2015年11月20日発売
両性具有人の惑星ゲセンを描いたヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作『闇の左手』と同じゲセンの若者の成長を描く「愛がケメルを迎えしとき」、男女が四人組で結婚する惑星での道ならぬ恋を描く「山のしきたり」など“ハイニッシュ・ユニヴァース”もの6篇をはじめ、毎年の神の踊りが太陽の運行を左右する世界の王女を描く表題作、世代宇宙船の乗員たちの運命を描いた中篇「失われた楽園」など、全8篇を収録する傑作短篇集。
ジョン・レノンが死んだ日、ラジオからはビートルズの曲がずっと流れていた…。その日、エンジェルは、かつての友人たちを悲しみとともに回想する。死海砂漠で遭難して死んだ義父ティモシー・アーチャー主教。精神の安定を失い自殺した義父の愛人キルスティン。父への劣等感とキルスティンへの欲望に耐え切れず自ら死を選んだ夫のジェフ。絶望の70年代に訣別を告げる“ヴァリス”三部作完結篇にして鬼才の遺作・新訳版。
宇宙空間を巨大なブロックが飛んでいく。月面から打ち上げられた無数のブロックは、軌道上で組み立てられ、巨大な石壁を構築しつつあった。“長城”と名づけられたこの堤防は、粛清者の恒星反応弾による太陽嵐から、少しでも地球を、転移ゲートを、脱出船を守るためのものだ。人々を避難、脱出させる準備も同時に、急ピッチで進められている。だがすべてが未完成の今、太陽系全域に警報音が鳴り響いた。粛清者襲来!と。
大規模多人数同時参加型オンラインRPG“セルフ・クラフト”のゲーム世界では、人工生命“G-LIFE”が奇跡の独自進化を遂げていた。ゲーム内のド田舎村で旅人を迎える役目のエリスは、九州女性(?)のノンプレイヤーキャラクター。砂漠で彼女の命を救ったプレイヤーのGENZは、G-LIFEの不可思議な生態を研究しているという。そこへ謎のハッカー集団の侵入事件がー世界最高の熊本弁ファンタジーSF!
二百年前にタイムスリップしたクレアは、十八世紀のスコットランド戦士ジェイミーの妻となることに。非道なイングランド軍大尉ランダルから逃れる手段としての結婚だが、二人のあいだの思いやりと好意はやがて愛情に変わっていく。しかしクレアは未来に残した人生が忘れられなかった。すべての発端のストーン・サークルへ向かった彼女は、ランダルに捕まってしまい…。世界中が愛するロマンティック・アドベンチャー!
国民管理のために首輪型嘘発見器の着用が義務付けられた世界。非合法の首輪除去技術を持つ少年フラノは、強盗犯、痣のある少女、詐欺師、不倫妻、非情な医者、優しすぎる継母など、様々な事情を抱えた人々の依頼を請けて日銭を稼いでいた。だが彼には密かな目的があった。ある人のために、特殊な首輪を探しだして、外すこと。首輪には複数のタイプがあり、中でも、フラノに技術を仕込んだ師匠ですら除去法を教えられず、存在自体ほとんど確認されていない難攻不落の型こそ、フラノが探す首輪・レンゾレンゾだった。レンゾレンゾを求めることがやがてフラノを窮地へ追いやり、さらには首輪に隠された秘密へと導いてゆく。人はなぜ嘘をつき、また真実を求めるのか。フラノが辿り着いた衝撃の結末とは?近未来の管理社会を生きる少年の苦悩と成長を瑞々しい筆致で描く、ディストピア青春ミステリ。小説推理新人賞とダブル受賞でデビューした超大型新人による、第5回アガサ・クリスティー賞受賞作。
