという七代にわたり仏の因果を背負った、淫蕩の血に澱む一統・中本。「闘いの性」に生まれついた極道タイチの短く苛烈な生涯が、老産婆オリュウノオバ、アル中のトモノオジにより幻惑的に語られる。人間の生と死、その罪と罰を問うた崇高な世界文学。
はたちになろうとしていた、あの頃…兵役あがりのルイと歌手志望のオディールは、パリのサン・ラザール駅で出会い、恋に落ちた。そして十代最後の日々を、ふたりは、夢を追いながらも「大人の事情」に転がされていったー。パリから遠く離れて、いまや山荘で幸せな家庭を築くふたりの過去には、はたして何があったのか?ゴンクール賞に輝いた『暗いブティック通り』につづく、受賞後第一作。醇乎たるパッションが胸を打ち、香り立つフェティシズムが読者の記憶をもよびさます、新ノーベル文学賞作家による青春小説!モーシェ・ミズラヒ監督による同名映画の原作。
殺人を他人から依頼されて代行する者がいるかもしれない。警視庁の環敬吾は特殊工作チームのメンバーを集め、複数の死亡事件の陰に殺し屋の存在がないか探れと命ずる。事件の被害者はみな、かつて人を死に至らしめながらも、未成年であることや精神障害を理由に、法による処罰を免れたという共通点があったー愛する者を殺されて、自らの手で復讐することは是か非か。社会性の強いテーマとエンターテインメントが融合した「症候群三部作」の掉尾を飾る傑作!
父親の秘密を見つけた女子高生の日記「トロフィー」、母の死を引きずる43歳独身男性の日記「道化師」、妹と同居している結婚を控えた姉の日記「サムシング・ブルー」、熟年夫婦の日常を記した夫の日記「夫婦」。まったく無関係な4人だが、本人たちも気づかぬところで、実は不思議な繋がりがあった…。絶筆となった著者最後の小説。
人は、生きるために働いている。だから、仕事で死んではいけないんだー。労働基準監督官である三村は、“普通に働いて、普通に暮らせる”社会をめざして、日々奮闘している。時には友人刑事とコンビを組み、工場内で起きた密室殺人の謎に挑むことも、職務にまっすぐな情熱を捧げる姿がまぶしい、エンターテインメントお仕事小説!
日本中を襲った悲劇から3カ月ー北海道各地で、腹部を切り裂かれた死体が見つかった。それは、とても人間による犯行とは思えなかった。そして9月19日の深夜0時、北海道に住む人たちの携帯電話に、人類をあざ笑うかのような命令が届くー人類による人類への挑戦が始まった!大人気サバイバルホラー、最新刊!
61歳になる2人の女性。佐藤直美は孫を愛するおばあちゃん、塩谷令子は小学校の理事長を務めるやり手熟女。今は一般人として生活する彼女たちの真の姿は、かつて裏の世界で「ソルト&シュガー」と呼ばれた特殊工作員コンビだった。21年の空白を経て、2人は、今再び“戦場”へと引き戻されるー!!
若きヴァイオリニスト香坂のもとに、解散した名門オーケストラ再結成の話が舞い込む。だが練習場は廃工場、集まったのは負け組楽団員たちとアマチュアフルート奏者のあまね。現れた謎の指揮者・天道に楽団員たちは猛反発するが、次第に彼が導く音の深さに引き込まれていく。はたして復活コンサートに天道が仕掛けた秘密とはー。感動の音楽エンタテインメント『マエストロ!』、映画ノベライズ版。
江戸城中を揺るがした佐野善左衛門の刀傷騒ぎのあと、尚武館から姿を消した松浦弥助は、自らが手にかけた薮之助の遺髪を懐に忍ばせ、伊賀泉下寺を目指していた。一方江戸では、坂崎磐音が月に一度の墓参のため忍ヶ岡の寒松院を訪れていた。その帰路、竹屋ノ渡し場に立った磐音は、向こう岸から近付く乗合船に思わぬ人物の姿を認め…。超人気書き下ろし長編時代小説第四十七弾。
晩秋の江戸で侍・町人の別なく針を突き立て切り刻む凄惨な殺しが続発。暗殺奉行の依田は両国に突如現れた唐人一座と長崎との接点に巨悪の存在を察知し、将軍家重公の下知を待つも、なぜか一向に沙汰が下りず焦りを深める。一方、急患に手を焼く女医彩香の前に傲岸不遜な男が現れる。彩香を押しのけ、鮮やかに小刀を捌いて患者を救った男は、長崎から来た医者だと名乗る。大反響のシリーズ第四弾!
長崎で蘭方医学を学び江戸に戻ってきた宇津木新吾は、師に託された手紙を携え、町医者・村松幻宗の施療院を訪れた。幻宗は、患者から薬代をとらないという。その真摯な姿勢と、見事な施術を目の当たりにした新吾はしだいに幻宗へと傾倒していくが、一方で施療院を支える資金についての疑問も膨らんでいくのだった…。書き下ろし青春時代小説、シリーズ第一弾!!
悪辣な勘定奉行を斬り捨て、相良藩を出奔した村松壮志郎、江戸表に訴え出ようと東海道を急いでいた。そこへ現れたのが相良藩主・田沼意次の懐刀で、剣の達人といわれた安川市兵衛だった。覚悟を決めた壮志郎に、市兵衛は意外な提案を持ちかけた…。純朴で素直な田舎侍が、華やかな大江戸を舞台に獅子奮迅の活躍!書き下ろし時代文庫、痛快シリーズ第一弾!!