2015年12月17日発売
世にありとある怪談は、文芸作品であれ映像作品であれ、「事実」と「虚構」を両端に据えた、面妖なるグラデーションのいずれかに位置づけられるはずだ。 その領域を、事実と虚構のボーダーランドと呼ぶことも可能だろう。近年、主に映像分野で注目を集めてきた「フェイク・ドキュメンタリー」もしくは「モキュメンタリー」は、そうした怪談本来の特性をいわば逆手にとることで、日常を切り裂き、現実を震撼させようとしてやまない、いかがわしくも魅力的なジャンルである。おりしも、それら映像作家の営為に挑発されるかのごとく、小野不由美の『残穢』を筆頭に、『幽』で連載中の京極夏彦『虚談』や辻村深月の最新刊『きのうの影踏み』など、虚実皮膜のあわいに果敢に踏み込む文芸作品も相次いでいる。 怪談という表現の本質を、いま一度、見つめ直すために──『幽』次号は「リアルか、フェイクか」というテーマで、怪談表現の過去と現在を総展望いたします。 特集 ◆浅田次郎『神坐す山の物語』ほかをめぐって 浅田次郎氏インタビュー 東雅夫 御嶽山(みたけさん)イベントルポ ◆論考 近世/近代/現代 小二田誠二「フェイク・ドキュメンタリーのルーツとしての江戸実録本をめぐって」 千街晶之「『リング』から『残穢』に至る怪談実話史をめぐって」ほか ◆復刻 平山盧江 ◆特別寄稿 福澤徹三 ◆インタビュー 『残穢』『鬼談百景』監督:中村義洋 ◆座談 NHKドラマ『怪異TV』制作秘話 ◆エッセイ 道尾秀介/花房観音/長江俊和/黒史郎 ◆連載 綾辻行人、小野不由美、京極夏彦、有栖川有栖、初野晴、朱野帰子、高橋葉介、諸星大二郎、柴門ふみ、波津彬子、伊藤三巳華ほか ◆インタビュー 辻村深月『きのうの影踏み』、田中康弘『山怪』ほか
愛のうた、ひとついかがですかー文崎双葉(あやさきふたば)は普通の恋をしていた。相手は通学の途中、5分だけ一緒に過ごす男の子。だが、あるメールをきっかけに日常は一変する。『コンニチハ、☆のひと!きみたちにステキな“しゅうまつ”がおとずれますように』。
「見事に咲いた花ならば、心おきなく散り候えー」最愛の妹・響と決別した八郎。伊賀と甲賀を率いる若き棟梁達は、もう二度と相見えないはずだった。しかし、一度は退いたはずの異形の忍者集団・成尋衆が徳川二代将軍の死をきっかけに再び現世に現れた。動く城「叢雲」の五層に待ち受ける化物たちを斃し、この世に平穏を取り戻すため、甲賀五宝連と伊賀五花撰は死地へ挑む。
吸血鬼に人造人間、怪盗・人狼・切り裂き魔、そして名探偵。異形が蠢く十九世紀末のヨーロッパで、人間親和派の吸血鬼が、銀の杭に貫かれ惨殺された…!?解決のために呼ばれたのは、人が忌避する“怪物事件”専門の探偵・輪堂鴉夜と、奇妙な鳥篭を持つ男・真打津軽。彼らは残された手がかりや怪物故の特性から、推理を導き出す。謎に満ちた悪夢のような笑劇…ここに開幕!
私立指輪学園で暗躍する美少年探偵団。正規メンバーは団長・双頭院学、副団長にして生徒会長・咲口長広、番長だが料理上手の袋井満、学園一の美脚を誇る足利飆太、美術の天才・指輪創作だ。縁あって彼らと行動を共にする瞳島眉美は、ある日とんでもない落とし物を拾ってしまう。それは探偵団をライバル校に誘う『謎』だった。美学とペテンが鎬を削る、美少年シリーズ第二作!
蔵にある“いわくつき”の着物の管理を、亡き祖母から引き継いだ高校生の鹿乃。ある日、祖母が懇意にしていた骨董店の店主から、祖母が、祖父に宛てて書いたという恋文を渡されて…?一方、鹿乃の兄・良鷹は、野々宮家の別邸にこの時期だけ現れる、風鈴草の着物を着た女性について調べていたが…。京都、下鴨が舞台。古い物に宿る想いをひもとく、温かな人情譚。
東京郊外、とある駅前にある「ツギハギ横丁」。戦後闇市の面影を残す一角に、バー「間」はひっそり佇んでいた。店主の波佐間とアルバイトの由比が営むその店には、毎週水曜午前一時に「特別な客」が訪れる。生者と死者が交差するこの店で、死者たちは伝えられなかった想いをグラスに紡ぐのだ。そんな日々の中、波佐間もまた伝えられない想いを胸に秘めていて…。
大学教授の父が研究にお金を費やしてしまうため、超弩級の貧乏暮らしをしている大学生の由莉。ある日、「時給二千円、飲食店でもないのにまかないつき」という好待遇のバイトの求人を見つけ、喜んで面接に向かう。辿り着いたのは和洋折衷の大豪邸。千早紫季という名の美しい青年社長に出迎えられる…が、この「千早人材派遣會社」、どうも様子がおかしくてー!?
