2014年6月20日発売
半年前、結婚式当日に事故に巻きこまれ大怪我を負ったヴェロニカは、花婿に婚姻を無効にされたうえ、ごみのように捨てられた。不幸のどん底で脳裏に浮かんだのは、継父ハンクの優しい顔ーすがる思いで継父の暮らす家を訪れたヴェロニカを待っていたのは、父は半年前に亡くなったという、息子コールの言葉だった。16歳の頃、ヴェロニカはコールに熱い思いを寄せていたが、彼は父を煩わせる継妹をひどく疎んじていた。時を経て男らしさを増したコールに心を奪われそうになった瞬間、彼が蔑みもあらわに言い放った。「放蕩娘がついに帰ってきたか。どうせ父の遺産目当てだろう?」
“世界で最もセクシーな男性10人”の第3位として雑誌で紹介された大富豪デヴォンを、サラはうっとりと見つめた。このカフェで落ち合ったのは、彼から突然連絡を受けたからだった。でも、いったいどんな用件かしら。いぶかしがるサラに彼は座るなり切りだした。「君の妹に家宝を盗まれた。これが証拠だ」差し出されたスマートフォンの動画には、妹の姿が。ああ、まさか。彼は、妹を守りたければ自分の婚約者役を演じるようサラに迫った。低俗な記事のおかげで失った取引相手の信用を回復するには、王家の末裔ーカルレンブルク大公妃の孫娘サラが適任なのだと言って。あまりにも話が一方的だわ。そう反論しようとした彼女をデヴォンはいきなり抱き寄せ、唇を奪って…?!
カジノ王の億万長者の夫コンラッドと別居して3年。ジェインは夫を忘れたくて、悩んだすえ指輪をルーレットに賭けた。プロポーズされたときは幸せの絶頂にいたのに、結婚すると夫は、たびたび理由も告げず長期間家を空けた。私は愛されていないー残酷な事実に気づいて家を出たあの日。すべて忘れてしまえたら…。ルーレットが回り出し、息を詰めたそのときだった。コンラッド!ふらりと現れた夫の姿を見て、体がたちまち熱く反応したことにジェインは愕然とした。もううんざり。気分次第でふいに帰宅する暴君に求められるまま、ベッドの相手をするだけの妻なんて。そんな彼女の思いを見透かしたかのように、コンラッドはあざけった。「残りの人生を、僕とベッドを分かち合わずに過ごす覚悟があるのか?」
かつて男性に騙され、恋愛に臆病になっているスザンナ。懸命に仕事に打ち込み、ようやく周りから認められた矢先、新任の上司ハザードから罵声を浴びせられて呆然とする。私が前任の上司と不倫していたですって?ひどい勘違いよ!(『特別扱い』)。顔にあざのあるコレットは母親の再婚相手から疎まれ、召使いのようにこき使われて、惨めな日々を送っていた。だが、ある事故のせいであざは消え、別人のように生まれ変わる。そんな彼女の前に、冷酷なギリシア人富豪ルークが現れて…。(『悪魔のばら』)。
カーチャはイタリアへ向かう飛行機の中にいた。機体がふわりと揺れるたび、おなかに感じる羽ばたきは決して気のせいではなく、小さな命が息づいている証だ。わたしの赤ちゃん…。思わず胸が熱くなる。込み上げる思いをカーチャは慌てて打ち消した。情が移らないようにしなければ。私に母親になる資格はない。だから今、この子を委ねられるかどうか見極めるために、はるばる子どもの父親に会いに行くのだ。たった一夜だけをともにしたプレイボーイの外科医、ベネデット・メディチ伯爵のもとへ。
「よくものこのこと来られたものね。まったく気が知れないわ」リジーは、クラブの片隅で客がささやき合う声を聞いていた。恋人コナーがリジーのせいで死んだという噂を流されて以来、親友からも家族からも見放され、彼女は失意のどん底にあった。そんなリジーをVIP席から熱く見つめる男性がいた。ギリシアの大物実業家、セバステン・コンタクシスだ。乞われるままにダンスを踊り、唇を甘く貪られて、孤独に耐えかねていたリジーは、彼の屋敷への誘いを受けた。そして、生まれて初めて男性とベッドをともにする悦びを知る。セバステンが、コナーの兄だとも知らずに。