アガスティアリゾートーマイン社が運営するサンフランシスコ沖合の特別提携地区。そこでは住民が自らの個人情報ー視覚や聴覚、位置情報などのすべてーへの無制限アクセスを許可する代わりに、基礎保険によって生活全般が高水準で保証されている。しかし、大多数の個人情報が自発的に共有化された理想の街での幸福な暮らしには、光と影があった。リゾート内で幻覚に悩む若い夫婦、潜在的犯罪性向により強制退去させられる男、都市へのテロルを試みる日本人留学生ーSF新世代を担う俊英が、圧倒的リアルさで抉り出した6つの物語。そして高度情報管理社会に現れる“永遠の静寂”とは。第3回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。
やがて入り江が見えた。両手が水をすくうように、膨らんだ帆が空気をすくった。すでに鼻がかいでいたものが、目に見えてきた。最初はチョウジ油をすりこんだ望遠鏡を通してー大英帝国の軍人、リチャード・フランシス・バートン。インドでは様々な言語と文化に浸り、アラビアではメッカ巡礼をなしとげ、アフリカではナイルの源泉を追い求める。『千夜一夜物語』の翻訳者としても知られる桁外れの人物の生涯を、世界的に評価されるブルガリア系ドイツ人作家が、事実と虚構を織り交ぜて詩情ゆたかに描き上げた傑作長篇小説。ライプツィヒ・ブックフェア賞受賞作。
愛猫を亡くし、喪失感にうちひしがれていた立花明海は、西船橋の古書店で普段は読まない自己啓発系の本を買う。すると、中に元の持ち主の名刺が栞代わりに挟んであり、明海が最も心を動かされたフレーズにはすでに傍線が引かれていた。気になった明海は意を決して名刺の「大滝あかね」に連絡をとる。会うと、あかねは明るい年上の女性で、日常の物事を幸福感たっぷりに捉えている“幸せの天才”だった。明海には、今まさに恋愛関係に発展しそうな会社の同僚・松原弥生がいたが、あかねの存在が徐々に大きくなっていく。だが…あかねには恋人がいた。彼は病に伏し、余命宣告を受けているというー。
男に騙され、会社も辞める羽目になってしまった神戸美菜代は、凄腕の復讐屋がいるという噂を聞きつけ、その男、成海慶介の事務所を訪ねる。が、イケメンでオレ様の成海に足元を見られ、けんもほろろに追い払われてしまう。諦めきれない美菜代は弟子入りを志願、押しかけ秘書として成海の事務所で働きだす。
夏の盛りの8月。日本・韓国・台湾の高校生32人が、国際交流の研修で台湾にある孤島に集まった。研修5日目の夜、打ち解けてきた生徒たちのスマホに、“王様”を名乗る人物から謎のメールが送られてくる。そして、再び地獄のゲームが始まった!生徒たちの間には、やがて疑心暗鬼が募り、対立が広がっていくー
仕事に情熱を燃やすグレースは、ある日、上司が殺害され、お酒の瓶が転がっているのを発見する。過去の恐ろしい記憶が甦ったー十六歳のとき、男に襲われ、正当防衛から相手を殺してしまったのも同じ酒瓶だったのだ。再び過去の悪夢に悩まされはじめたグレースは職を失うが、そんなとき友人からジュリアスという男性を紹介される。ビジネスで大成功を収め、冷静ながらも情熱的な彼にグレースは惹かれていく。だが、死んだはずの上司から毎晩メールが届くようになり…
深夜の放火事件。無人だったはずの建物で身元不明の少女が焼死し、警備員の射殺体が見つかる。現場に向かったのは刑事オリヴィアと消防士のデイヴィッド。かつて運命的な一夜を共にした男女だったが、それぞれの心の傷からあと一歩が踏み出せず、音信不通の日々が続いていた。気まずい再会を経て、捜査協力をきっかけに徐々に心を通わせる二人ー。一方、逃げた放火犯は、謎の男からの脅迫を受け、さらなる放火を強要されて追い詰められていく。脅迫者はいったい何者なのか?オリヴィアたちの恋のゆくえは!?