2015年10月28日発売
幸せな新婚生活をおくっていた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。原因不明の噛み傷を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、今は亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか?愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか…。第22回日本ホラー小説大賞大賞受賞作。
東京郊外で両親と暮らす朋子は、三十歳過ぎの兄が何年も二階の自室にひきこもっていることに悩んでいた。そのころ、元警察官と六人の男女たちは、考古学者の予言を元に、人々を邪悪な存在“悪果”に変え世界に破滅をもたらす“悪因”の探索を続けていた。“悪果”を嗅ぎ分ける男・掛井は、職場で接点がある朋子への想いを募らせている。ある日、仲間の一人が急死し、身近に怪しい気配が迫り始めて…。
欧州原子核研究機構にて極秘に行われていた“ナイアンティック計画”の実験中、人類を“覚醒”させる未知の物質“XM”の大規模漏洩事故が発生した。その危険性を察知し、人工知能“ADA”の助けを得て研究所から逃亡したプロジェクトのリーダー、デブラ・ボグダノヴィッチ博士を中心に、今、人類の未来を懸けた戦いが始まったー!革命的スマートフォンゲーム『INGRESS』の日本初となる公式小説は、無数の思惑が幾重にも交錯するストーリー。ゲームに秘められた世界の秘密が今、解き明かされる!
「世界は瀕死だが、まだ息絶えちゃいない」。“六・一六”により文明を失ったアメリカ大陸。生き残った者は人と牛を掛け合わせた“牛”を喰って命を繋ぐ。保安官バード・ケイジは、四十頭の馬を強奪したレイン一味を追い、大西部を駆ける。道すがら出逢ったのは運命の女コーラ。凶兆たる蟲の蔓延。荒野に散るのは硬貨より軽い命。小説の面白さ、その全てを装填した新たなる黙示録。
ジョアン・メロヂーヤ。メキシコの農園で人と“牛”の間に誕生した美しき奇跡。自らを慕う人々を率い、彼は蟲に巣食われた者を殺戮しつつ流浪する。そして七年後、ワイオミングの大クレーターに居を構えたジョアンたちに、バード・ケイジを首領とする討伐隊が総攻撃を掛ける。そこへレイン一味も絡み…。ジョアンは家畜か、それとも救世主か。神話の結末はあなた自身が目撃せよ。
その男には2つの顔があった。昼は高齢者に金融商品を売りつける高給取りの証券マン。一転して夜はSMクラブの女王様に跪き、快楽を貪る奴隷。よりハードなプレイを求め、死ぬほどの苦しみを味わった彼が見出したものとはー芥川賞選考委員の賛否が飛び交った表題作のほか、講師と生徒、奴隷と女王様、公私で立場が逆転する男と女の奇妙な交錯を描いた「トーキョーの調教」収録。
保育園に“平穏な一日”なんてありません!25歳の保育士・美南は、次々と起きる不思議な事件にふりまわされる日々。妻と娘が姿を消したと園児の父親が駆け込んできたり、園内に不審な足跡を見つけたり。解決のヒントは、えっ、絵本のなか!?謎を解くべく奔走するうち、男手ひとつで園児・旬太を育てる隆平に心惹かれて…。大人も子どもも一緒に大きくなる、恋と謎と成長の物語。
その死は弟子たちにも伏せられていた。立川談志、享年七十五。この不世出の落語家に入門したのは十八歳の春だった。それから四十年近く惚れ抜いた師匠から突然の破門宣告。「てめえなんざクビだ」。全身が震えた。怒りの理由が分らない。振り回され、腹を立て、やがて気づいた。大変だ。壊れてるんだ、師匠はー。偉大な師匠の光と影を古弟子が虚実皮膜の間に描き尽す傑作長篇小説。
キスをして抱きしめられ、初めて普通の状態になれたあの頃。今の私は年下の彼に、昔の自分を重ねてしまう(「試着室」)。私の性を抑圧し続けてきた、私に対して1ミリも動かなくなった彼の性器に、今、私は復讐をした(「ポラロイド」)。他の男と寝て、気づく。私はただ唯一夫と愛し合いたかった(「献身」)。-幸福も不幸も与え、男と女を変え得る愛と結婚の、後先を巡る六つの短篇。
目覚める気配もなく“死の予知夢”を見続ける志乃。その原因究明と引き換えに“クロノスシステム”で夢を解析し捜査に使うという警察庁からの提案を、真田省吾たちは迷いながらも受け入れた。新たな活躍の場は公安課内の「次世代犯罪情報室」。天才的頭脳で超毒舌、そして時に暗い影が覗く謎めいたバディ・黒野武人と共に、真田は国際テロを阻止できるのか。衝撃の新シリーズ開始!
写真家を目指す俊彦は、小料理屋を営む二歳上のみすみと結婚する。やがて小説に転向した夫を、気丈な妻は支え続けた。しかし平穏な関係はいつしか変質し、小さなひびが広がり始める…。それでもふたりは共に生きる人生を選ぶのか?結婚に愛は存在するのか?そして人生における快挙とは何か?一組の男女が織りなす十数年間の日々を描き、静かな余韻を残す夫婦小説の傑作。
十代で捨てた家だった。姉も兄も寄りつかない家だった。老父は心臓病を患い、認知症が進む。老母は介護に疲弊していた。作家は妻とともに親を支えることになった。総合病院への入院も介護施設への入所も拒む父、世間体と因襲に縛られる母。父の死後、押し寄せた未曾有の震災。-作家は紡ぐ、ただ誠実に命の輪郭を紡ぎ出す。佐伯文学の結実を示す感動の傑作長編。毎日芸術賞受賞。
テロ事件の終結後、林間合宿の準備のために新型商業施設“バベル”を訪れた坂東蛍子。そこで彼女を待ち受けていたのは、超ウィザード級のハッカー望月嗚呼夜からの殺害予告だった。凶行を阻止すべく奮闘する結城満。犯人確保に動く松任谷理一。だが、そんな彼らを嘲笑うかのように、蛍子は危機に陥り…。嗚呼夜の目的は何か。ハッカーの正体は。疾風怒涛の女子高生譚、ここに完結。
バカがつくほどケーキが大好きな女子高生・未羽。失恋のかなしみを癒すため訪れた自由が丘のケーキ屋で、パティシエ修行をしている学校一のイケメン王子、颯人に遭遇。これは早くも新しい恋の予感?いやいや現実はケーキほどには甘くない。彼は噂に違わず超冷たい。が、夢への想いは超熱い。他人の恋やトラブルもお菓子の知識で鮮やか解決。ケーキを愛する二人の青春スペシャリテ。
「迷宮庭園」に暮らす宮籠彩人は、花の言葉を伝える華術師の貌を持つ。そんな彼の許に足繁く通う編集者の立花真が、突然、消息を絶った。折しも、周辺では華術師を巡る血なまぐさい事件が起こり始めている頃。そして、殺人事件の容疑者に、彩人が…。真相を追う彼らの前に、多重に仕掛けられた「嘘」が浮かび上がるとき、謎に満ちた「華術師」の真実が、ついに明らかになるー。
「あれが最後ね。てっきり夜中に落ちるんだろうと思った。風の音がしてたから。きょうには落ちるでしょうね。そのときに、あたしも死ぬわ」老画家が命がけで彼女に贈った希望とは。表題作のほか、「感謝祭の二人の紳士」「芝居は人生だ」「金のかかる恋人」など、O・ヘンリーの名作短篇14篇を新訳。ニューヨーカーたちの魂をふるわせ、優しく暖め、温かく笑わせた選り抜きの物語たち。