2015年6月発売
考えられないこと考えられないこと
現代日本文学を切り拓いた作家の最後の作品集。七十年間、誰にも話さずにきた不思議な話ー。独り身のまま戦死した兄の友人をめぐる表題作など八十七歳で書かれた三作に、初めての詩三篇、日記を付す。
私の恋人私の恋人
遥か10万年前、クロマニョン人だった私は、並外れた想像力でその後の世界情勢や人類の営みを予見し、洞窟の壁に書きつけながら、いつしか未来に息づくひとりの女性を思い描いていた。その後、第二次世界大戦前のベルリンに生まれ変わった私は、ユダヤ人であるがゆえに時代の波にのまれ、ナチスの強制収容所の独房で、太古からの記憶を反芻し、今でもここでもない場所から私の身を案じている、たまらなく可愛い私の恋人のことを想い続ける。そして、現代日本にふたたび生を受けた私、井上由祐の前にひとりの女性が現れたー。はるかなる人類史と、その先に待つ未来と驚きあうかつてなく壮大でどこまでも親密なラブストーリー。第28回三島賞受賞作。
抱く女抱く女
「抱かれる女から抱く女へ」とスローガンが叫ばれ、連合赤軍事件が起き、不穏な風が吹き荒れる七〇年代。二十歳の女子大生・直子は、社会に傷つき反発しながらも、ウーマンリブや学生運動には違和感を覚えていた。必死に自分の居場所を求める彼女は、やがて初めての恋愛に狂おしくのめり込んでいくー。著者渾身の傑作小説。
子供時代子供時代
中庭のあるアパートに住む子供たちが出会った奇跡。遠縁のおばあさんに引き取られたけなげな孤児の姉妹の話「キャベツの奇跡」、ほとんど目が見えなくなった時計職人の曾祖父が孫娘にしてやったこと「つぶやきおじいさん」、いじめられっこのゲーニャのために母が開いた誕生会で奇跡が起きた「折り紙の勝利」…。ウラジーミル・リュバロフの絵とともに贈る、6編からなる連作短編集。