2015年3月発売
ふとした縁で航空券を手にし、忘れられぬ表情、言葉、情景を心に刻みこまれてしまう三つの旅ー亡母の知己である未知の台湾男性に会いに行く美雨。北京初の女性誌創刊のため、真冬に春服の撮影を決行する夏美。駐在先の住居探しで上海を彷徨う亜矢子。芭蕉派にも「旅は読む」派にも旅時間を満喫させてくれる中編集。
羽田融はヒップホップに夢中な北鎌倉学院高校二年生。矢田部研吾はアルコール依存症で失職、今は警備員をしながら同校剣道部のコーチを務める。友人に道場に引っ張られ、渋々竹刀を握った融の姿に、研吾は「殺人刀」の遣い手と懼れられた父・将造と同じ天性の剣士を見た。剣豪小説の新時代を切り拓いた傑作。
「紅雲町珈琲屋こよみ」の著者が放つ書き下ろしサスペンス! タクシードライバーの千春には、正当防衛で人を殺した過去があった。ある日、客の小学生の行方が分からなくなり、千春にも疑いが…。
猟奇殺人の犯人が捕まった。陪審員の理解は得られず、男は凶悪犯の巣窟・孤島の牢獄アルカトラズへと送られる。折しも第二次世界大戦の暗雲が垂れ込め始めたその時期、囚人たちの焦燥は募り、やがて脱獄劇に巻き込まれた男は信じられない世界に迷い込む。島田荘司にしか紡げない、天衣無縫のタペストリー。
寝台特急トワイライトエクスプレスにプラスチック爆弾を仕掛けた。スイッチを入れれば、ただちに爆発する。それを回避したいなら、乗客・乗員の身代金として1億円を用意しろーーJR西日本に脅迫状が届いた! 列車は定刻どおり大阪駅を出発したばかりだった。脅迫は本物なのかイタズラなのか? 爆発物処理班が乗り込み、必死の捜索を開始。脅迫状が東京中央郵便局から投函されていたことから、警視庁・十津川警部も捜査を開始した!?
異常な寒波のなか、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気候変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って某国に潜入した私は、要塞のような“高い館”で絶対的な力を振るう長官と対峙するが…。迫り来る氷の壁、地上に蔓延する略奪と殺戮。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで、世界中に冷たい熱狂を引き起こした伝説的名作。
美しきハクスタブル家の長女メグは、弟妹たちを立派に成人させてようやく自分の幸せに目を向ける。かつての恋人に「婚約者がいる」と言ってしまい紹介することになったメグは、以前から自分に求婚していた男性の元へ。するとその人は知らぬ間に、別の女性と婚約していた。困り果てたメグの前に、花嫁探しのため舞踏会へやってきた伯爵ダンカンが現れる。突然ダンスと結婚を申し込まれたメグは、踊りながら正直に境遇を打ち明け、彼に婚約者のふりをしてもらうことに。ところが、ダンカンはスキャンダルで社交界から半ば追放された人物だった。たちまちゴシップの的になる二人。そのうえ、彼は2週間以内に結婚しないと財産と爵位を失うという窮地に陥っていた。そこで二人は、2週間で自分たちが恋におちることができたら結婚するという取り決めを交わし…
雨降りの薄暗い朝、スザンヌは朝から式典のための花を届けに墓地に向かっていた。 あともう少しで、卵とコーヒーの美味しい朝食を求めて大勢の客がカフェに押し寄せてくる時間。 一刻も早く厨房に戻りたいというのに、またも死体を発見! 嫌われ者の元刑務所長だった。 友人たちに背中を押され、ふたたび捜査に乗り出すスザンヌだったが、 いつも事件の推理で丁々発止やり合う頼もしい保安官が、重傷を負って 意識不明という悪い報せが入り……!?
わたし、誘拐されたの。でも警察にも誰にも言わないでー。突然、姿を消した姉からの謎の電話。姉が何者かに監禁されている!犯人の目星をつけた妹は…。(『美獣を狩れ』)穢れなき令嬢を、清楚な若妻を、知性的な美姉妹を…引き裂き、蹂躙してゆく、獣欲の悪魔たち。-1980年代、カルト的な人気を集め、“レイプの帝王”の名をほしいままにした孤高の官能作家・蘭光生。没後24年、ついにその禁悦の作品群が甦る。レジェンドシリーズ第一弾。
大阪府警の新米刑事・神木恭子は、担当した殺人事件を、別件で関わった老人の供述から解決へと導く。しかし時を同じくして、老人の自宅の床下から嬰児を含む死体七体が発見された。二つの事件の背後には、府警上層部が内に宿す闇が広がっていたー。体面重視の違法捜査、キャリアとノンキャリアの暗闘ー知られざる警察の真実に、淀んだ街に狂い咲いた情愛が絡まりつく。現場を知り尽くした元本職の刑事だから書きえた、究極の警察小説!第2回本格ミステリーベテラン新人発掘プロジェクト受賞作。
名作『夕べの雲』から三十五年。時は流れ、丘陵の家は、夫婦二人だけになった。静かで何の変哲もない日常の風景。そこに、小さな楽しみと穏やかな時が繰り返される。暮らしは、陽だまりのような「小さな物語」だ。庄野文学の終点に向かう確かな眼差しが、ふっと心を温める。読者待望の、美しくもすがすがしい長篇小説。 名作『夕べの雲』から三十五年。 時は流れ、丘陵の家は、夫婦二人だけになった。 静かで何の変哲もない日常の風景。 そこに、小さな楽しみと穏やかな時が繰り返される。 暮らしは、陽だまりのような「小さな物語」だ。 庄野文学の終点に向かう確かな眼差しが、ふっと心を温める。 読者待望の、美しくもすがすがしい長篇小説。
笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。第153回芥川賞受賞。 売れない芸人徳永は、熱海の花火大会で、師として仰ぐべき先輩神谷に電撃的に出会った。そのお笑い哲学に心酔して行動を共にしながら議論を続けるのだが、やがて二人は別の道を歩んでいくことになる。運命は二人をどこへ連れていくのか。
鬼隼人、許すまじー財政難に喘ぐ豊後・羽根藩には、怨嗟の声が渦巻いていた。十五年前に仕官、やがて御勝手方総元締に任じられた多聞隼人が、藩主・三浦兼清を名君と成すために、領民家中に激烈な痛みを伴う改革を断行したためであった。そんな中、誰も成し得なかった黒菱沼の干拓の命が下る。一揆さえ招きかねない難題であった。それにも拘わらず、隼人は家老に就くことを条件に受諾。工事の名手で“人食い”と呼ばれる大庄屋・佐野七右衛門、獄中にあった“大蛇”と忌み嫌われる学者・千々岩臥雲を召集、難工事に着手する。だが、城中では、反隼人派の策謀が蠢き始めていた…。『蜩ノ記』『潮鳴り』に続く羽根藩シリーズ、待望の第三弾!
「くらがりに落ちた」。解決できなかった事件を奉行所ではそう言う。それらの事件を書き留めておくのが、南町奉行所永尋書留役である角野忠兵衛の役目。奉行所の角に忘れ去られた事件を地道な探索でくらがりから引きずりだす忠兵衛を、仲間の同心はいつしか“くらがり同心”と呼ぶー。窓際同心の人情味溢れる活躍を描いた人気シリーズから、著者自ら厳選した「精選版」!
出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!