2015年11月発売
アガスティアリゾートーマイン社が運営するサンフランシスコ沖合の特別提携地区。そこでは住民が自らの個人情報ー視覚や聴覚、位置情報などのすべてーへの無制限アクセスを許可する代わりに、基礎保険によって生活全般が高水準で保証されている。しかし、大多数の個人情報が自発的に共有化された理想の街での幸福な暮らしには、光と影があった。リゾート内で幻覚に悩む若い夫婦、潜在的犯罪性向により強制退去させられる男、都市へのテロルを試みる日本人留学生ーSF新世代を担う俊英が、圧倒的リアルさで抉り出した6つの物語。そして高度情報管理社会に現れる“永遠の静寂”とは。第3回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。
やがて入り江が見えた。両手が水をすくうように、膨らんだ帆が空気をすくった。すでに鼻がかいでいたものが、目に見えてきた。最初はチョウジ油をすりこんだ望遠鏡を通してー大英帝国の軍人、リチャード・フランシス・バートン。インドでは様々な言語と文化に浸り、アラビアではメッカ巡礼をなしとげ、アフリカではナイルの源泉を追い求める。『千夜一夜物語』の翻訳者としても知られる桁外れの人物の生涯を、世界的に評価されるブルガリア系ドイツ人作家が、事実と虚構を織り交ぜて詩情ゆたかに描き上げた傑作長篇小説。ライプツィヒ・ブックフェア賞受賞作。
愛猫を亡くし、喪失感にうちひしがれていた立花明海は、西船橋の古書店で普段は読まない自己啓発系の本を買う。すると、中に元の持ち主の名刺が栞代わりに挟んであり、明海が最も心を動かされたフレーズにはすでに傍線が引かれていた。気になった明海は意を決して名刺の「大滝あかね」に連絡をとる。会うと、あかねは明るい年上の女性で、日常の物事を幸福感たっぷりに捉えている“幸せの天才”だった。明海には、今まさに恋愛関係に発展しそうな会社の同僚・松原弥生がいたが、あかねの存在が徐々に大きくなっていく。だが…あかねには恋人がいた。彼は病に伏し、余命宣告を受けているというー。
男に騙され、会社も辞める羽目になってしまった神戸美菜代は、凄腕の復讐屋がいるという噂を聞きつけ、その男、成海慶介の事務所を訪ねる。が、イケメンでオレ様の成海に足元を見られ、けんもほろろに追い払われてしまう。諦めきれない美菜代は弟子入りを志願、押しかけ秘書として成海の事務所で働きだす。
夏の盛りの8月。日本・韓国・台湾の高校生32人が、国際交流の研修で台湾にある孤島に集まった。研修5日目の夜、打ち解けてきた生徒たちのスマホに、“王様”を名乗る人物から謎のメールが送られてくる。そして、再び地獄のゲームが始まった!生徒たちの間には、やがて疑心暗鬼が募り、対立が広がっていくー
仕事に情熱を燃やすグレースは、ある日、上司が殺害され、お酒の瓶が転がっているのを発見する。過去の恐ろしい記憶が甦ったー十六歳のとき、男に襲われ、正当防衛から相手を殺してしまったのも同じ酒瓶だったのだ。再び過去の悪夢に悩まされはじめたグレースは職を失うが、そんなとき友人からジュリアスという男性を紹介される。ビジネスで大成功を収め、冷静ながらも情熱的な彼にグレースは惹かれていく。だが、死んだはずの上司から毎晩メールが届くようになり…
深夜の放火事件。無人だったはずの建物で身元不明の少女が焼死し、警備員の射殺体が見つかる。現場に向かったのは刑事オリヴィアと消防士のデイヴィッド。かつて運命的な一夜を共にした男女だったが、それぞれの心の傷からあと一歩が踏み出せず、音信不通の日々が続いていた。気まずい再会を経て、捜査協力をきっかけに徐々に心を通わせる二人ー。一方、逃げた放火犯は、謎の男からの脅迫を受け、さらなる放火を強要されて追い詰められていく。脅迫者はいったい何者なのか?オリヴィアたちの恋のゆくえは!?
