2014年2月発売
キノフという街では、誰に届けられることもなくつぶやかれた声が凍りついて結晶になるという。その摩訶不思議な現象の秘密をめぐり各国の謀報員たちが暗躍。紙魚となって古書に潜入し、登場人物の記憶と身体を掠めとって戻ってきたフィッシュ、彼を追う辣腕刑事、凍った言葉を解く4人の解凍士、そして美しき義眼の女…この世で最大の神秘、パロール・ジュレとは一体何なのか?言葉を巡る壮大なマジカル・ファンタジー!
目黒の商店街付近で、若い男性が血を流して倒れているのが発見された。現場に到着した大島刑事と湯島刑事の前に現れたのは、刑事調査官の谷と心理調査官の島崎優子だった。若者同士のトラブルかと思われたが、捜査は思いのほか難航する。島崎と組んで聞き込みを行うことになった大島たちは、彼女の言葉に事件解決の糸口を見出すが…(「老婆心」より)。幻の「刑事調査官」シリーズの他、五編を収録した文庫オリジナル短編集。
魔犬伝説により一族は不可解な死を遂げるーー恐怖の呪いが伝わるバスカヴィル家。その当主がまたしても不審な最期を迎えた。遺体の傍には巨大な猟犬の足跡が……謎に包まれた一族の呪いに、ホームズが挑む!
1945年1月。「A情報」により情報戦では優位に立っているものの多正面作戦を強いられ苦戦を続ける日本。これ以上の戦線の拡大を懸念する日本は、インド洋からのイギリス軍の侵攻を食い止めるため、4式主力戦車や強襲揚陸艦「赤城」などを展開し、タイ・ビルマの英軍を排除する「TB」作戦を発動。ここに日本の反攻作戦が開始される。一方、米国も太平洋航空軍を新設し、虎視耽々と日本本土襲撃を狙っていた…。シリーズ12弾!超時空シミュレーション戦記。
【2025年5月現在、新本が定価(2,400円+税)で購入可能】 「絶望もここでは王冠のように輝いていた。」(「蝕まれた虹」より) この世のあらゆる不幸を味わい尽くし、精神病院での5年間の闘病生活から放たれた祈りの小説群。自らの狂気を見つめる目は緊迫感に満ち、聖痕のごとく、清らかに輝きつづけている。中上健次が「むごたらしいほど美しい小説」と絶讃した「髪の花」など8篇を収録。 同人誌仲間だった中上健次、勝目梓らと切磋琢磨する日々をおくり、中上初期の傑作「十九歳の地図」に登場する「かさぶただらけのマリア」のモデルとしても知られる異才、小林美代子。 精神病院の病棟で綴った処女作「幻境」では、自らの狂気を題材に独自の境地をつくりあげ、精神病院内の虐待の実態をえぐった中篇「髪の花」で群像新人文学賞を受賞、そのわずか2年後に自死して果てた。自宅の机の引出に残された遺稿「蝕まれた虹」では、鬼気迫る狂気の日常から不思議な聖性がこぼれ出し、まさにマリアのように、あらゆる不幸を幸福に変えてしまいそうな力がみなぎっている。 ※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。 蝕まれた虹 幻境 灰燼 さんま 女の指 老人と鉛の兵隊 髪の花 芥川龍之介「歯車」における狂気と私の狂気 解説/七北数人
交通事故で幼い息子を失い、自分を責め続ける妻。ともに悲しみを乗り越えなければならないはずの夫との間には、次第に亀裂が入っていった。一周忌の法要が終わり、夫は躊躇いながらも、妻に意外な話を切り出すが…。(第一話「桜ひらひら」)。幼い息子を虐待して殺した母親を逮捕ー残酷な事件のニュースが、人々の心に起こした波紋…。8組の家族の人生の転換期を、鮮やかな手法で描いた感動の連作集。
“嫁”の介護に不満を持つ老人(「寝たきりの殺意」)。豊胸手術に失敗した、不運続きの女(「シリコン」)。患者の甘えを一切許さない天才的外科医(「至高の名医」)。頭蓋骨の形で、人の美醜を判断する男(「愛ドクロ」)。ストレスを全て抱え込む、循環器内科医(「名医の微笑」)。相手の嘘やごまかしを見抜く内科医(「嘘はキライ」)。本当のことなんて、言えるわけない。真の病名、患者への不満、手術の失敗。現役医師による、可笑しくて怖いミステリー。
前妻と前々妻に追われる元夫。見えない箱に眠りを奪われる女。勝手に喋る舌を止められない老教授。ニセの救世主。「私」は気づけばもう「私」でなく、日常は彼方に遁走するー。奇想天外なのにどこまでも醒め、滑稽でいながら切実な恐怖に満ちた、19の物語。幻想と覚醒が織りなす、驚異の短篇集。
小泉八雲は「元祖バックパッカー」だった。ニューヨークから松江までの旅でその人生を一変させた男がいた。文無しジャーナリスト、ラフカディオ・ハーンは、一八九〇年、ニューヨークから鉄道で大陸を横断し、横浜へと向かった。松江で「へるん先生」となった男は、熊本、神戸、そして東京へと生涯旅を重ねた。
15年前に伝えられなかった想いー大人になれない僕等はいま、あの日を取り戻すために走り出す。ままならない現実に落ち込む中、中学の旧友と再会した雄也は、文化祭で上映できずに心残りとなった告白映画「初恋シネマ」を完成させようと決心するが…。後悔ばかりで情けない29歳が昔の仲間たちと新たな人生へと立ち上がる、号泣必至のノンストップ・ラブ・ストーリー!
