2014年2月発売
お江戸は浅草のはずれ、田原町で小さな古着屋を営む喜十。恋女房のおそめと二人、子がいないことを除けば日々の暮らしには不満はないーーはずだったのに、何の因果か、たまりにたまったツケの取り立てのため、北町奉行所隠密廻り同心・上遠野平蔵の探索の手助けをする破目になる。人のぬくもりが心にしみて、思わずホロリと泣けてくる、人情捕物帳の新シリーズ、いよいよスタート!
昭和34年、中学生になったものの、あいかわらず病弱な伸仁の身を案じていた松坂熊吾だが、駐車場の管理人を続けながら、勝負の機会を窺っていた。ヨネの散骨、香根の死、雛鳩の伝染病、北への帰還事業、そして海老原の死。幾つもの別離が一家に押し寄せる。翌夏、伸仁は変声期に入り、熊吾は中古車販売店の開業をついに果たすがー。「生」への厳粛な祈りに満ちた感動の第六部。
名門の大学に通うグラス家の美しい末娘フラニーと俳優で五歳年上の兄ズーイ。物語は登場人物たちの都会的な会話に溢れ、深い隠喩に満ちている。エゴだらけの世界に欺瞞を覚え、小さな宗教書に魂の救済を求めるフラニー。ズーイは才気とユーモアに富む渾身の言葉で自分の殻に閉じこもる妹を救い出す。ナイーヴで優しい魂を持ったサリンジャー文学の傑作。-村上春樹による新訳!
女を亡くしたばかりの朝倉と、春には女と暮らす篠原。十一月、男たちは二人きりの旅に出る。燃えあがる紅葉が狂ったように輝く山をくだり、人家を離れた宿で眠りについた彼らは、雨の過ぎる昏い寝床の内から、谷を渡る鐘の音を聴いたー。現代文学の最高峰を示す連作八篇。
唯一の肉親である母を失って以来、ナポリの町で一人生きてきた少年アルカンジェロのもとに、ある日ブエノスアイレスから母に宛てた手紙が届いた。かつて母がブエノスアイレスにいたこと、自分に血を分けた兄がいることを知った彼は、彼の地に行く決意をするが、そこで待ち受けていたのは、憎悪に満ちた兄レオンと、母にまつわる禁忌の物語だった。ブエノスアイレスへ移住したナポリの画家、麗しき流転の双子、血の絆をもたない男だけの一族、アルカンジェロとレオンをつなぐカトリック伝統の「奇蹟の治癒絵画」…。禁断の愛と秘められた傷が織りなす神話の迷宮世界。迷宮にとらわれた魂の、再生の物語。
ある古書店で相次いだ万引き事件の意外な真相、同じ古書ばかりを買い漁る不思議な老人の秘密、電車の網棚に置き忘れられた本にはさまれた名刺の意味するもの…等々。書物の達人が国内作品から厳選した、本にまつわる物語の数々。書痴たちの濃密でめくるめく世界を垣間見させてくれる傑作アンソロジー。