2015年3月発売
日本近代が、国民国家を確立させるために、制外の民としてのイメージを担わされた賎民たち。文学は、側面から、その作業に抵抗し、「国民」の実像を追う。そのことがまた、彼ら彼女らの、支配を潔しとしない無頼の人生をいきいきと描きだし、ロマンをかきたてる。田山花袋、岡本綺堂、小栗風葉、椋鳩十ら十名の、傑作読み物集。
入社三年目のローカル局の女子アナ、美久は可憐なルックスと初々しさが人気だ。いつかキー局・曙テレビのキャスターになりたいと夢見るそんな美久に、ある日、転機が訪れた。大手芸能事務所に強力なコネをもつ大スポンサーの社長の接待ーいわゆる枕営業だ。生まれて初めて味わう屈辱と快楽に壊れていく美久の理性…。そうして、ついにフリーアナウンサーとしてキー局進出のチャンスをつかんだ美久だったが、そこには淫猥な陥穽が待ち受けていた…。
ルーマニア・ポストモダン文学の旗手カルタレスクが、数々の短篇・掌篇・断章で展開する〈女性〉賛歌。 黒い少女 Dへ、二十年後 イヤリング 親密感について ブラショフのナボコフ 落日 耳を伏せて 折り紙モンスター ぼくは何者? ペトルッツァ Jewish Princess トリーノの出会い 子供の脳髄で愛する アイリッシュ・クリーム 霊感の源 二種類の幸福 ザラザ わが青春の魅惑の書 偉大なるシンク教授 黄金爆弾 ぼくらが女性を愛する理由 終わりに
超ヒットボカロ曲のノベライズ第3弾! 影憑に襲われ、帝都軍病院に運び込まれる未來。そこで主治医の口から未來たち神憑の秘密が明らかに。そして鳴子の過去に隠された、彼女の悲しき宿命とはーー?
“わたし”は帰りつかない夢ばかりみている。目の前を横切る一頭の象、森に“箱”を設える男、鴉の通夜を執り行う女、夢を操る蜘蛛、本性を言い当てる易者見習いの青年、そして“わたし”に「物語」を託す巫女…。謎が深まりゆくなか、立ち現れる三人の女によって、いつしか“わたし”は、思い出せなかった世界、忘れ果てていた世界へと誘われていく。時が重なり、はまっていくピースの数々。仕掛けに満ちた、めくるめく幻想譚。
息子を事故で亡くした絵本作家の千紗子。長年、父・孝蔵とは絶縁状態にあったが、認知症を発症したため、田舎に戻って介護をすることに。父との葛藤と息子の死に対する自責の念にとらわれる千紗子は、事故によって記憶を失った少年の身体に虐待の跡を見つけ、自分の子供として育てることを決意する。「嘘」から始まった暮らしではあるものの、少年と千紗子、孝蔵の三人は、幸せなひとときを過ごす。しかし、徐々に破局の足音が近づいてきて……。 切なさが弾ける衝撃の結末ーー気鋭のミステリ作家が描く、感動の家族小説。
凶器不明の殺人、異国での不思議な出会い、少年の謎めいた言葉の真相、自殺者の不可解な死の理由、人間心理を巧みに突くストーカー事件、妊婦の街で起きたドタバタ失綜騒動など…人気作家8人がおくる、多彩な作品を収録した名探偵アンソロジー文庫化。
俳優、放浪藝の研究者、エッセイスト、俳人、そしてラジオ・パーソナリティとしての磨き抜かれた話藝。「小沢昭一的こころ」の筋書作家をつとめた著者が、“異能の人”の藝と人生に迫る。
<内容紹介> 大学教授の主人公Dr.サマーヴァケーションと、彼の幼馴染キョウナとの手紙から始まるファンタジー。キョウナの家で飲んだ甘い麦茶の記憶とスマートフォンを操る美しい指先が誘う不思議な世界。母への反発を募らせる思春期の娘心とその底に流れる家族への愛情が静かに胸にせまる佳品。 <推薦>児童文学者 日野多香子 児童文学の新たな旗手として ありふれた日常が一人の作家の筆にかかると、 燦然と輝く別の世界にかわる。 藤谷さんの作品を読むとき私はいつもそれを 感じます。 それは作品そのものの魅力です。同時に、 その作品のなかでは、主人公のその後と深く かかわったりもします。 (中略) ともあれ、藤谷さんはこれからの若手の作家 として、とても楽しみなひとりなのです。 ◆もくじ◆ 一 キョウナの手紙 二 気になる麦茶 三 スマートフォンダマシ 四 Dr.サマーヴァケーションの手紙ーキョウナへの返信ー 五 死 エピローグ 児童文学の新たな旗手として 日野多香子 あとがきに代えて
二冊分の面白さ! ガリレオ文庫版、お買い得です 天才物理学者・湯川と草薙刑事のコンビが難事件を解決する、シリーズ王道の短篇集。単行『虚像の道化師』と『禁断の魔術』に収録された全8編のうち7編を、文庫版オリジナルの再編集で登場! 「幻惑す」「透視す」「心聴る」「曲球る」「念波る」「偽装う」「演技る」 「幻惑す」 「透視す」 「心聴る」 「曲球る」 「念波る」 「偽装う」 「演技る」
大友の一人息子・優斗が誘拐されたーー。 胸に銃弾を受け(AF5『凍る炎』)、長野県佐久市の実家で療養する大友鉄のもとを、春休みになった優斗は高速バスで訪れる。だがその道中、優斗はパーキングエリアで忽然と姿を消す。その直後におきた、優斗の乗っていたバスの不可解な大事故。息子と向き合い、事件の背後を探る、大友の新たな試練がはじまった。手に汗を握る、怒濤のノンストップサスペンス。シリーズ最高傑作の誕生です。
1939年、ワシントンDC近郊で娼婦の死体が発見された。時をおかず第二の事件も発生。凄惨な猟奇殺人に世間が沸く中、恐竜の謎について独自の解釈を示した「重力論文」が発見される。思いがけない点と点が結ばれたときに浮かびあがる動機ー先端科学の知見と奔放な想像力で、現代ミステリーの最前線を走る著者渾身の一作!
妻を喪った三十四歳の茂樹には、美花という異母妹がいる。島根の岬の家で育ててくれた祖母が逝き、美花は出生への疑念を口にした。茂樹の母が書き遺した“許すという刑罰”の言葉は?家族写真で幼い美花を抱いた男の顔は、なぜくり抜かれたのか?二人の想いはやがて、岬の家を訪れて共に楽しんだ焚火のように燃え上がる。
北海道のキャンプの夜、兄妹はついに結ばれた。その仲間もさまざまな愛に苦しんでいた。「共同体が崩れるとき、その原因は、たいてい男と女のことや」-岬の家もあるいは小さな共同体だったのか。海外赴任を前に茂樹は会社を辞し、美花と岬の家で生きる決意をする。詮索は終わりにしようと思った二人だったが…。
安土桃山時代。足利義輝、織田信長、豊臣秀吉と、権力者たちの要望に応え「洛中洛外図」、「四季花鳥図」、「唐獅子図」など時代を拓く絵を描いた狩野家の棟梁・永徳。ライバル長谷川等伯への嫉妬、戦乱で焼け落ちる己の絵、秘めた恋。乱世に翻弄されながら大輪の芸術の華を咲かせたその苦悩と歓喜の生涯を描いた長篇。