第一次大戦直後のロンドン。骨董店の美形店主・デューイには、大戦時の苦い記憶がある。徴兵を拒み、投獄された自分。出征し傷を負い、外科医の道を諦めた弟・デリック。生きて帰ることのなかった親友と、残されたその息子・ケイ。ケイを引き取り、共に暮らすデューイのもとを、ある男が訪れる。彼が骨董店に持ち込んだのは、女性の髪が収められた、センチメンタル・ジュエリー。しかもその後、男は戦没者慰霊碑の前で遺体となって発見され…。骨董屋の兄デューイと、検死官の弟デリック。麗しい兄弟が謎を解く、話題の英国ミステリ。
十倉和成。中堅おぼっちゃん大学の1年生にして、20歳。彼のボロ下宿の天袋から、絶滅危惧種の大和なでしこ“さち”がとつじょ這いおりてきたその日から、その停滞しきった生活は急転する!ノンストップ迷走系青春ミステリー!
ドン・ティルマン、39歳、遺伝学者。ハンサムで頭はいいし料理も得意、しかし生涯彼女に恵まれたことがない。周囲の空気を読めず、いつもなんだか浮いている。デートすれば必ずとんでもない結末に終わる…。しかしそれでも素敵な女性を見つけて結婚するのが夢。そうだ、とにかくまず自分には合わない女性を排除しよう。水商売関係×、時間にルーズな人×、喫煙者×、酒飲み×、ベジタリアン×、頭の悪い女性×、浪費癖のある女性×…こうして「ワイフ・プロジェクト」が始まった!
元料理人の僕は、奇妙な仕事を紹介される。それは、古い屋敷で、一人暮らしの高齢のマダムのために毎晩一杯のスープを作ること。報酬は破格だった。屋敷で、僕はマダムの孫娘である風変わりな美少女・千和に出会う。両親を事故で失くした千和は心を閉ざしていたが、母の遺した料理本を愛読し、古今東西の料理について膨大な知識をもっていた。一方、僕は、幼い頃に別れた母と最後に食べた「想い出のスープ」を探していてー。料理本マニアの少女×元料理人の僕。屋敷に封印された“悲しみの記憶”を解く鍵は、一杯のスープ。現役料理人が描く希望と再生の物語。
日本橋の大店に降って湧いた正に沽券に関わるひと騒動。白木屋の地面は我が先祖の拝領地と、鏡三郎に訴えた老婆。調べてみると、軍師と思しき浪人が只者ではない様子ー。シリーズ第8弾。
ハリウッドの脚本家として活躍する「わたし」。かつて小説・映画『レス・ザン・ゼロ』の主人公となった男が25年後に巻きこまれる謎の連続失踪事件。パーティーで出会ったブロンドの美女。“お前を見ている”という非通知のメール。キャスティングセッションで出会う美男美女との密事。ネット上に流れる「処刑」動画の噂…。ロサンゼルスを舞台に繰りひろげられるミステリアスな物語。
「ブラウ博士の旅1・2」:人体の神秘に魅せられ、解剖標本の保存を研究するブラウ博士は、学会へ向かう途中、著名な解剖学者の未亡人から招待を受ける。亡き教授の仕事部屋には、驚くべき標本が残されていた。「切断された脚への手紙」:若き日に出会ったスピノザを師と仰ぐフィリップ・フェルヘイエンは、ふとした怪我がもとで左脚を失っていた。優れた解剖学者となった彼は、あるとき、ないはずの脚に痛みを覚えるようになる。「逃亡派」:アンヌシュカは、難病の息子を抱えてモスクワに暮らしている。週に一度の外出で教会から帰る途中、地下鉄の出口で、たえず足ぶみしながら何かをつぶやく、奇妙ないでたちの女に出会う。「ショパンの心臓」:パリで没した作曲家ショパンは、自分の心臓を愛する祖国に埋葬してほしいと遺言を残した。姉ルドヴィカは、独立の気運が高まるポーランドへ向けて、弟の心臓を携え、冬の平原を馬車で渡っていく。ポーランドで最も権威ある文学賞“ニケ賞”受賞作。