大切なものを失う悲しみを、まっすぐに描いた感動作。40歳にして免許を取得した戸倉は、友人須崎、その恋人琴美の3人で、伊勢神宮へドライブに出かけた。本当の願掛けにいくのだ。著者初の書き下ろし。最初で最後の「泣ける」恋愛小説。
美少年大学生・理生がふらり訪れた鎌倉、八雲稲荷神社。神社の主は稲荷銀之丈ーぐうたらで、守銭奴で、ドSで、「オレ様」なくせに、虚弱体質の変人変態な神主様。「おまえは今日から我がしもべだ」って!?苦労性な性格が祟り、すっかり銀之丈の言いなりに…。なんで僕にこんなに執着するの!?そのワケは前世から続く、銀之丈との禁断の恋!?あやかし達が引き起こす不思議な事件をきっかけに、転生した身体から解き放たれる真の姿!銀之丈の正体は、最強の妖狐!!で、理生はタヌキのお姫さま…?
父の衝撃の発表から一週間あまり。とうとうあの人が載った列車が、バックショー仮駅に到着した。みんなで列車を出迎えている折、フレーヴィアは見知らぬ男から父への謎めいた伝言を頼まれる。しかしその直後、男は誰かに押され、列車に轢かれて死んでしまった…。徐々に明らかになる謎めいた言葉の意味、ド・ルース家の秘密。大人気のフレーヴィア・シリーズ、大団円の第六弾。
和平協定締結のためにモアン王国を訪れた小王国の大族長とモアン国王を、何者かの矢が襲った。二人の命に別状はなかったが、両国は一触即発の危機に。国王は自国の潔白の証明を、妹であり、法廷弁護士・裁判官の資格をもつ修道女フィデルマに託す。だが襲撃者は既に殺され、フィデルマはわずかな証拠を頼りに、襲撃に使われた矢の出所と思われる村に向かう。好評シリーズ第七弾。
イムラックの大修道院から聖遺物が消失。管理担当の修道士も失踪した。そんなとき、国王と大族長暗殺未遂事件の調査にフィデルマが修道院にやって来た。救いの神とばかり院長は調査を依頼する。襲撃者の一人が元修道士であったため、二つの事件の結びつきを感じたフィデルマは院長の依頼を引き受ける。モアン王国の平和と威信がかかる難事件を、見事解決することはできるのか?
扇ヶ谷姫之、朝比奈亜沙日、そして交換留学生アナスタシア・ベズグラヤ(通称:ナスチャ)は日本史好きの高校生。事あるごとに日本史談義を続け、ついには歴史雑誌『ジパング・ナビ!』の新説公募企画にそれぞれが投稿、入選と賞金を狙う。本能寺の変の真相、ヤマトタケルと剣の謎、大奥の秘密など、女子高生“歴女”三人組の魅力的な新解釈を、気鋭の著者が連作ミステリで贈る。
あたしが“めまい”に襲われたのは高校のカフェテリア。それがすべての始まりだった。そもそも、タイムトラベラーとして準備をしていたのは、いとこのシャーロットだったのだ。ところが実際に過去に飛んだのは、何の準備もしていないあたし。相棒のギデオンは気絶しそうなほどステキだけど、自信過剰で嫌なやつードイツで大人気のタイムトラベル・ファンタジー三部作、第一弾!
ブレクは宇宙戦艦のAIであり、その人格を4000人の肉体に転写して共有する生体兵器“属躰”を操る存在だった。だが最後の任務で裏切りに遭い、艦も大切な人も失ってしまう。ただひとりの属躰となって生き延びたブレクは復讐を誓う…。デビュー長編にしてヒューゴー賞、ネビュラ賞など『ニューロマンサー』を超える英米7冠制覇、本格宇宙SFのニュー・スタンダード登場!