酔っ払いに絡まれる美貌の外国人・リチャード氏を助けた正義は、彼が宝石商だと知り、祖母の遺したピンクサファイアの鑑定を依頼。リチャード氏はそれを「盗品」と看破し!? 宝石にまつわる連作短編集。
夏、クラスメートの代わりにミステリーツアーに参加し、最悪の連続猟奇殺人を目の当たりにした『おれ』。最近、周囲で葬式が相次いでいる『僕』。-一見、接点のないように見える二人の少年の独白は、思いがけない点で結びつく…!!すべての始まりは、廃遊園地にただよう、幼女の霊の噂…?誰も想像しない驚愕のラストへ。二度読み必至、新感覚ミステリー!!
裏稼業コンビの岡田と溝口。離婚や虐待、拉致など様々な出来事に遭遇しては、予想もつかない方法で事件を解決する! その出会いは偶然か、必然か。5編からなる小さな奇跡の物語。(解説/佐藤正午)
道三郎への恋を諦め、旗本・小山田家へ嫁いだ結寿。心優しい家族に恵まれ、平穏に過ごしていたが、居候の老女のもとへ親戚を名乗る男が転がり込んで……。恋と事件の人気連作シリーズ。(解説/八代有子)
妻の失踪を皮切りに、緒方の人生は転落の一途を辿った。失職、路上生活、強盗致死。そして二〇〇八年六月八日午前九時、緒方は五年の刑期を終え滋賀刑務所を出所する。自らの人生の意味を問い直すかのように大阪の街を彷徨い、やがて和歌山のとある村へと流れついた緒方。流浪の旅の末、彼が目にしたのは地獄か、それとも極楽か。第二十四回伊藤整文学賞受賞作。
冬はどこまでも白い雪が降り積もり、重い灰白色の雲に覆われる町に暮らす高校生の小柚子と弥子。同級生たちの前では明るく振舞う陰で、二人はそれぞれが周囲には打ち明けられない家庭の事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校していった友人の京香が現れ、日常がより一層の閉塞感を帯びていく…。絶望的な日々を過ごす少女たちの心の闇を抉り出す第25回小説すばる新人賞受賞作。
目と耳が不自由な美女と、何の取り柄もない男の純愛を描く表題作。ただの筋肉バカとなってしまった元アメフト選手の兄を持てあます弟の苦悩(「兄弟船」)。過去に人身事故を起こして人生を狂わせた男がたどる不幸の連鎖(「悪口漫才」)。罵倒しあう老夫婦が経営する名物ラーメン店が陥る絶望と希望(「反吐が出るよなお前だけれど…」)他、底辺を這う人々の、救いのない日常を映し出す全10編を収録。
江戸の薬屋・時次郎の裏稼業は訴訟の指南役。彼のところには、次々と事件の相談が舞い込んでくるー。古手問屋の長蔵が取引先の妻女と一緒に殺されたが、不義密通の男女を殺しても無罪という法によって犯人の夫は放免された。納得できない長蔵の妻が訴えたいとやってきてー。(「不義密通法度の裏道」)、息子を呪い殺された母親の訴え(「呪い殺し冥土の人形」)など、全七編。痛快時代ミステリー!
瀬戸内の城下町“さぬき亀山市”。かつては大勢の客で賑わった亀山商店街だったが、今ではわずかに数店舗が開いているだけの寂しいシャッター通り。東京からドロップアウトして戻ってきた果物屋の一人娘、英里子はその光景を目にして商店街の復興を決意するがー。芸術家の道風、左遷中の銀行マンの田嶋ら、個性豊かな面々と力を合わせて地元のために奮闘する、アラフォー女性の町おこし小説。
河北を平定し、荊州をも手中に収めた曹操は、勢いに乗じて怒涛の南進を続ける。目指すは長江下流域の江東。その覇者、孫権に対し、曹操は降伏を迫った。しかし天才軍師諸葛亮の計らいで孫権・劉備連合軍が結成され、徹底抗戦の構えとなった。長江狭しと押し寄せる曹軍の大船団。水上戦を得意とする孫権軍の大都督周瑜は、必勝の策を胸に秘め、赤壁の江上にて乾坤一擲の決戦に挑むー。
頭に大怪我をしたエモリーが目覚めたのは、見知らぬ男の山小屋の中。悪天候に下山を阻まれた彼女は、名前すら教えてくれないこの男と数日を過ごすことになる。その間、エモリーが見つけた血液と頭髪のついた石や、静かな男の暴力的な一面。男は一体、何者なのか?何故、自分は怪我をしたのか?数日後、無事帰宅したエモリーのもとに、再び男が現れて…。どんでん返しの連続に息が抜けない、極上のサスペンス!